専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第68回

 ゴルフってメンタルなスポーツですから、状況次第ではわずか30cmのパットすら入らなかったり、3連続でOBを出したりもします。

 そのメンタル面を最も左右するのが、同伴プレーヤーがふと投げかけた言葉なのです。

 例えば、同伴メンバーに「右側はOBだから気をつけてね」と、でっかい声で言われて、つい左側に打ってしまうことがあります。けど、左側には小川のようなクリークが流れていて、ワンペナとなってしまいました。すると、同伴メンバーは、「OBよりワンペナのほうがいいだろ、よかったね」と言いますが、はたしてそうでしょうか?

 右側をよく見ると、確かにOB杭が見えますが、すごく遠い位置にあります。しかもそのOBゾーンは山になっていて、ボールが転がって落ちてくる可能性が大いにあります。本来であれば、右側のOBはあまり気にしなくてよかったのです。結局のところ、同伴メンバーの口攻撃にまんまとやられた、というわけです。

 また、自分の目で見えるハザードなどはまだ確認できますが、スイングや立ち位置などは客観的に把握できないので、そうしたことをプレー中に言われると、かなり気になります。

「キミ、右肩が下がっているよ、ダフり気味でしょう」
「打つとき、必ず右方向を向いているね。だから、ボールが右に出るんだよ」

 よく耳にするのは、こうしたアドバイスです。

 確かにそうかもしれませんが、だからって、このラウンド中にどうしろというのでしょう? 悪いところを指摘するなら、直し方も言ってくれないと。

 そういうことを言われたときは、右肩の下がりを意識しすぎてますます変な当たりになったり、正面を向いたらスライスがひどくなったり、たいてい悪影響に働くことのほうが多いです。

 そういう私も、相当へんてこなスイングでプレーしていますから、以前は何度も"アドバイス"を受けました。でも、何回か口攻撃の洗礼を受けておけば、あとはどこ吹く風です。逆に言われ慣れて、同伴者が何を言おうが、微動だにしません

「おまえらの作戦には乗らないぞ」という気構えで臨んでいます。「いいから、このへんてこなスイングの男に勝ってから意見しろ」って、まあそんな気持ちですかね。

 他に、どういう口攻撃があるでしょうか?

 口攻撃はまこと正論を言うので、言われた本人も気づかないし、言った本人さえ気づかないことがあります。

 例えば、いつもパットをショートばかりしている人が、友だちに「ネバーアップ、ネバーイン。カップに届かない限り、絶対に入らないよ」と進言されます。言われたほうも、「まさにそうだ」と思って、カップを越えて大きく打っていきます。

 あげく、返しのパットも入らずに3パットばかり。「おかしいな......」とは思っても、アドバイスした友だちに今度は「ナイストライ! じきに入るようになるよ」と言われて、妙に納得してしまいます。でも、その日のパットは大崩れですけどね。

 同様に、「谷は越えてなんぼだから」と言われて、すごく大きめのクラブで打たされて、OBしたよりも叩いてしまうことがあります。

 あと、バンカーの、きついアゴの真下にボールが落下。ピンを狙わず横に出すのがクレバーな選択ですが、「何事も修行だから」とか「チャレンジ精神も大事」とかけしかけられて、その果てに、打っても、打ってもまったくアゴから脱出できず、"大滝詠一"をやってしまった......なんてことも。これもまたゴルフなりです。

 ゴルフにおいての正論的なアドバイスは、災難になることが多いのです。

 つまり、逆に言えば同伴メンバーとの勝負においては大きな"武器"になります。ただ、せっかく一緒に回っているのに、嫌な思いはさせたくありません。じゃあ、どうすれば、楽しく相手に叩いていただけるか?

 それは、「秘儀、若いキャディーさんイジリ」を実践することです。

 友だちに、女性のキャディーさんが来ると「キミ、下の名前はなんていうの?」と聞いて、「アケミです」なんて答えると、「あそう、じゃあ今日はアケミちゃんと呼ぶから」とファーストネーム呼びに始まり、「六本木は行ったことある?」「カラオケは何が得意?」とかプライベート話にまで及んで、ついには「アケミちゃんの『ファー(※)』って、すごくセクシーだな」とか、好きなことを言って場を盛り上げる輩がいます。
※ボールが曲がったときに出す、注意の掛け声。

 もうこうなると、同伴メンバーはそれが気になってゴルフどころではなくなります。そして最後に、「アケミちゃん、彼氏募集中だってよ。キミ、お似合いなんじゃないの?」なんて振られたら、もはや集中するポイントが違ってきてしまいます。

 若い同伴メンバーなら、キャディーさんにいいところを見せようとして、どんどんスコアを落としていってくれるでしょう。本人は叩いても、キャディーさんと仲良くなれば、それで大満足ですから。これなら不思議と、みんな丸く収まるってものです。

 というわけで、口は災いのもとと言いますが、ゴルフにおいては、実に頼もしい"15番目のクラブ"になり得るのです。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa