【とと姉ちゃん】「あなたの暮らし」の石けん比較、実際の雑誌でどう紹介されていたのか

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どうも服部です。8月17日に放送された第117話が、平均視聴率25・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と自己最高を更新した放送中のNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」。雑誌つくりが始まって以降、本当に面白くなってきましたね。

昭和時代をさまざまな形で振り返っていくシリーズ記事、今回はその「とと姉ちゃん」8月15日週で取り上げられた石けんの商品比較と台所特集が、「あなたの暮らし」のモデル雑誌である「暮しの手帖」で実際に取り上げられていたのか、その場合どのように取り上げられたのか、調べてみました。

※ネタバレになる内容も含みますので、撮りためていてまだ見てないという方はご注意ください。

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「とと姉ちゃん」では、石けん比較の記事が「あなたの暮らし」に掲載されるのは昭和30年発行の第35号ことでしたが、「暮しの手帖」に実際に載ったのは、それより2年早い昭和28年6月1日発行の第20号でした。

「とと姉ちゃん」では、国産の石けんだけの商品比較でしたが、「暮しの手帖」では、国内製品と外国製の比較という切り口だったようです(※画像をクリックまたはタップすると拡大表示されます。以後同)。「SOAP」というイラストの下には「暮しの手帖研究室」と入っています。すでに試験チームが結成されていたようです。

とても貴重な雑誌なので、思いっきり開くことができないため中央部分が見づらいですが、右ページ左下の表を拡大したものがこちらです。「洗滌(浄)力」を数値で比較したものです。記事を読むと、洗う前の汚れた布の重さと洗った後の重さを比較したもののようです。

日本品がイロハニ、外國(国)品がABCとなっており、具体的な商品名での比較にはなっていません。「とと姉ちゃん」と同じような大人の事情(検査機関が商品名は出さないくれと頼んできた)があったのでしょう。

続くページを見ても商品名での比較は出てきませんが、日本製品と外国製品を総合的に比べているので、あまり物足りなさ感がありません。花森安治さん(唐沢寿明さん演じる花山伊佐次のモデル人物)の編集力、さすがです。化粧石けんに続いて、洗たく石けん、合成洗剤も比較しています。

最後の見開きでは、結論が述べられています。落ちや手荒れに関しては、外国製品に比べても遜色がないが、香りとパッケージは日本製品が見劣りする。結論の後に(結論ではなかった)、再び「包装について」記述されています。商品の品質についての比較は一切書かれていませんでしたが(なんらかの制約により)、デザインに関してはしっかりと比較をしています(さすが花森さん)。

「日本品では花王石けんがよろしい。ただこれは、戦前からの古いデザインで…」、「エマール(花王)は、例の花王の朱色にこだわっているようだが、何かそういう概念的な色のこだわりは、商品のデザインの場合、日本の悪いクセ」など、事細かに指摘をしています。

2つ次の号、昭和28年12月1日発行の第22号には、再び「暮しの手帖研究室」による記事、「暖房」という、どの暖房が一番暖かいのかという比較記事が入っていますが、この場合の比較は電気・ガス・木炭・練炭といった燃料なので、飛ばします。

「とと姉ちゃん」では、石けん比較記事から次の比較記事を発行するまで、あまり時間が開いていないようでしたが、「暮しの手帖」で見てみると、次回の比較記事が出るのは1954年(昭和29年)12月1日発行の第26号。実に1年3ヶ月後のことでした。ちなみに、第20号の表紙は「美しい 暮しの手帖」でしたが、「暖房」の比較記事が載る第22号より「美しい」がなくなり、現在と同じ「暮しの手帖」に変わりました。

「とと姉ちゃん」では、石けん比較後の最初の商品試験は、歯ブラシでしたが、「暮しの手帖」ではソックスでした。「考えてみると、と言っても三十年ほど前までのことなのだが、靴下は日本ではゼイタク品だった。」という書き出しで始まります。昭和29年には、それほどゼイタク品ではなくなってきていたとはいえ、「靴下=すぐ破れる」という印象を持つ人が多かったようで、商品試験が行われました。

左ページの表には、試験に使われた商品のメーカー名と商品の値段、種類、色、ゴムの有無が表記されています。メーカーは3社で、内外編物(現・ナイガイ)、レナウン、福助足袋。試験内容は、3ヵ月間毎日履き、3日目に電気洗濯機で洗濯をするというものでした。いずれも現存メーカーなので結果の紹介は控えますが、ちゃんと実名で商品比較がされました。

商品試験はそこから軌道に乗り始め、第26号の4日後に発行された第27号には、マッチ比較が掲載されました。百円ライターの登場以前で、ガスレンジやストーブに点火したり、タバコに火をつけたりと、現代より圧倒的に使用頻度が多かったマッチですが、マッチを買う際に製造メーカーを気にする人はほとんどいないといいます。

一方で、軸が折れやすかったり、すぐ消えたりするものなど、粗悪品を手にしてしまうことも多々あったようで。そこで、当時123社もあったマッチ製造会社から12社のものを選び、試験が行われました。

グラフも多用していて、1箱の本数、不良軸の数、発火の悪い軸の数の比較結果が紹介されています。現代感覚からすると驚きますが、無頭(発火する頭薬がついていない)のマッチが何本も入っていたり、何本かが反対向きに箱入りされているもの、規格の本数より少なく入っていたりするものも少なくなかったようです。

商品試験と並ぶ台所特集は、ソックス比較より1号前、昭和29年9月1日発行の第25号からスタートしていました。

KITCHENと英語の表題です。今後10回にわたって連載されるという、気合の入った特集でした。台所とは、流し台、調理台、煮たき台の3つからなり、それをどう並べるかを考えていくといいます。

台所特集第1回は、一番シンプルなI字型のキッチンを取り上げています。「とと姉ちゃん」117話では、坂口健太郎さん演じる星野武蔵の家の台所を取材していますが、この台所がモデルだったのでしょうか。雰囲気が似ています。

キッチンの続きは、次号の第26号(昭和29年12月1日初刷号)に掲載されています。前号ではI字型だけが紹介されましたが、今号では「L字型の台所を考えましょう」ということで、まずはL字型とはなんぞやということに始まり、さらにはL字型の発展型であるU字型……、そして、オシャレ感あふれる「新しい型」のキッチンまで紹介されます。キッチンの型の紹介は今号までで、次号では「流し」について紹介されていました。

もちろん商品試験と台所特集以外にも紙面を割いていて、昭和29年9月発行の第25号には、昭和23年9月発行の「暮らしの手帖」第1号で特集された「直線裁ち」の洋服をまとった3人の女性を撮影した「直線裁ちの3人」というファッション記事が載っていました。6年経っても「直線裁ち」は健在ですね。

左の写真は有楽町駅周辺のようです。現在ならクレームがつきそうな道路横断のシーン。左側のチキンソースの広告がついたTEISANバスは、当時は主に在留米軍人家族のスクールバスを運行していた帝産オート(現・帝産観光バス)のようです。

最後は昭和29年6月1日発行の第24号から、「駄菓子やの店先で」というページを取り上げました。すっかり駄菓子屋さんを見なくなりましたが、懐かしの駄菓子やおもちゃが並べて紹介されています。眺めているだけでテンションが上がりますね。

「とと姉ちゃん」、今後どんな展開になっていくのでしょうか。楽しみですね。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)