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○"どんな仕事を選べばいいか"は重要な問題

2003年に、作家の村上龍による『13歳のハローワーク』が大きな話題を呼んだ。タイトルどおり13歳を対象として、514種におよぶ職業を紹介した書籍である。「『いい学校を出ていい会社に入れば安心』という時代は終わりました」というアプローチが新鮮で、それは見事に時代のニーズを切り取ってもいた。

ベストセラーとなっただけでなく、ニンテンドーDS用のゲームソフトが発売されたり、テレビドラマになったりしたのも、「求めていた人がそこにいた」からだろう。さらに2010年には新たに89種の職業を追加した改訂版『新 13歳のハローワーク』が発行されたことも含め、こうした領域に対するニーズの高さが伺える。

だが、それは当然のことではある。まだ不完全な状態にあるといっていい10代の子どもたちにとって、「将来、自分はどんな仕事をするのか」「なにを基準に、どんな仕事を選べばいいのか」ということは、決して避けて通ることのできない重要な問題だからだ。

○RPGキャラ風に紹介する新しい「職業指南書」

とはいっても、同書からはすでに13年の歳月が経過している。当時の13歳はもう26歳の社会人であり、『新 13歳のハローワーク』の読者もそろそろ20歳になるころだ。それだけ経てば、その年月の分だけ新たな「悩める少年少女」が出てくることになって当然である。

ましてやこの10年で(それどころか、この2、3年でさえ)、社会は劇的な変化を遂げている。デジタルテクノロジーがさまざまなことを可能にし、あらゆる常識が覆されたからだ。そんななか、これまでになかった新しい職業が続々と現れ、その一方では、ロボットやAIに委ねることのできる仕事が増えた。

今後20年の間に、いま存在する職業の半分は消滅するだろうといわれているのは有名な話。職業と、その仕事に就く人との関係性が大きく変わり続けているわけで、今後はそれがさらに加速するということだ。

そんな状況なのだから、もっといろいろな「職業指南書」があってもいいのではないかと思っていた。もちろん『13歳のハローワーク』を否定するという意味ではなく、こんな時代だから選択肢は多いほうがいいということだ。

そんな意味で、時代のニーズを的確にキャッチしていると感じさせるのが『日本の給料&職業図鑑』(給料BANK著、宝島社)と、その続編にあたる『日本の給料&職業図鑑 Plus』(給料BANK著、宝島社)である。

各方面で話題となった給料と職業に関するまとめサイト「給料BANK」を書籍化したもの。「日本の職業や仕事はかっこいいんだ!」と、仕事に夢を持ってもらいたいという思いからスタートしたものだという。

しかも、「企業"戦士"なのだからRPG風に職業を表現してみてはどうだろう」という飛び抜けた発想が原点になっているところが特徴だ。紹介されているすべての職業が、RPGのキャラクター風に描かれているのである。そして仕事の内容が平易な文章によって解説されているのはもちろんのこと、平均給料・給与、20代から40代までの給料の上昇の仕方を示したグラフなどもわかりやすく配置されている。

だから読者は、RPGのようなイラストを眺めつつ、リラックスした気分でさまざまな職業について知ることができるわけだ。

郵便局員や警察官などの「昔からある職業」に加え、システムエンジニアやWEBプログラマーなども紹介されているのは、まぁ想定内というか、十分に納得できる話。しかしそこにコスプレイヤーやユーチューバーなども入っていたりするので、「今はそれが仕事になるの!?」と、さすがにちょっとツッコミは入れてみたくもなる。まぁ、そんなところも楽しんでしまえばいいのだろうけれど。

○著者プロフィール: 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。

(印南敦史)