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●あえてミニバンに自動運転技術を搭載する狙いとは
日産自動車はファミリー向けのミニバン「セレナ」を全面的に刷新し、8月24日に発売した。同一車線自動運転技術「プロパイロット」の搭載で世間の注目を集める新型セレナだが、顧客の反応はどうだろうか。このほど明らかになった予約注文の状況からは、最新技術に対するユーザーの注目度をうかがい知ることができる。

○高速道路の単一車線走行で威力を発揮

プロパイロットは高速道路などの自動車専用道路での使用を想定する自動運転技術だ。起動すると、セレナはユーザーが設定した速度(時速30〜100キロ)を上限とし、先行車両との車間距離を一定に保って単一車線内を走行する。先行車がいなくなれば設定速度に戻って走行を続ける。同一車線内であれば、ドライバーはハンドルに手を添えているだけで走行が続けられるようなイメージだ。

この技術は、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)が定義した5段階の自動運転レベルの「レベル2」に相当する。全ての認識、判断、操作を自動車(システム)に任せられる完全自動運転には程遠く、日産の星野朝子専務執行役員もプロパイロットは「あくまで運転を支援する技術」だと強調していたが、高速道路の同一車線内を走り続けるのであれば、同技術でも自動運転の何たるかを感じることは十分に可能だろう。

○あえてミニバンに搭載する狙い

新型セレナには様々なグレードがあり、価格帯も231万6,600円から318万7,080円(全国希望小売価格、消費税込み)と幅広い。プロパイロットの有無で価格はどう変わるかというと、例えば4WDの「ハイウェイスター」が296万5,680円であるのに対し、このグレードのプロパイロットエディションは317万6,280円といった具合だ。最新技術を20万円程度で載せられるのは、意外に安いと感じる人も多いのではないだろうか。

「技術の日産が、人生を面白くする」。日産が2015年から掲げるキャッチコピーだが、プロパイロットを普及価格帯のセレナに搭載したのは「沢山の人の人生を面白くしたい」(星野専務)という同社の想いの表れだ。最先端の技術は高級車から搭載を拡げていくのが自動車メーカーの定石だが、日産は多くのユーザーに届く車種にあえてプロパイロットを導入することで、同技術の普及を加速させようとしている。

●予約注文の多くが自動運転技術搭載型を選択
新型セレナの予約注文は日産の想定を超える件数に達している。セレナは主にファミリー層をターゲットとする車種だが、実際に購入する顧客のうち、プロパイロットを搭載したいと考える人はどのくらいいるのだろうか。日産ではセレナの販売数のうち、プロパイロットエディションが占める割合を4割程度と予想していたが、予約注文に占める同エディションの割合は7割に達しているという。

NHTSAの定義でいくと、セレナと同じくレベル2に相当する自動運転技術を搭載する米テスラの「モデルS」。この車両が今年に入って米国と中国で事故を起こし、自動運転の未来に一抹の不安を投げかけていたが、セレナの予約状況を見る限りでは、日本のユーザーは自動運転技術に依然として高い関心を持っているようだ。

○自動運転社会到来を見越した日産の素早い動き

米フォードが2021年までに完全自動運転車の量産を始める方針を明らかにしたことを受けて、日本の自動車メーカーが同様の技術に挑戦する可能性を問われた星野専務は、「社会は確実にそちらの方向に向かうと確信している」と明言。日産は自動運転をコア技術の1つに位置づけて開発を進めており、2018年には高速道路での車線変更を可能とし、2020年までには交差点を含む一般道で使える自動運転技術を投入する計画だ。

実際にプロパイロットを体験したユーザーは、同技術に対してどのような感想を抱くのだろうか。それが肯定的な意見であれば、口コミ効果で同技術の普及につながるだろうし、もし否定的な意見が出たとしても、日産はフィードバックとして自動運転技術の開発に活用することができる。いずれにせよ、完全自動運転社会の到来を見据えた日産が、他社に先駆けてプロパイロットを市場投入した意義は大きいといえそうだ。

(経営・ビジネス取材チーム)