『お菓子の由来物語』猫井 登 幻冬舎

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 暑さの厳しい日々が続き、涼を求めてついついアイスに手が伸びてしまいがち...だという方も多いのではないでしょうか。

 今では、誰もが手軽に食べることのできるアイスですが、日本で最初に食べたのは、1860年に日米修好通商条約の批准書交換のため渡米した徳川幕府一行だといわれているそう。

 その後、1869年5月9日、町田房蔵が横浜馬車道通りで、日本で最初のアイスクリーム"あいすくりん"の製造販売を開始。続いて1900年には資生堂がアイスクリームの販売を開始。そして1920年から工業生産がスタートしたのだといいます。ちなみに日本では、乳固形分15パーセント以上、乳脂肪分8パーセント以上のものがアイスクリームと分類されています。

 アイスに限らず、今では海外生まれの多種多様なお菓子の数々を日本にいながら楽しむことができますが、それらの由来や歴史、いつごろから日本でも普及したのか気になったことはないでしょうか。そうした疑問に答えるべく、本書『お菓子の由来物語』では、洋菓子を中心に約140種類ものお菓子の由来が紹介されていきます。

 たとえば、直訳すれば"白い山"となる"モンブラン"。モンブランは、アルプス山脈に近い地方、フランスのサヴォワ地方やイタリアのピエモンテ州などで食べられていた家庭菓子を原型とする説が有力。甘い栗のペーストに泡立てた生クリームを添えるこの家庭菓子は、イタリアでは"モンテ・ビアンコ"と呼ばれており、それがパリに伝わり、洗練され、現在のモンブランができたのではないかと考えられているそうです。

 しかし、このフランスのモンブランがそのまま日本に伝わったわけではありませんでした。今でこそ、茶褐色の栗のペーストを絞ったものに粉砂糖をかけたフランス風モンブランが多いものの、かつての日本のモンブランに使われていた栗のペーストは、くちなしで染めた、日本独特の黄色いもの。

 現在も東京・自由が丘に店をかまえる老舗洋菓子店「モンブラン」の初代店主が、1933年に旅先のフランスで目にしたモンブランに刺激され、帰国後、モンブランと名付けた自らの店を出店し、日本人の口に合うように独自のモンブランを考案。やわらかなカステラを土台にし、カスタードクリーム、生クリームを絞り、そのうえから甘露煮した栗を使ったクリームを絞って、一番上に丸いメレンゲを置くという、日本独自のモンブランを考案したのだといいます。そして、この自由が丘の「モンブラン」で考案されたケーキ・モンブランが、全国へと拡がっていったのだそうです。

 さまざまなお菓子の由来を知り、その魅力に迫れば、いつも何気なく口にしているお菓子も一層味わい深く感じることができるかもしれません。