おざわ歯科医院/高度インプラントセンターの小澤俊文氏

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 東京練馬の小澤俊文氏(おざわ歯科医院/高度インプラントセンター)の元には、都内各所からインプラント(人工歯根)のセカンドオピニオンを求めて患者が訪れる。小澤氏は患者の承諾を得て、筆者に事情を教えてくれた。

「この患者は、レントゲン画像に白く写っている上顎前歯4本のうち、中央右の歯に被せているクラウンが外れて、他院を受診しました。そこの歯科医は『歯の根管に問題があるので、抜歯してインプラントにしましょう』と言ったそうです。

 しかし、患者がインプラントに対して不安を感じていますし、問題の歯の両隣がすでに治療で削られているので、ブリッジをまず提案すべきでしょう」

 本誌は以前にブリッジ治療は両隣の歯を大きく削るため、「歯を失う負の連鎖に繋がる」と指摘したが、これは両隣が健康な状態の歯の場合である。

 過去の治療で両隣の歯がすでに削られている患者には、インプラントよりもブリッジのほうが、身体や家計に負担は少ないと考えるのが妥当だろう。

 小澤氏は、他院のインプラント治療失敗の後始末で撤去したインプラントを見せてくれた。その中には、ネジ部分に灰色のコーティングがされたインプラントが目立つ。

「それは現在でも販売されている日本メーカーA社のワンピースタイプです。安さが最大の売りですが、構造的に問題があるので、私は使用しません」(小澤氏)

 日本のインプラント治療の先駆者で、多くの歯科医から尊敬を集める小宮山彌太郎氏(ブローネマルク・オッセオインテグレーション・センター院長)も、こうしたワンピースタイプについては構造に問題があり、インプラント治療が失敗する要因になると指摘した。

 特徴は土台とインプラント本体が一体化した構造だ。価格は欧米メーカーの半額以下。手術は一回で済む。

 筆者が潜入取材した都内の格安インプラントセンターでは、欧米のツーピースが20万円に対して、国産のワンピースは一本7万円。隣にいた中年女性はワンピースを指定していたので、一定の需要はあるらしい。しかし、小宮山氏は次のように警告する。

「ワンピース・インプラントを使う歯科医は経験の浅い、いわば素人でしょう。なぜなら、ワンピース・インプラントは土台と一体化しているので、角度の微調整などの融通性がない。

 一番大切なのは、骨の中に入って結合しているインプラント本体です。噛み合わせで強い力がかかって上部の土台が壊れても、本体が守られていればリカバリー(修理)が可能ですが、ワンピースは全てダメになる可能性が強い。それなのに、簡単で安いシステムに、多くの歯科医が飛びついています」

 小宮山氏に、正しいインプラント治療を行なう歯科医を見分ける術はあるのか尋ねると、しばらく沈黙してから口を開いた。

「難しいですね……。9年前、インプラント治療で死亡事故を起こした歯科医は、“患者を逃がさない術は、早くお金を振り込ませて、早くインプラントを埋める。そうすれば患者は逃げない”と言っていました。

 だから、インプラント治療を検討している人は、何人かの歯科医に必ず意見を聞くべきです。すぐに手術したほうがいいと急がせる歯科医は、誘導している可能性があります」

 インプラント治療の第一人者の小宮山氏が、あえて明かした業界の問題点。それほどまでに闇は深いのだ。

●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2016年9月2日号