日本だけでなく中国においても高い人気を誇る卓球の福原愛選手だが、中国での人気の一因は中国メディアによれば中国語の流暢さにあるという。写真は福原愛。

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日本だけでなく中国においても高い人気を誇る卓球の福原愛選手だが、中国での人気の一因は中国メディアによれば中国語の流暢さにあるという。

ではどのくらい中国語がうまいのか。今回のリオ五輪でも、こんなニュースがあった。

「福原は中国の記者のインタビューに対して、「もう少しで銀メダルだったけど、銅メダルは金メダルと同じ。“銅”という字を分解したら、“金と同じ”になるでしょう?」と語った。大会前にも中国語のレベルの高さが伝えられた福原だが、今回も中国メディアで「中国語レベル10!」と報じられるなど、大きな注目が集まった」。

「もう少しで銀メダルだったけど、銅メダルは金メダルと同じ。“銅”という字を分解したら、“金と同じ”になるでしょう?」という和訳の元の中国語が、中国人をして彼女の中国語能力をそれほど称賛せしめたという。

では元の中国語はどのようなものだったのか。中国人の妻の助けのもと新HSK6級(中国における外国人のための中国語の国家資格。6級は自分の意見や見解を流暢な中国語で口頭または書面にて表現することができるレベル)を取得し日中中日翻訳をすることもある僕は、もしかしたらこんな中国語だったのではと想像してみた。

僕と妻は“分解”を中国語の“分開”と訳したが、百度検索で福原愛選手が実際に語ったとされる原文に当たってみて、驚いた。僕も僕の中国人の妻も驚いたのは、ここで福原愛選手が“拆開”を使っていることだ。

言われてみれば確かに偏と旁を分けることを中国語で“拆字”と言うものの、“分開”でも“拆字”でもなく“拆開”を、しかも書いた文章ではなくインタビューの時の自然な受け答えの一部として実際に口頭で答えたというのだから、中国人自身が「中国語レベル10」とまで絶賛するのも無理はない。

先の中国メディアはこの福原愛選手の中国語の流暢さについて「なにより中国人の卓球選手やコーチの中で『入郷随俗(郷に入っては郷に従え)』した結果」と分析しているが、分かりやすい言い方をすればあたかも帰国子女よろしく、中国語にそれだけ慣れているということなのだろう。

もちろん中国的環境の中での卓球の練習と中国語の勉強は切り離せなかっただろうし、卓球の才能同様に語学センスの高さもあろう。とはいえ福原愛選手にとって中国語は、メダルのための猛特訓の成果ではない。数十年におよぶ彼女の卓球人生の「郷に入っては郷に従え」の副産物に過ぎないのだ。

聞けば日本でも2020年より英語が小学3年生から必修化されるとのこと、僕的には福原愛選手のように「郷に入っては郷に従え」ばそれで十分だろうに、などとも思ってしまう。

というのも2歳4カ月になるうちの子は(たまたま福原選手と同じ「愛」という名前だったりする)中国語が母語で中国語で会話をするのだが、日本人である僕との会話は日本語なので日本語も聞いて話せる。いや、3歳にもならない子供に勉強もセンスも何もない。これも純粋に「郷に入っては郷に従え」の副産物に過ぎない。

語学とはそれほど自然なものなのだ。僕たちが日本人として日本にいるがゆえに日本語を流暢に話せるのと同じである。では福原愛選手はなぜあんなに中国語がうまいのか。答えは決して猛特訓にあらず、まして参考書やカリキュラムやメソッドにあるのではない。

■筆者プロフィール:大串富史
本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。