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●現地のニーズに最適化した製品企画
国内白物家電メーカーにとって、海外家電メーカーとの「攻防」は、これから数年の重要な課題になるだろう。国内白物家電メーカーにとって攻防の「攻」は、海外市場への進出だ。例えば、パナソニックは、2016年度における家電事業の取り組みにおいて、「プレミアムゾーンのさらなる強化」とともに、「日本の勝ちパターンの海外展開」、「アジア・中国、欧州での事業成長を加速」をあげる。

とくに、注目しておきたいのが、「日本の勝ちパターンの海外展開」である。

本連載の第1回目において、日本の家電メーカーが海外市場において失敗してきた要因のひとつに、日本の成功事例をもとに、その製品をそのまま海外市場に持ち込んだ例をあげた。日本で成功した製品は、海外でもヒットするという誤った認識が、日本の家電メーカーにはあった。だが、文化や生活様式に根差した白物家電製品は、日本で成功したからといって、そのまま海外市場で成功するとは限らない。そのやり方が、日本の家電メーカーの海外市場での成長を鈍らせた。

○各国に開発拠点を築く

パナソニックが打ち出した新たな戦略も、一見すると、この失敗をまた繰り返すように見える。だが、その中身は大きく異なる。

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長は、「パナソニックは昭和30年代から海外市場においても白物家電事業を展開してきたが、日本で受け入れられた製品を海外に提案するのが基本的な考え方だった。だが、それが通用しなくなってきたのがこの10年である。アジアも中国も生活が豊かになり、独自の価値観が芽生えている。パナソニックはその変化に対応しきれていないために、海外でお客様の信頼を失っていた」と前置きし、「パナソニックは、ここ3年の間に、中国とアジアに開発拠点をそれぞれ構えて、各地域のお客様が求めていることをゼロから見つめ直して、それにあった製品を提案してきた。パナソニックの家電事業には、エンドユーザーに深くインタビューをして、モノづくりをする文化があった。それを生かしていく」と続ける。

つまり、日本で成功した「製品」をそのまま持ち込むのではなく、日本で成功した「手法」を持ち込んでいくことが、「日本の勝ちパターンの海外展開」ということになる。

パナソニックでは、APアジアおよびAP中国という組織を現地に設置。地域内での商品企画の最適化や、地域内での相互供給によるラインアップの拡充を行なうほか、事業部長経験者を送り込み、現地でスピーディに意思決定できる体制を整えている。いわば、地域で完結できる「ミニパナソニック」を作り上げ、それによって、地域密着型のビジネスを推進しようというわけだ。

●外資系家電メーカーの攻勢を防ぐ
すでにいくつかの実績があがっている。今年春にアジア市場向けに発売したエアコン「SKYシリーズ」は、上部フラップ「SKY stream desigin」を活用して、輻射冷却方式を業界で初めて採用。冷たい風が直接身体にあたらないようにすることで、冷えすぎを防ぎ、快適な空間を提供することができるという。

また、ダストセンサーにより、空気中の微粒子をモニターし、濃度が高くなると、ナノイーを放出して、空気を清浄することかできるという。これは、日本に先駆けてアジアで発売した製品だという。また、同じくアジア向けには、速く冷やせる「速冷」のニーズを捉えた「速冷暖エアコン」も発売。シェアナンバーワンを獲得したという。

一方、外資系傘下に入った家電メーカーも、海外でのビジネス拡大に意欲をみせる。

東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長は、「マイディアグループのなかで事業を行うことで、米国や欧州、インドなど、これまで東芝ブランドとして参入できていなかった市場にも参入できるようになる。どの市場から展開していくかは現時点では未定だが、名実ともに、東芝の白物家電がグローバルに展開していくチャンスを掴んだといえる」と語る。

世界第2位の白物家電メーカーであり、全世界200カ国以上で展開しているマイディアグループのリソースを活用して、世界市場に攻めていけるというわけだ。

○外資メーカーの存在感が高まる

一方で、国内家電メーカーにとっての「防」とは、外資系家電メーカーの日本への進出への対応だ。

これまでは日本の白物家電市場は日本のメーカーの独壇場であった。だが、この数年、欧州や米国、アジア、中国などの家電メーカーが日本に進出し、着実に存在感を増している。日本の家電メーカーにとっても、これまでとは競合環境が異なっていることを理解する必要がある。

その最たる領域のひとつが掃除機市場だ。

もともと掃除機市場は、サイクロン方式や紙パック方式のキャニスタータイプの掃除機が主流であったが、近年、スティック型掃除機が台頭。すでに市場の25%を獲得している。また、部屋のなかを自動的に掃除するロボット掃除機や、ふとんを掃除することができるハンディ型掃除機も需要を拡大。これらの製品もあわせると、国内掃除機市場全体の20%以上を占めている。

そして、掃除機市場は、2台目需要を創出し、飽和感がある日本の家電市場において、この数年にわたって、市場全体が拡大し続けている数少ない成長分野でもある。

これらの市場を開拓してきたのは、まさに外資系家電メーカーだ。

吸引力の強さが高い評価を得ているダイソンは、スティック型掃除機でも人気を博しているほか、ロボット掃除機市場では、iRobotのルンバが市場を席捲。

こうした動きを日本の家電メーカーが後を追っていくという構図が、ここ数年続いている。

●IoT普及におけるセンサーの市場シェアがカギ
掃除機以外にも、理美容製品や小物キッチン家電、そして、メジャー家電製品でも、そうした動きが少しずつ見られている。

三洋電機の冷蔵庫、洗濯機部門の買収によって日本で展開しているアクアは、親会社である中国ハイアールの調達力と、三洋電機時代から培った日本の市場に最適化した製品企画が相まって、冷蔵庫および洗濯機市場で、それぞれ5%以上のシェアを獲得するという存在感を発揮している。これも海外家電メーカーが日本においてシェアを拡大している動きのひとつと捉えることができる。

今後、東芝やシャープも、新たな経営環境のなかで、日本向けの製品開発が加速する可能性がある。これまで以上に、日本の白物家電市場が賑やかになる可能性は捨てきれない。当然、それに伴って、激しい競争も繰り広げられることになろう。

日本の白物家電メーカーの動きをみると、ライフスタイル提案を重視する傾向が強まっている。製品単体の提案から、複数の製品を組み合わせたり、サービスと連携したりといった提案が進んでいるのだ。その背景には、IoT時代の到来にあわせて、センサー、ネットワーク、クラウド、ビッグデータなどの新たな技術を活用した家電製品の創出が見逃せない。

東京・有楽町のビックカメラ有楽町店では、2016年6月28日から、「IoTスマートソリューションコーナー」を開設している。パナソニックの洗濯機や冷蔵庫、三菱電機の炊飯器など、すでに発売されているネットワークに接続して利用できる白物家電製品を展示している。

こうしたスマート家電と呼ばれる家電製品は、機能面でも新たなものが多いが、ライフスタイル提案につなげる取り組みが重視されている。

現時点では、ビックカメラにおいても、スマート家電の認知度をあげたり、スマート家電の機能を訴求したりといったことを重視しており、売り上げへの貢献はまだ先だと判断している。しかし、こうした提案が日本の家電メーカーから行われていることには注目しておきたい。

○IoT時代における日本メーカーの優位点

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、センサーの世界需要は、2014年には532億個の市場規模であったものが、2025年までに年平均成長率10%増で推移。2014年の2.9倍となる1522億個にまで拡大すると予測している。金額では、2014年の2兆8000億円から、2025年までに年平均11%増で成長し、同じく3.2倍の9兆円に達すると予測した。

この分野において、日本の企業は高いシェアを持っている。そして、白物家電事業を行っている企業と同じ企業が、センサー分野においても実績を持っている。つまり、IoT時代の新たな白物家電においては、日本の白物家電メーカーが優位な立場にあるともいえるわけだ。

こんなにところにも、日本の白物家電メーカーの今後の成長を期待できる要素がある。

(大河原克行)