EU(欧州連合)からの「離脱」が決まった6月の英国の国民投票。多くの市場関係者が“残留”を前提に投資を考え組み立てていただけに衝撃は大きかった。一方、離脱が濃厚となってきたときから急騰した金。金市場の今後の材料をチエックしよう。

英国のEU離脱決定と急騰した金価格。
今後の金市場の材料とは

離脱か、残留か。二者択一で問われたEU離脱の是非を問う6月23 日の英国の国民投票。投票前の世論調査でも拮抗(きっこう)状態が伝えられていたが、得票率は離脱支持51・9%、残留支持48・1%と、まさに英国世論を2分する形で離脱支持が決まった。今後は、英国新政権が最長2年の歳月をかけてEU離脱に向けた手続きを進めていくことになる。
株式や為替をはじめ、市場は横断的にこの決定に足元をすくわれる状態となった。多くの参加者が犹栂〞を前提に投資スタンスを組み立てていたことから、開票日当日に離脱が濃厚となったときから、市場は大荒れ状態に。英ポンドは対ドルで1985年以来の安値に沈み、金価格はニューヨーク市場の時間外取引でアジアの時間帯の早朝から昼過ぎの6時間の間に一時100ドル超の上昇となる急騰劇を演じた。にわかに浮上した英国のEU離脱という欧州のみならず世界経済全般への不透明要因に対し、安全資産と目される金への資金移動が巻き起こり、先物市場でのファンドの買いも上昇率を押し上げた。反対に株式市場は大きく売られ、世界同時株安現象が巻き起こった。
今後、英国の離脱に関連してさまざまな問題が発生することは言うまでもない。旧共 産圏の東欧諸国を取り込んで拡大してきたEUだが、欧州統合への歩みは頓挫どころか 逆流すら否定できない状況が生まれることになる。金市場の材料ということでは、ギリ シャ財政の先行きやスペインなど一部の国での反EU勢力の台頭が認識されるくらいだったが、EUの先行きと世界経済への影響が金市場の材料として浮上するだろう。
金価格の方向性を決める最大要素となってきた米国FRB(連邦準備制度理事会)の利上げスケジュールにも影響しそうだ。7月はもとより、9月の利上げも難しいだろう。今後の状況によっては、年内の利上げも難しいばかりでなく、先行きの利下げ論議も荒唐無稽の話ではなくなりそうだ。今年に入りIMF(国際通貨基金)や世界銀行が、世界経済の成長見通しを下方修正しているが、株安などから、企業や消費者のマインドを冷やせば、需要の落ち込みから沈静化している原油安の再燃もありそうだ。同様に安定したように見え、実はファンドなどが警戒感を高める、中国の不良債権問題や景気見通しもリスク要因であることに変わりはない。
いずれも金市場の今年下半期の材料と目されてきたものだが、材料性がさらに強まり 金価格水準の切り上げにつながりそうだ。

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表
亀井幸一郎
KOICHIRO KAMEI
中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、
日本初のFP会社であるMMI、
金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、
2002年より現職。
市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。