金が取れない本当の悔しさはその才能があって努力を続けている、ほんのほんのひと握りの方々しかわからないんだろうなぁ。

リオオリンピックが閉会しました。日本のメダル獲得数は41個。世界と戦って、それぞれのジャンルでトップ3に入る方々が、日本に41人もいるというのは、本当にすごいことです。おめでとうございます。お疲れさまでございました。

表彰台に上がらずとも、トップ10、トップ20、いやいや、オリンピックという舞台で競えるだけの能力を、長い時間をかけて鍛え上げてきたというそのこと自体がもう、尋常でないくらいすばらしいことです。

速くて美しい競泳、華麗な体操。卓球もシンクロも、とにかく全部の競技において、観ている側がウォーウォー沸いたのは、ただ、上手だな〜、うまいなぁ〜、速いなぁ〜と思っていたからだけじゃありません。

すんごい能力を持った人たちが全力を超える努力をして培ってきた技術、その背景を競技に感じるからだと思うんです。

だから、吉田沙保里さんが決勝戦のあと、リングの中でうずくまる姿にこみ上げるものがあった。今でも、あの、真上から吉田さんの背中をとらえた映像を思い出すとクッ……ときてしまいます。

悔しかったのか、悲しかったのか。本当のところはわかりません。
そういう感情って、本当に努力した人にしか得られないものですよね。

ふんわりと「全力で臨んだ勝負に勝てなければ悔しいものだろうな」と文脈としてイメージはできるけれども、人生にこれといった頑張りもなくのほほんダラリと逃げ回って生きている私のような人間に、吉田沙保里さんの本当の悔しさがわかると思うことこそおこがましいわけです。それでも、練習風景や、先陣を切ってレスリングがリオオリンピック競技になるようPRをしてきた様子、いつも快活で元気な雰囲気を湛えている勇ましくもカッコいい姿がフラッシュバックして、吉田さんの感情にシンクロしたような気になってしまいました。

 

霊長類最強と言われた吉田沙保里さんが銀、と決まった瞬間は、『ONE PIECE』で白ひげが絶命したときくらい衝撃ではありました。でも、さらにショックだったのは、試合の直後、吉田さんが記者に「取り返しのつかないことをしてしまって」と泣きじゃくっていたことです。それを聞いた瞬間、似非吉田沙保里マインドから「お祭り気分でオリンピックを楽しんでいた一般人」という本来の立場に引き戻されて、また泣けました。
吉田さんは、私(たち)のために頑張ってくれていたんだーーとずっしり感じたからです。「本当にごめんなさい」という吉田さんに「そんな思いにさせてしまって、謝るのはこっちのほうだ」と思った人はたくさんいたと思います。

そりゃ、自分のことのように金メダルは嬉しいし、頑張った方々が表彰台に上がるのを見るのは晴れ晴れしいし、オリンピック出場、決勝進出、そのひとつひとつがすごいなぁと思うし、ぜひ実力を発揮してくださいと確かに思っているんですが、それが、メダル取らなきゃ価値なし、吉田さんに至っては金じゃないと意味なし、という妙なことになってしまっていたのなら、本当に「すごいごめんなさい」(byハワイ帰りのキムタク)です。

今回は、吉田さんに憧れて12年間、吉田さんに勝つことだけを目指して頑張ってきたというかわいいアメリカの女の子ちゃんに敗れましたが、吉田さんが伝説の女であることは変わりありません。数ある吉田語録の中でも「女に生まれてよかった。男だったら試合で人を殺していた」「かわいい外国人と戦うときは燃えてきますね。ブン投げてやるって」のふたつはとくに洒落も効いていて大好きですが、ブン投げてやると思いつつ、万が一、万が一のことがあったらアレだからと、うっかり力の配分が定まらなかったんじゃないかとすら思うほどです。命拾いしたな、ヘレン。なんちゃって。

試合直後から、泣かないでね、謝らないでね吉田さん、と念じて過ごしていましたが、さすがの吉田さん、「私が泣いていると他の選手たちが喜べないから」と思い返し、笑顔に戻ったというニュースがネットに続出しました。泣く場所もつくってあげられないこともさらに胸が痛くなりますが、吉田沙保里には笑顔が似合う。

現役引退も視野に少し入ってきたと本人が話したという報道もあり、2020年の東京オリンピックでは、今回と同じではない関わり方をされるのかもしれませんが、どんな形であれ、ご自身の才能とスキルを生かして今後も活躍してほしいです。という、そういう言い方が人に余計なプレッシャーを与えてしまうのかな。

表舞台から裏方へ。育てる側にまわるアラサーのもやもや切り替えスイッチはどこにあるーー。働く独身アラサーの「現場からの引退」のリアルをあずき総研がインタビュー。その2へ続く

■プロフィール

 白玉あずき

東京都出身。清泉女子大学卒。学生時代より活字メディアに携わり、四半世紀にわたり女性のおしゃれと恋愛とダイエットについて考察、記事にする。現在は雑誌や単行本の編集、制作に加え、女性コンテンツのプロデュースやディレクションなど多分野で活動。最近の生きるテーマは社会貢献と女性支援。