“人前で授乳”は非常識!? 子連れママの「権利」と「公共マナー」の折り合いの付け方|光畑由佳さんインタビュー(3)

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公共の場でのプレママ&ママたちのマナー問題。授乳、泣き声、ベビーカー、マタニティマーク等々、論争になることも増えました。

マタニティマークは“妊娠様アピール”!? 理解されない現状

お互い気持ちよく過ごすにはどうしたら?「子連れスタイル推進協会」代表の光畑由佳さんに聞きました!

レストランでの授乳は“当然の権利”?それともマナー違反?

――「公共の場での子育てマナー」が社会問題化しています。怖くて赤ちゃん連れで外出できない、マタニティマークを付けられない、というママも少なくありません。

『ちょっと前のことになりますが、レストランでの集団授乳が話題になったことがありました。

「ランチを終えたママたち5人組が一斉に授乳ケープを付けておっぱいをあげ始めた。コレってどうなの?」と。

ネットは案の定、大炎上。

「授乳は当然の権利だからいいじゃん!」
「こっちは見たくないんだよ!赤ちゃんが小さいうちくらい出かけるな!」
「隠しているんだからいいんじゃない?」
「人前で授乳するなんて!女を捨てているとしか思えない!」
「ケープの中でおっぱいを出していると思うと、悪いけど周りは意識してぎくしゃくしちゃうよな?」

こんな噛み合わない議論が、延々と続いてしまって……

これでは若い子たち、「コワッ」って怯えちゃいますよね?子育てって大変なんだな、まして母乳でなんて育てられないなぁって。』


――日本の少子化の背景として、ママやプレママへの風当たりの強さがあるともいわれます。

『海外でも、同じようなムーブメントが起こることはあるんですよ。

例えば、あるママの「○○で授乳をしていたら止められた!」という発信をきっかけに、ママたちが授乳をしながら街を練り歩く、大規模な授乳パレードに発展したりとか。

最近ではアルゼンチンのテレビ局で、警察から公共の場での授乳を禁じられた女性への支持を表そうと、女性ジャーナリストが生放送中に授乳をして話題になりました。

ほかにも映画「ブラック・スワン」等で知られるハリウッド女優のミラ・クニスさんも「授乳の時には胸を見ないで欲しい」と、ひとりのママとして周囲に理解を求めていましたね。』


――授乳は“当然の権利”か否か、日本に限った問題ではないんですね。

『ええ、世界のあちこちで、たくさんのママが同じ悩みを抱えています。

でも、いろんな立ち位置から考えてみると。

おっぱいを性的なモノとして捉える人がいるのは、どこであれ致し方のないことなんじゃないかな、とも思うのです。』

――致し方のないこと、ですか?

『日本にしても世界にしても、人口のほぼ半数は男性です。

それに女性でも、おっぱいは隠すべきもので、授乳だからって人前に出していいモノとは思えない人、決して珍しくないのではないでしょうか。

私も隠す“べき”ものとは思わないまでも、自分の胸を公共の場で見せることには抵抗がありました。前々回のインタビュー(授乳服・ケープどっち? 光畑由佳さんに聞いた“赤ちゃんを泣かせない”コツ【動画あり】)でもお話ししたとおり、そもそも“子連れスタイル”の活動のきっかけは、電車の中でおっぱいを出さざるを得なかった経験にありますから。

さらに個人的な体験ということでいえば、私の世代は子どもを産まずに働いてきた仲間も多いんですね。彼女たちからしたら、理解しがたい気持ちになることもあるでしょう。

ほかにも例えば、不妊治療をしていて、胸が出ていようが出ていなかろうが、そういう光景を見るのが辛いという方もいらっしゃいます。

おっぱいを出して堂々と授乳することが、当たり前だった時代もありました。

でも現代のように、これだけ多様性のある世の中では、良くも悪くも、昔のように単純にゆかないことっていっぱいあるんですよね。』

――いろんな見方の人がいるのも分かりますし、また人前でおっぱいをあげるのは恥ずかしいような気持ちもあって、私も母乳育児をしているママのひとりとして複雑なところです……授乳は“当然の権利”と信じたいのですが。

そうは言っても、おっぱいは出したくない!?

『母乳をあげることが“当然の権利”だとは、私も思います。

でもやっぱり、公共の場で、おっぱいは出さないほうがいいのかなぁ、とも思うのです。

人前で胸を出すことについての抵抗感は、私が子育てをしていた20年前も今も、あまり変わらないんじゃないかしら。

それにいくらママ自身が“当然の権利”と信じていても、授乳しているところを男性からジーッと見られたら「あの人、エッチだな」、「イヤだな〜」と、どうしたって気持ちがザワザワしちゃいますよね。

何より、自分も恥ずかしいけど、周りも困るんじゃないかな。

男性にしたって、大半が見たくて見ているワケではないでしょうし。でも見えちゃうワケだから、目を逸らすことも強要できないというか。』


――そういえば“公共の場”だけでなく、身内でも微妙な雰囲気になることがあります。

法事で授乳のために席を外そうとしたら「水臭いわね、ここでしなさいよ!」と言われたり。実家ですら、赤ちゃんが泣き始めると父親が静かにスーッと席を立ったりとか。

『公共というオープンな場で“多様性”に対応するのも難しいことですが、親戚や家族といったクローズな場で“暗黙の了解”みたいなものを求められるのも、また逆に求めるのも、ママとしては厳しいですよね。

特に実家のお父さん!娘がリビングでおっぱいを出すかどうか、家族全員で見ていたドラマで突然ベッドシーンが始まっちゃったみたいな、あのビミョーな空気感は避けられるものなら避けたいのでは?

ひょっとしたら心の中で「昔は風呂にだって入れてやったのに」なんて、ひとり寂しく思っているかもしれないですもの(笑)。』

――ママとしては、赤ちゃんがおっぱいを欲しがれば、できる限り早く授乳してあげたくなります。それが自然の姿だと思いますし、子どもやママを大事にする社会ということなんじゃないでしょうか。
でもコミュニティーによっては受け容れてもらえなかったり、ママ自身にも戸惑いがあったりして……なかなかうまくゆきませんね。

ママの“権利”をアピールするより大切なことって?

『子どもやママを大事にしてもらえない社会だから家の外に出られない、とばかり考えたら、たしかに外出は難しくなります。

でも……ううーん、どういったらいいのかしら。

子連れママやプレママの、とりわけ授乳マナーを考える時に「子どもを大事にする」とか「ママを大事にする」ということより、ポイントになることがあるような気がするんです。』

――「子どもやママを大事にする」より、大事なことがあるということですか。

『いえ、子どもやママはもちろん、とーっても大事です(笑)。

でも、着眼点を変えてみたらどうかしら。

アピールするのではなく、その場に“そっといる”ようにしてみたら?いわば“波風を立てない”ように。

これはトラブルを起こさないようにという意味ではなくて、周りに気遣いを強いないようにするというか。』

――場に“馴染む”ということでしょうか。

『そうですね!場に、社会に“子連れが馴染む”ように。

たとえ目の前に男性がいても、子どもやママにどう接していいか分からない人がいても、気を遣わせなくてもいいように。』

――そんなことって、可能なんでしょうか。

『できます!できるんですよ〜ッ!(笑)授乳をしていても、授乳中だということすら分からないソリューションが「授乳服」です。

「授乳服」についてはインタビューの初回でも、授乳シーンの動画付きで詳しくご紹介していますが、赤ちゃんはおっぱいを飲んで満足できますし、ママも胸が見えないから安心ですし、周りも「子どもを抱っこしているんだな」としか思いません。子どもも、欲求がすぐ満たされるから泣くこともなくなります。

つまり、“目立たない”。

硬い言い方をすれば、声高にアピールする必要もなく、そっとママと赤ちゃんの“当然の権利”を守ることができるのです。

「授乳服・ケープどっち? 光畑由佳さんに聞いた“赤ちゃんを泣かせない”コツ【動画あり】」でも少しお話ししましたけれども、ここに授乳服とケープの大きな違いがあります。

今日の冒頭でもお話しした「授乳ケープ」は、胸は隠せるのですけれど、明らかに「授乳してます!」というのが分かっちゃうんですよね。赤ちゃんがぐずり出してから、ケープを着けるまでの間に泣き出しちゃったりすれば、さらに人目を引きますし。

多様性のある社会で子育てをしてゆくには、場を乱さないことが必要になってくると思うのです。

じゃあ外出を我慢しなければならないかといえばそうではなくて、「赤ちゃんと一緒にいたい」、「お出かけしたい」、「でも周りに迷惑は掛けたくない」、そんな望みをすべて、無理なくかなえる選択肢もある、ということ。

母乳での子育ては「コワッ」となるようなものでは、決してないのです。


昨今の「マタニティマークを付ける?付けない?」の議論を見ていても、いまのママたちは社会に対して、本当によく気を遣っていると思います。その苦労は大変なものですが、いろんな立場の人を気遣えるということは、いいことでもあるんです。

その気遣いを産後の子育てにも上手に発揮できたら、とっても素敵なことですよね。』

マタニティマーク・ベビーカー問題も! 妊婦とママと社会

――授乳マナーに続いて「マタニティマーク」のお話が出ましたが、私の友人も「不快に感じる人がいると思うと付けづらいし、付けていると気遣いの足らない“ずうずうしい女”と思われそうで、それもイヤ」と悩んでいました。

『周りを気遣うことのできる、優しい人なんですね。

プレママもね、公共の場での授乳と同じように、多様性のある社会の中では、やっぱり“そっといる”ことが大事だとは思います。

それでもマークについては付けていたほうがいいし、付けて欲しいな、とも感じています。

「席を譲って欲しくてこれ見よがしに付けてるんだろ?」と絡んでくるような人は、その行為自体がマナー違反としても、例えば不妊治療をしている人によっては、辛いと感じる人もたしかにいるかもしれません。

でも、妊娠している時って何が起こるか分からないんですよね。外出先で突然倒れでもしたら「妊娠中」かどうかで措置も変わってきますから、ママと赤ちゃんの命にも関わります。これは“ずうずうしい”とは別次元の問題。その点は広く、理解を求めたいところです。

それに時々「この人に席を譲ってもいいのかな?このお腹には赤ちゃんがいるのかしら、それとも???」と迷うことがあります。妊婦さんに席を譲りたいという気持ちを持っている人たちにとっては、マークで見せてくれたほうが無駄にモヤモヤしなくて済むんですよ(笑)。

多様な社会の中にはそんな人たちがいることも、知っておいてもらいたいなぁ。』


――同じくマナー問題で取り上げられる「ベビーカー」についてはどうでしょう?

『いまでこそベビーカーを畳まずに電車やバスに乗れるようになりましたが、以前の「ベビーカー禁止」だった頃のマナーを信じている人たちも少なからずいて、残念ながらまだまだ、現在のマナーが浸透していない感じはありますね。』


――私は腰痛気味ということもあって、ベビーカーでの移動がどうしても多くなります。我が家は双子なのでサイズも大きく、横幅は車いすとほぼ同じくらいなのですが、通れないような場所もちょくちょくあり……
そんな時には人の手を借りざるを得ず、“目立たず”に“そっといる”だけでは済まされないのですが。。。

『あらあら!そんな時にはもちろん、助けを借りていいんですよ!

立っている者は、夫でも、家族でも、親戚でも、そこを通り掛かっただけの人だって、使っちゃっていいんです!(笑)

これは双子のママに限ったことではもちろんありません。ベビーカーを押してみて初めて気付くような段差や、エレベーターがないところって町のあちこちにありますし、ベビーカーのことでなくても、誰かに助けてもらったほうが楽になることって、いくらでもあると思います。

人の手を借りることで、ママが楽になって、笑顔になって、赤ちゃんをみんなで育てることができれば、それが子どもにとっても、より良い環境になるんですから!

これはマナーとは、別の問題です。ユニバーサルデザインにもつながる考え方ですが、「子どもやママを大事にする社会」は、みんなにとってもいい社会のはずなんですから。』


――なんだか、ホッとしました(笑)。最後に「公共の場でのマナー」に悩むプレママ&ママたちに、励ましのメッセージをいただけますか。

『皆さんが直面している問題の、見方をぜひ、ちょっと変えてみてください。

「授乳」については、社会で波風を立てず、周りに気遣いもさせずに“当然の権利”も使える、赤ちゃんもママも満たされて、多くが心地よく過ごせる、そんな方法もあるのです。さらに子どもの泣き声も、それでほとんど解決できるってことを、まず知って欲しいですね。

「マタニティマーク」や「ベビーカー」のマナーについては、社会としての課題も依然としてあるでしょう。そんななかでママたちが笑顔で過ごすためには、世の中に馴染むようにしながらも、かといって「周りに助けてもらっているのはダメ母」とも思わないことでしょうか。

ママたちが「楽」をすることの社会的なメリットは、また次回あらためてお話ししますけれども、ママが笑顔で子育てできていることは、自分や子どものみならず「社会」にとって絶対にいいことなんです。そのことには、ぜひ自信を持って!

ママやプレママが笑って、気軽に出かけられるような社会を、一緒につくってゆきましょう!』

■光畑 由佳(みつはた ゆか)氏 プロフィール

子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案するNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表理事&授乳服メーカー「モーハウス」代表。三児の母。内閣府「暮らしの質」向上委員会委員、経済産業省「中小企業経営審議会」臨時委員、茨城県ユニセフ協会評議員、茨城大学社会連携センター特命教授。趣味はお産・おっぱい・建築とのこと。