■連載/あるあるビジネス処方箋

20代社員を「ダメダメ君」と呼ぶ管理職こそダメな上司である理由

「ダメダメ君」。大企業や中小企業、ベンチャー企業の管理職(30代半ば〜50代前半)を取材していると、こういう言葉をよく耳にする。20代の社員で、仕事ができなかったり、上司である自分たちの指示に従えなかったりする人のことを指すようだ。要するに、「使えない部下」である。だが、管理職の話を聞いていくと、実は「ダメダメ君」という言葉が生まれる原因は、その管理職にあるのではないかと思うことがある。今回は、「ダメダメ君」と揶揄される20代の社員について、取材で知り得たことをもとに紹介しよう。

■「その会議に出たら、その分の給料は出るのですか?」

 2014年の夏、大手通信教育会社の50代前半の本部長が私の取材でこう話した。

「20代社員に対して、勤務時間外に会議に参加するように、と管理職が指示すると、会議に出るとその間の賃金をきちんと払ってもらえるのですか? と聞き返してきた。そんなことは当たり前なのに、なぜ、彼らはそう疑うのだろう。労組やメディアなどがブラック企業について報道する機会が増えたことで、影響を受けたのではないだろうか。まさに、ダメダメ君だ」

 この役員の言いこともわからないでもない。だが、私が取材をしていると、勤務時間外に会議に参加しても、その間の賃金を支給していない会社があることも事実だ。例えば、こんな金融機関がある。「就業時間の前、各部署で午前8時15分から30分ほど会議を行なうように」と、役員が管理職などに命じておきながら、その間の賃金は社員に支給されていないという。

 就業前であろうとも、管理職の指示で会議に参加するのであれば、その間の賃金を社員に支払う義務が会社にはある。20代の社員は、当たり前のことを確認しているだけのこと。このケースにおいては、その本部長は20代社員のことを「ダメダメ君」と言うのはおかしいのではないか。

■「突然、休日出勤を命じられても…」

 次は、社員数200人ほどの出版社であった出来事。2012年の夏、会社の夏季休暇に入る数日前、とある編集部の管理職が部員6人にこう言った。

「夏季休暇の1週間のうち、数日間は出社してほしい。休日返上で取り掛からないと、締め切りに間に合わない」

 結局、部員のうち4人は夏季休暇5日のうち2日を返上し、出社した。だが、20代の社員2人は出社せず、夏季休暇5日をすべて消化した。2人とも「突然、休日出勤を命じられても…」と反論し、管理職の言い分を受け入れなかったのだ。管理職は、その2人のことを「ダメダメ君」とバカにした。このうち1人を人事異動で他部署に追い出したという。それを取材の時に私に話した。

 話を聞いていると、実は本当の「ダメダメ君」は、この管理職なのではないか。日頃から部署全体の仕事や、それぞれの部員の仕事の進捗をきちんと管理していなかったのではないだろうか。きちんと管理ができていれば、さすがに夏季休暇の数日前に「間に合わないから、休日を返上せよ」とは言わないだろう。もともと、日本の企業では、こういった業務の管理の面で、ずさんなマネジメントやどんぶり勘定が目立つ。本来ならこういった状況こそ、問題視されるべきところなのである。

■「権限がないのに『やれ!』と言われても…」

 続いては、社員数250人ほどのIT企業の話。管理職が20代後半の社員に対して「20代前半の社員数名のリーダー役として、リードしてほしい」と言った。20代後半の社員はこう答えたという。

「私は非管理職であり、そもそもそんな権限はありません。権限がある人が言わないと、20代前半の社員は素直に聞かないと思います」

 管理職は、この20代後半の社員に対し「キミはダメダメ君だな」とからかったという。「それは、20代前半の新人になめられているんだよ」とも話したそうだ。だが、そもそも、20代前半の社員の管理をするのは、当該部署の管理職の仕事であるはずだ。ところが、自分のその仕事を放棄して20代後半の社員にさせること自体、無理がある。この場合もやはり「ダメダメ君」はこの管理職本人だと思われる。

 今回、紹介したのは、ここ5年で私が取材の中で見聞きした言葉で、特に印象に残っているものだ。20代の社員を「経験が浅い」「甘い」と否定するのは、はるか昔からある話だが、最近は特にひどくなっている印象がある。20代を否定する管理職(30代半ば〜50代前半)は、自らのマネジメント力のレベルが低いことを棚上げし、20代社員を「ダメダメ君」などとバカにする風潮がある。まずは、自らの能力や力量などを振り返るべきなのではないだろうか。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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