SOURCE2●政財官
金融緩和と景気対策で日本株再浮上へ!

「対応に成功したということだ」――。英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票の開票から3日後の6月 27 日朝、首相官邸で麻生太郎財務相は記者団に短く答えた。
英国の国民投票の結果については、国内外の多くのマーケット関係者が予想を外した。国民投票の開票直前まで「残留派優位」がマスコミによって伝えられたが、実際には僅差で離脱派が勝利。世界の株式市場が急落に見舞われた。しかし、翌週からは、「世界株安の連鎖」を予想するエコノミストたちの見立てを裏切るように株価が反転し、英国のFTSE100指数は開票翌週に今年最高値を更新している。
日銀幹部は「想定外のことが起こらず、とにかく順調だった」と振り返る。離脱決定を前提に、早くから対応策を練ってきた政府・日銀の勝利といえそうだ。
英国のEU離脱決定時の政府・日銀の目標は2つ。米ドル供給に万全を期して世界の金融市場を安定化させることに加え、日本の国益を死守すべく為替介入を示唆しながらの円高阻止だった。
開票日の6月24日昼は安 倍晋三首相、麻生財務相、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁らが相次いで発言し、市場安定の必要性を強調した。
また、同日夜は麻生氏がG7(主要7カ国)の共同声明を発表。翌25日には財務省・金融庁・日銀が緊急会合を開き、27日も東京市場の取引開始前の午前8時から、政府・日銀が議論を重ねた。この間、黒田総裁が出張先のスイスから安倍首相に電話し、主要30 カ国の中央銀行が協調していくことで合意したと報告した。
特にG7共同声明に「為替レートの過度の変動や無秩序な動き」に対抗する方針が盛り込まれたことが、介入を恐れる投機筋を萎縮させ、市場崩壊を防いだ形だ。G7議長国である日本の強い要請を受けたものとみられる。実際には介入のハードルは高いとわかっている投機筋たちも、口先介入によって、みごとに投資行動を抑えられた格好だ。
思い起こせば、2001年の米国同時多発テロ、2008年のリーマン・ショック、昨年の上海暴落など世界の株式市場は何度も激震に見舞われている。しかし、今回は国際協調が威力を発揮し、世界の株式市場は異例の速さで立ち直った。市場介入を辞さない姿勢で投機を封じ、中央銀行による大量資金供給で流動性不安を打ち消せば、パニック的な株売りは長続きしないことが今回の英国EU離脱ショックで実証されたわけだ。
欧州では、スペインのバスク地方や北イタリア、英国のスコットランドなど独立運動が活発な地域が散在し、ギリシャの再破綻も懸念されている。このため、英国のEU離脱劇と似た展開が再現される可能性は排除できない。しかし、日本株に関しては海外発のショック安があれば、下げ止まり場面が絶好の買い場になる可能性が高そうだ。
一方、マーケットの混乱が収束した後は、景気対策が必要になる。日銀が7月28〜29 日に開く金融政策決定会合では、さっそく追加金融緩和が予想される。加えて、今秋発表の景気対策では、一時は予算縮小観測が流れたが、EU問題で積極財政論が盛り返し、自民党内からは総額10兆円のかけ声が出ている。世界的な超低金利で行き場のない投資マネーは膨張しており、景気浮揚を期待させる材料さえあれば株式への資金流入が進みそうだ。
過度な楽観視は禁物だが、エコノミストたちが先行きを案じているほど、日本株市場が弱いわけではないのだ。