■連載/男の腕時計

【男の腕時計】予算100万円は格上“マニュファクチュール”狙い

価格別でお勧めの時計を提唱してきた本連載も、ついに大台の100万円に到達。

この価格帯になると、もはや実用性や機能性という話よりも、どれだけ丁寧に時計を作っているかという“嗜好品”の世界に入ってくる。

時計の歴史や文化を楽しむために時計を手に入れるというのが正しい考え方だ。

■人類の英知として受け継がれてきた機械式時計の伝統と文化を楽しむ

 クルマの場合は、高価であるほど“走る”“曲がる”“止まる”という基本性能に優れ、安全性も高い。しかしながら、時計というのは不思議なもので、1億円の時計であっても100円の時計であっても、“正しい時刻を表示する”という基本性能は変わらないし、安いからといって性能が不十分ということにはならない(むしろ安価なクオーツ式の方が正確)。もはや高級時計は好きか否かで選ぶ嗜好品であり、そこに大金をつぎ込む行為を自己満足だと揶揄されるのは仕方がないだろう。

 時計が嗜好品としての価値を高める価格帯は、大まかには100万円前後である。この価格帯なら“マニュファクチュール”と呼ばれる格上ブランドに手が届くからだ。

 時計ブランドは、大まかには2種に分かれる。そのカギを握るのは、時計を動かすエンジンであるムーブメント。専門会社から購入した汎用ムーブメントを搭載するブランドは「エタブリスール」と呼ばれ、ムーブメントなどのパーツ類まで全て自社一貫製造するのが「マニュファクチュール」となる。ムーブメントの開発には時間と資金、そして経験が求められるため、マニュファクチュールとは“一流の証”なのである。

 マニュファクチュールの大きなメリットは、ムーブメントの開発と同時にケースやダイヤルの開発を進めることができるので、全体的なバランスの調和がとれているということ。さらに名門ならではの個性を発揮できるということ。さらには自社製品に対して責任をもって対処してくれるので、アフターサービスに対する安心感がある。誰もが知っているメジャーブランドではないかもしれないが、ブランド番付としては三役クラスであり、時計愛好家に対して“自分、時計知ってます”というアピールになるくらい威張りが利くだろう。

 しかし何よりも、知性と富と権力の象徴であった“時計”の文化を受け継いできた正統派を手にするという満足感こそが最大の魅力。例え自己満足と揶揄されても気にならないくらい、その満足感は段違いに高いのだ。

■窓から見えるパーツ群のスピード感に圧倒される

ゼニス エル・プリメロ クロノマスター
ゼニス
エル・プリメロ クロノマスター

1969年に誕生したクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」は、毎時36000振動し、1/10秒の計測が可能という高性能仕様。その正確無比の動きはダイヤルに設けられた小窓から鑑賞可能となっている。なおインダイヤルの配置バランスは、1969年の初代モデルからの引用。最新モデルでありながら、ブランドの伝統が詰まっている。

ケース径:42mm
ケース素材:SS
ムーブメント:エル・プリメロ4061(自動巻き)
価格:92万5000円(税別)

篠田's ジャッジメント
機能性     ★★★★
タフネス    ★★★
質感      ★★★★
オリジナリティ ★★★★★
※各項目5点満点で評価

■何も足さず、何も引かない。そのシンプルさこそが至高

ジラール・ペルゴ 1966
ジラール・ペルゴ
1966

1791年に創業した老舗ブランドのシンプルなラウンドウオッチ。小ぶりなカレンダーを3時位置に収めるのみで、それ以外の装飾はない。しかし優美なリーフ型の針がダイヤルの際まで伸びており、秀逸なバランス感を作り出す。ちなみに以前はゴールドケースのみだったが、今年からステンレスケースが加わり、買いやすくなった。

ケース径:40mm
ケース素材:SS
ムーブメント:GP03300-0030(自動巻き)
価格:84万円(税別)

篠田's ジャッジメント
機能性     ★★★
タフネス    ★★★
質感      ★★★★★
オリジナリティ ★★★★

■ケースの構造でもオリジナリティを追求

ジャガー・ルクルト レベルソ・クラシック・ミディアム
ジャガー・ルクルト
レベルソ・クラシック・ミディアム

1931年に誕生した歴史的傑作は、ポロ競技中に風防ガラスを守るという目的で考案された反転ケースが特徴。ケースバック側にはエングレービングで文字を掘ることも可能。カレンダーもないシンプルな構成だが、優美なアールデコスタイルのケースデザインやレイルウェイ模様、そして柔らかなインデックスが完璧に調和している。

ケース径:40.1×24.4mm
ケース素材:SS
ムーブメント:Cal.965(自動巻き)
価格:91万5000円(税別)

篠田's ジャッジメント
機能性     ★★★★
タフネス    ★★★★
質感      ★★★★
オリジナリティ ★★★★★

取材・文/篠田哲生(しのだ・てつお)

1975年千葉県生まれ。嗜好品ライター。時計専門誌からファッション/ライフスタイル誌、モノ情報誌など、幅広い媒体で時計企画を中心に担当。某時計学校を修了し、機械式時計の分解/組立も行なえる、業界屈指の実践派。

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