炎上した錦織圭のトイレットブレーク、何がいけなかった?

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 こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長で、テニス留学の経験がありテニスライターでもある和久井香菜子です。

 錦織圭選手が96年ぶりにオリンピックでテニスのメダルを獲得しました。

 しかし、その喜びに水を差す問題が。それは、セカンドセットが終わったときの錦織選手のトイレットブレークです。コートを去って戻ってくるまでに12分もかかったため、錦織選手のTwitterアカウントには、対戦相手であるラファエル・ナダル(スペイン)のファンと思われる海外のユーザーから厳しい批判のツイートの数々が送られました。

ナダルのファンのツイート:「錦織圭はラファがセカンドセットを制した後にシャワーでも浴びたのでは。それは許されることなのか?」
元スペイン女子テニス選手のコンチタ・マルティネスのツイート:「錦織選手にシャワーを浴びることができるほどの時間をトイレにいく時間に与えたのは信じられない」
 コートに戻ってきた錦織選手が着替えており、すっきりした印象を与えたからか、シャワーを浴びていたのでは? という誰かの憶測をそのまま信じてしまう人が多かったようです。

 しかしその後、錦織選手はトイレに時間がかかった理由について、試合をしていたコートNo.1ではなく、片道500mほどの場所にあるセンターコートの更衣室に案内されたことを明かしています(海外のスポーツニュースサイト「bolamarela」より)。

◆「トイレットブレーク戦術」はテニスにおいて主流

 そもそも、錦織選手のトイレットブレークの長さはルール違反ではありません。オリンピックが採用しているITF(国際テニス連盟)のルールでは、トイレットブレークは3セットマッチなら1回、5セットマッチなら2回。どちらかが6ゲーム(タイブレークなら7ゲーム)を先取して「セット」が終了したときに取ることができます。

 そして、トイレットブレークの時間については「reasonable time(適当だと思われる時間)」とだけ記されており、具体的な制限が設けられているわけではないのです。

 ところでこのトイレットブレーク、ほんとうにお手洗いに行きたいときというよりも、試合の流れを変えたいときに取るのが主流です。

◆テニスの試合を決める「流れ」

 試合中、錦織選手はナダル選手を終始圧倒していました。通常、ミスが少なく、しぶとくボールを拾ってつないでくるナダル選手がこの試合では「ミスが多い」と感じるほど、錦織選手は攻めも守りも絶好調でした。

 しかしあと1ゲームで勝利、というところで錦織選手は調子を崩し、逆転されてセカンドセットを取られてしまいます。このままファイナルセットに突入したら、ナダル選手は勢いづいたままだったかもしれません。正直、「もうダメだ」と思いました。

 錦織選手は、なんとか気持ちを切り替えて、流れを自分に引き寄せないといけません。ここで錦織選手がトイレットブレークを取るのは、たいへんよくある戦術です。プロテニス界では「セットを落としたらトイレに行く」のがお約束になりつつあると言っても過言ではないのです。

◆ブーイングに耐えた錦織選手

 精神的に余裕がない選手ほど、観客の動きが気になったり、審判のジャッジが気に入らなかったりして文句を言う傾向にあります。錦織選手のトイレが長かったとしても、ナダル選手が苛つかなければ問題にはならなかったでしょう。

 一方で、錦織選手がコートに戻ってきたとき、会場からは割れんばかりのブーイングが起こりました。完全アウェイの空気の中で、自分のプレイをすることは簡単なことではなかったはずです。

 ファイナルセットは「より冷静を保って自分のプレイをした方が勝ち」という意味で、錦織選手に軍配が上がったように見えました。

◆トイレットブレークの悲喜こもごも

 ところでこのトイレットブレークには悲喜こもごもあるものです。

 守屋宏紀という、たいへんベビーフェイスでジャニ顔な選手がいるのですが、彼が試合中にトイレットブレークを申し出たことがありました。そのとき、審判が、線審をしていた女子大学生に引率の指名をしたんです。せっかく落ち着いて気分を変えようとしているのに、女性にトイレの外で待たれたら集中どころか気になって仕方ないですよね。結局、守屋選手の「えっ!?」という抗議で、男性が引率してましたが……。

 また、ウィンブルドンの予選に出場して、緊張のあまり何度もお手洗いに行きたくなったという選手もいます。しかも通常、緊張から来るトイレって小さい方ですが、ウィンブルドンともなるともよおすのは大きい方だったとか……。

<TEXT/和久井香菜子>