英国で行なわれた国民投票では、EU(欧州連合)離脱派が勝利。これによって、将来的に世界経済への懸念が台頭しています。特に日本経済に目を向けた場合、東京オリンピックが開催される2020年ごろが心配です。原因は円高。株式市場とも密接な関係があるだけに、要注意です。

今月の知りたがりテーマ●英国のEU離脱と日本経済の関係

まさかの事態が起こってしまいました。英国のEU離脱に向けて、着々と物事が進んでいるようです。7月上旬時点では、英国の国内で「再投票を行なうべき」との署名が350万人を超えています。これだけの票があれば、議会で審議されてもおかしくありません。
しかし、有権者と議会は、EU離脱に一致団結とはかけ離れており、総選挙の可能性も出てきています。さらにはドイツ、フランスといったEU諸国は、EU離脱による英国の波乱を国民に痛感させたいのか、速やかに離脱の手続きを行なうよう促しています。以上を考えると、EU離脱についての再度の国民投票を英国議会が審議する可能性は小さいかもしれません。
では実際に離脱した場合、日本経済やマーケットにどのような影響を与えることにな るのでしょうか?これは時間軸で考えるべきでしょう。
まずは離脱ショックによる2016年のマーケットへの影響です。特に金融機関の資 金調達面は心配です。これについてはリーマン・ショック時と比較すれば、グローバルに活動する金融機関の財務体質は健全ですし、大きく懸念する声は出ていません。
しかし、2018年ごろからは、英国から撤退する企業も増えてきそうで、英国経済の失速が顕著になるでしょう。そうなれば、EU圏の経済低迷にもつながり、さらに日本経済にも間接的に波及することも考えられます。でも、もっと怖いのは、2020年ごろ に起こると予想される日本経済への影響です。
ポンドとユーロの信頼が落ちたうえに、日銀の手段が限られるとなると円高がさらに 進行するというシナリオです。そして円高の進行は、数年のラグを伴って日本企業の海外生産移転と相関があるのです。
東京オリンピック前に日本経済が失速などということがないよう、アベノミクスの正 念場となりそうです。

Masumi Sai 崔 真淑 Good News and Companies代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している。