『子どもが変わる 運動能力を伸ばす育て方』(伊藤一哉著、フォレスト出版)の著者は福岡を中心として、全国的にも珍しい「自信を育むための運動教室」を展開している、「グラッチャ子ども運動トレーニングセンター」代表。

これまでサッカー、体操、空手、テニス、スポーツ家庭教師などさまざまな運動教室の運営に携わってきたという人物で、指導してきた生徒は1,000人を超えるのだとか。

本書では子どもたちと一緒に汗を流した経験を軸として、子どもの運動能力を伸ばすコツや、子どもを運動好きにする方法を明かしているわけです。

■12歳までに運動神経は決まる!

運動が好きになり、運動で身につく能力を高めることには、さまざまなメリットがあると著者は主張します。

また、運動を経験することで身につく力には、大きく「体」と「心」の成長があるのだそうです。

そして著者が注目している年齢は、「ゴールデンエイジ」と呼ばれる一生のなかで唯一、動作の習得に特化した時期。

ゴールデンエイジとは3歳から12歳までの時期にあたり、つまりは幼稚園から小学校にかけての年齢です。

この時期に多くの動作の経験をしていることが、一生の運動神経を決めるといっても過言ではないというのです。

また、同じように忘れてはいけないのが「心の成長」。

運動が上達していく過程において、「運動にハマる」「相手との競争や仲間との協同」「反復練習による習得」など、子どもは日常生活にはないさまざまなことを経験します。

そしてそれらを通じて、集中力や忍耐力、集団のなかでの行動、適切な選択など、大人の社会を生き抜くために必要な力を身につけるということ。

■習得と集中の力で勉強力も変わる

運動することで得られるさまざまな効果のなかでも、著者は「習得の力」と「集中する力」に注目しているのだそうです。

少し意外な気もしますが、「習得の力」と「集中する力」によって、「勉強の力」も劇的に変わるというのです。

習得する力が身につくと、子どもはさらにレベルアップしたくなるため、「習得の連鎖」が起こるから。それは、どんな能力を高めるうえでも最高の循環だといいます。

さらにいえば、習得をするために欠かせないのが「集中する力」。

子どもは習得することが楽しくなると、そのために想像以上の集中力を発揮するもの。いわば運動を習得する喜びが、集中力を養う力になるというわけです。

■運動は自信をつけるためにも有効

そしてもうひとつ、大切な力として特筆すべきが「自信」。自信がつくと、クラスでリーダーシップを発揮できるなど、さまざまなメリットが生まれるのです。

自信を身につけるためには、「できた!」という、その子自身の気づきが必要。自分でやってみて、「やれた」という感覚をつけることが自信につながっていくということです。

また、お父さんやお母さん、学校の先生、体育教室の指導員、習いごとの先生などからほめられることで、自信をつける子どももたくさんいるそうです。

そういう意味でも、そのきっかけとなりやすい「運動」を経験することはとても大切だというのです。

■いつから運動をはじめればいいか

では具体的に、いったいいつから運動をはじめればいいのでしょうか?

このことについてはさまざまな意見があるそうですが、著者は「早ければ早いほどよい」と考えているのだといいます。

時期に多少の違いはあるものの、子どもには神経系の発達が盛んな時期があります。そのとき、一生のうち一度だけ、そして生まれてからこの時期までに、神経系の95%程度の発達が終わってしまうというのです。

その時期とは、生まれてから第二次性徴(小学校高学年〜高校生くらいに起こる、大人の体になる時期)まで。細胞分裂が盛んに起こり、体の発達が激しい時期に、神経系の発達もピークを迎えるわけです。

イメージしやすい例を挙げましょう。幼少期までに自転車に乗れるようになれば、大人になっても乗ることができます。たとえ久しぶりだったとしても、体が記憶しています。つまり神経系での習得とは、このような現象のこと。

しかし大人になってからでは習得に時間がかかり、また、すぐに忘れてしまいます。なぜなら体に身につくのではなく、頭に記憶として残っているだけで、体がついてこないから。

神経系での習得と、そうでない場合とではこれだけの違いがあるからこそ、少しでも早く、たくさんのことを体感することが大切だというわけです。

本書にはこうした基本的な考え方から、子どもの運動能力を伸ばすためのエクササイズまでが網羅されています。そのぶん、子どもの運動能力と、それを伸ばすためのメソッドを効率的に身につけることができるでしょう。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※伊藤一哉(2016)『子どもが変わる 運動能力を伸ばす育て方』フォレスト出版