自民党HPより

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 オバマ大統領が現在、検討しているとされる「核兵器の先制不使用宣言」をめぐって、安倍首相がハリス米太平洋軍指令官に反対の意向を示していたことを先週、各紙が報じた。元となったのは15日付けのワシントンポストの報道だ。

 だが、昨晩、安倍首相は記者団に対し、「ハリス司令官との間において米の核の先制不使用についてのやりとりは全くない。どうしてこういう報道になったか分からない」と、ワシントンポストの報道を全否定した。

 しかも、この安倍首相の否定を受けてネット上では安倍応援団が、ワシントンポストにそういうくだりはなく報道を後追いした朝日や毎日が記事を捏造した、などとわめき立て始めた。

「ワシントンポストの原文を読んできて下さい。反対を示す言葉はどこにも書かれていません」「朝日は英語も読めないのか」「完全にマスゴミの仕業だな」「反日どもがいつものように大嘘を喚いているだけ」

 まったく、バカに構うと日が暮れるとはこのことか。調べればすぐわかるのに嘘ばかり垂れ流すネットの安倍応援団は、元となったワシントンポストの記事をとくと読めばいい。以下が原文と翻訳したものだ。

〈Japan, in particular, believes that if Obama declares a "no first use" policy, deterrence against countries such as North Korea will suffer and the risks of conflict will rise. Japanese Prime Minister Shinzo Abe personally conveyed that message recently to Adm. Harry Harris Jr., the head of U.S. Pacific Command, according to two government officials.〉

〈もしもオバマが核の「先制不使用」を宣言したら、北朝鮮のような国に対する抑止力が損なわれ紛争のリスクが高まると、日本は信じている。2人の政府官僚によると、日本の安倍晋三首相は、このメッセージを最近ハリス太平洋司令官に直接、伝えた。〉

 ワシントンポストは、安倍首相が直接、ハリスに「抑止力が損なわれ紛争のリスクが高まる」と伝えた、しかも、2人の政府官僚が証言したとはっきり書いているのだ。これを読んで「反対とは書いていない」と言うのは、もはや英語力以前の問題だろう。これでもまだ捏造と言うのなら、寝言は寝てから言え、という話である。

 だいたい、怪しいのは「ハリス司令官との間において米の核の先制不使用についてのやりとりは全くない」という安倍首相のほうだ。

 実は、安倍首相が7月26日にハリス司令官と会談し、反対の意志を伝えたことは、日本の官邸、外務省関係者も一部のメディアにオフレコで認めていた。日本のメディアは自主規制して報道しなかったが、今回はアメリカ側がそれを報じたため後追いしたのである。

 さらにいえば、日本は国連で一貫して「核兵器禁止条約」の交渉開始決議に棄権しており、核軍縮の進展を目指す国連作業部会の会合でも、佐野利男軍縮大使は安全保障上の問題を理由に核が必要とし「核兵器を削減・廃絶するのはほとんど非現実的」と主張。「核兵器禁止条約」の締結に対して反対し続けている。オバマ大統領が打ち出そうとしている核兵器の先制不使用宣言についても、外務省や政府高官は非公式に反対の意志を示してきた。

 また、安倍首相自身も、2006年に「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記すなど、積極的な核武装論者であることは論を待たない。

 ワシントンポストの記事以前に、こうした事実を総合するだけでも、安倍首相が直接、ハリス司令官に反対の意志を伝えていたと可能性は極めて高いといえるだろう。ようするに、安倍はワシントンポストの報道で、世論から予想外の批判を受けたため、慌てて「発言していない」など得意の二枚舌で否定しただけではないのか。ましてや背後でこれだけの動きをしておきながら、「どうしてこういう報道になったか分からない」などと嘯くのはサイコパスとしか言いようがない。

 実は、安倍は、以前も"核武装"をめぐって発言したことを「発言していない」と大嘘をついたことがある。発端は、官房副長官時代の2002年、早稲田大学で開かれた田原総一朗氏との学生向けシンポジウムのなかで、こんなことを語ったことだった。

「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」

 まさに明確な核武装を肯定する発言で、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)がこれをスクープしたのだが、安倍はなんとそんな発言はしていないと完全否定したのだ。「サン毎」編集部はこの講演会の録音テープを入手しており、そのテープの内容を詳細に公開していた。にもかかわらず、この発言を追及された国会では、安倍は「使用という言葉は使っていない」と主張しながら、こんなことを言いはじめたのだ。

「本来静かな学びやであるべき大学の教室にサンデー毎日が盗聴器とまた盗撮ビデオを仕掛けて、そしてそれによってセンセーショナルな話題にするということは、私はそれは学問の自由を侵すことにはならないかと、強い私は危惧を持つものでございます」

 自分にとって不都合な報道には「盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けられた」とメディアを一方的に犯罪者扱いする──。もちろん、「サン毎」が盗聴器や盗聴カメラを仕掛けていたという事実はまったくなく、この発言もまた大きな問題になったのだが、保身のためならどこまでも嘘をつき通し、卑劣な罵倒を繰り出す性格は、このころから何も変わっていないのだ。今回のワシントンポストの報道を否定しているのも、それで逃げ切れると考えているのだろう。

 しかし、先日も夏季休暇中に日枝久フジテレビ会長とゴルフに興じていた安倍首相だが、海外メディアを国内メディアのようにゴルフや会食で手なずけることも、官邸が圧力をかけることもできない。実際、国内と違い安倍政権を"忖度しない"海外メディアは安倍首相の極右思想を客観的事実に基づいて冷静に分析、報道してきた。

 だが、そんな報道に対して、首相は「捏造された」と言わんばかりの態度をとっている。今回の問題だって、記事を否定するのであれば核兵器の先制不使用に対する自身の考えをあきらかにするべきだが、それさえしていないのだ。そして、ネット右翼が「反日の捏造だ」と沸き返り、反知性主義丸出しの安倍首相擁護を繰り出す──。つくづく、この国のレベルはどうなっているのか、と溜息をつくほかない。
(編集部)