『明日、どこへ歩いてく?』Vol.005 写真家・菊池良助さん/神奈川県鎌倉市【後編】

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【毎週火曜 16:00 更新】
古くヨーロッパには、「靴は行きたいところに連れて行ってくれる」ということわざがあります。オズモールを作るクリエイターの原点となる、地元の大切な場所を、お気に入りの靴とともに教えてもらいました。
地元で暮らし、大切にする原点。その町への思い――。読者のみなさんと、シェアしていきます。
第5回は、写真家・菊池良助さんが暮らす「神奈川県 鎌倉市」のお話、後編です



◆『縁があって住み始めた”地元”鎌倉の、暮らし目線でご紹介します』

僕の出身地は栃木県の宇都宮市ですが、20代半ばから色々な縁があり住み始めてしまった鎌倉が、今では自分の中での「地元」。今回は有名な観光地の鎌倉というよりも、そこで暮らす人間からみた愛すべき地元の歩き方を紹介したいと思います。









◆「極楽寺のカフェで、ドーナツ。
アナログレコードの味も、いいんです」

極楽寺駅付近まで歩き、こちらもよく通っているカフェの「HALENOVA」へ。
お店の脇から何やらギターの音が聞こえたので、覗いてみたら、バンドcro-magnonのギタリストのコスガツヨシ君が、都内へのライブに出演を前にリラックスしている最中でした。
僕はとても音楽好きな人間なので、ここはいつもBGMをアナログレコードでかけており、
そのチョイスも素晴らしく嬉しい限りです。
アナログレコードから流れる音は、脳波を落ち着かせるっていう研究結果もあるそうですし、とても味わい深く感じます。

そしてHALENOVAの名物が、オリジナルのドーナツ。
油ぽくないのに、ふわっとしつつ、トッピングも多彩で僕の中でのNO1ドーナツです!
お店の奥は、ギャラリーとしても機能していて、不定期で、地元の作家を中心に、
アート、洋服やジュエリーなどの展示会があったりします。

極楽寺付近はちょうど週末のお祭りの準備中で、通りに提灯が吊され始めていたり、お堂の中に人形が置かれていたりしました。
地域ごとに小さなお祭りがあり、ちゃんと生活の中に密着している所は、流石古都ならではと思います。
そういえばHALENOVAも「ハレの場」って意味だと思うので、この日はハレの日のHALENOVAで縁起的には最高でしたね(笑)









◆「市場の中のパン屋さんは、10年来のファン。
僕の中での地元の味です」

最後に鎌倉の駅前の、鎌倉市農協連即売所、通称レンバイへ。
ここはもはやすっかり有名になった「鎌倉野菜」の直売所で、特に早い時間に行くと、なかなかスーパーなどでは見かけない珍しい野菜を手にいれることもできます。
個人的には、美味しい野菜ほどの贅沢や喜びはないと思っているので、ここは本当に大好きな場所。
ちなみに、市場の人たちは、なかなかまけてはくれませんが、ちょっとゴネるとおまけをつけてくれたりすることも・・笑

そして市場に行ったら必ず寄るのが、レンバイの中でもう10年も続けている、パン屋の「パラダイスアレイ」。
オーナーの勝見淳平君は、ここを最初パン屋としてではなく、「市場の休憩所」と考えていたらしく、
今でも、ここでお茶をしていると、この街で独特な生き方をしているような人がたくさん出入りしていくので、ちょっと面白いです。

よく常連さんが話し込んでいたりもするので、初めて入るには少し躊躇するかもしれませんが、
思い切ってイートインしてみると、地元ならではの会話が飛び交い、この街のユニークな側面を発見できるかもしれませんよ。
そしてアレイのスタッフも、ここに来る人も、みな優しく面白い人が多いので、話してみると思いがけない情報も知れるかも?(入り口には、ローカルイベントのフライヤーとかもたくさん置いてあります。)

ちなみにこの日は、市場で手伝っている小学生のユリナちゃんに遭遇。
今日は撮影に来たといったら、お洒落で賢いユリナちゃんは、今回のパン撮影のアートディレクションをしてくれましたよ。(笑)
色々と指示や意見をたくさん言ってくれたので、このパン撮影のディレクターはユリナちゃんですね。将来がとても楽しみな敏腕さでした。

さらにちょうど淳平君がお祭りの時の奉納用に作ってあった造形パンをお面代わりにされて、
ユリナちゃんとお揃いのパン仮面の2ショットに(笑)
淳平君が時折、こうやって奉納、ライブや展示会などに向けて友人に送る為に作る造形パンのユニークさも有名ですし、
もちろん普通のパンも、フォカッチャ、アンパン、バゲットやらと、基本はハードパンなのに、中には独特のモチモチ感があって、本当に癖になるおいしさ。
ちょうど自分が初めて鎌倉に住んだのが10年前なのですが、
その時に初めて食べてから、ずっと大ファンのパン屋で、僕の中の「地元の味」はここのパンの味です。



なんだか、気が付いたら散歩と言いながら、食のことばかりを書いてしまいましたが、
やっぱり地元には、「味」があるのがいいのだと今回改めて思いました。
僕は、人も、風景も、食も、音楽も、写真も、それぞれ独自の味があるものが好きですし、
都会には最先端や、高機能や、最良の答えもあるのかもしれないけど、
地元にはそれらとはちょっと違う、味があるものがあるからこそ、どうしようもなく好きになってしまうのかもなーと思いました。



◆『今日のお供のスニーカーは、僕をずっと支えてくれる相棒です。』

「思い入れのある1足、COSMIC WONDER Light Sourceの2010年のスニーカーです。
上品なパープルとシルバーの異素材と、部分的に使われている革のバランスが、カジュアルにもドレスアップにもみえるので、
東京でも、鎌倉でも、どちらで履いていてもしっくりくるので、大事に履いています。(色違いで最終的に3足購入…)
スニーカとしてもとても歩きやすく、靴としてしっかりしている所も好きで、そういうお洒落だけど機能性もちゃんとあるものが自分の中での定番です。

ちなみに、この靴は、昔勤めていた会社を辞めた日の帰り道、青山のCOSMIC WONDERに寄ってみたときに、ひとめぼれしました。
当時の僕のお財布事情からだと、少し躊躇したお値段だったと思いますが、
これから独立して一人でやっていくのだから、景気づけに、まずは足元からだな!と思って
パッと買ったという記憶があります。
あれから6年が経ちますが、お陰様でずっと歩き続けられていて、やっぱり足元からが基本と思いますね(笑)。」



●HALENOVA

TEL.0467-84-8414
鎌倉市極楽寺3-6-14
営業時間/11:00〜18:00
月曜定休 ※要確認

●鎌倉市農協連即売所
TEL.0467-44-3851
鎌倉市小町1-13-10
営業時間/午前8:00〜日没

●Paradise Alley

TEL.090-8053-9322
鎌倉市小町1-13-10(鎌倉市農協連即売所内)



栃木県出身。明治大学政治経済学部卒業。26回写真ひとつぼ展入賞後、雑誌スタジオボイス編集部との縁で、INFASパブリケーションズ社内カメラマンを務めた後に2010年よりフリーランス。
広告や雑誌の仕事と並行して、写真家の高橋恭司主催の同人誌への参加や、写真集の出版、原宿のvacantでの個展を始め、多くのグループ展での展示活動をおこなう。また原宿ROCKETなどでは、自身も参加する展示企画のキュレーション、近年は音楽家okamotonoriakiと共同での映像制作など多岐にわたって活動。
現在は2017年夏予定の、南フランスのバスクの「ETXE NAMI」でおこなう、鎌倉の文化とアートの紹介プログラムのために奔走中。