スポーツ交流に停滞する日朝関係改善のヒントがある。写真は筆者撮影。1枚目は2013年のマスゲーム。「わが祖国を金メダルで」と書かれている。2枚目は平壌市内の紋繍プールで現地の老人と筆者。

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平壌市内の某ホテルのロビー。北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の対文協(対外文化連絡協会)の案内員と私は小さな声で会話を交わした。

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「ウラ、トクアツ…」「ペン?シェイク?」「シェイク」「じゃあ、2枚?」「よろしく」。案内員は頷いた。

別に怪しい取引をしていたのではない。次回訪朝の際に希望するおみやげを私が案内員に聞いたところ卓球のラバー、裏ソフト特厚タイプを2枚所望したというだけの話である。

さてリオデジャネイロオリンピック、女子卓球シングルスで北朝鮮のキム・ソンイ選手が銅メダルを取った。日本の石川佳純、福原愛両選手を撃破したことに驚いた日本人も多いだろう。金正恩時代になってからスポーツへの積極的な取り組みが目立つ。金正恩委員長も今年の新年辞(いわゆる施政方針演説)で「専門スポーツ技術を画期的に発展させ、国際競技で英雄朝鮮の新しいスポーツ神話を生み出すべき」と述べている。実際2013年の訪朝時には、「我が国に金メダルを」との勇壮なメッセージがマスゲームで踊り、平壌市内に完成したばかりの全国から才能ある子供を集め、国家代表レベルの選手を養成する平壌サッカー学校を見学した。平壌市内の公園ではローラーブレードで遊ぶ子供とバレーボールに興ずる市民の姿が目につく。バレーボール、サッカー、卓球、バスケットボールと、ボールと少しの道具があれば楽しむことが出来るものに人気があることに気づく。案内員によればスポーツの裾野は広く職場対抗の大会も多く開かれるという。一方で日本、韓国、台湾などで盛んな野球に関しては真空地帯。設備と道具の視点で見るとこの点納得出来る。

ここに停滞する日朝関係改善のヒントがある。日本体育大学は2012年から平壌へ学生を派遣、2015年には平壌体育大学とスポーツ交流に関する協定を結んだ。2015年月末に行われた朝鮮大学校創立60周年を祝う大祝祭で、日体大の谷釜了正学長は東京オリンピックの際、朝鮮大学校(東京都小平市)と日体大のキャンパスを北朝鮮チームのキャンプ地として利用することに言及した。

スポーツ交流で関係改善を。隗(かい)より始めよのことばの通り今春、平壌市内の紋繍プールの卓球場で老人相手に卓球勝負を挑んでみた。あっさり負けタバコを2本献上し記念写真を撮り勘弁してもらった。「写真はプールの職員に渡しておいてくれ」。白髪交じりの海パン姿の老人は不敵に笑ったのだった。

■筆者プロフィール:北岡裕
76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。