ヴィレヴァン史上最も狂っていると言われる下北沢店の書籍担当、長谷川さんに『個人的に熱いマンガ』を聞いてきた

写真拡大

暑い日に、冷房の効いた部屋でまったり読書をする時間は最高ですよね。

しかし、「売上ランキングに入っているような王道マンガはもう読んでしまった…」、「この夏はもうちょっと踏み込んだニッチなマンガが読みたい」という方も多いはず。

そこで、個性的な本が揃う「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガード下北沢店の長谷川さんに、売上や人気は一切関係なしの「個人的に熱いマンガ」を教えてもらいました!

“ヴィレヴァン史上最も狂っている”と言われる下北沢店、その書籍担当が一押しするマンガとは一体?

<長谷川 朗さん(34)>
ヴィレッジヴァンガード下北沢の副店長。書籍担当。
趣味は映画鑑賞で、多い時には1日3本観ることも。
最近はAmazonプライムビデオでポケモンのアニメを観るのにハマっている。

長谷川さん一押しの“熱いマンガ”

_脇犬了以拭真緻擇靴欧
⇒陲罰タГ寮こΑ親江亜季
イムリ/三宅乱丈
た世虜玄螳魔の右手/楳図かずお
THE INCAK(アンカル)/作アレハンドロ・ホドロフスキー、絵メビウス

_脇犬了以拭真緻擇靴欧

河童にそっくりな人間が、河童の世界に迷い込んでしまい、それをキッカケに今度は河童が人間世界へ留学し、人間の社会を学ぶという内容です。

もともと水木しげるさんが好きでよく読んでいましたが、この前水木さんが亡くなられたタイミングで改めて読み直し「こんなに面白かったんだ」と再認識して今すごく熱が上がっている一冊です。

僕が読んだ文庫は1988年に発売されたものですが、もとは貸本時代(※)に作られていて、出版の時に描き直されています。(※貸本時代…本が高価なため本のレンタル店が流行った時代)

この本の好きなところは“ゆるさ”です。だってギャグがおならネタばっかりなんですよ!こんな大御所が、ここまでゆるさを出すっていうのが個人的には驚きました。

あとキャラクターの作り方がうまい。例えばこの本に出てくる「死神」もあの世に連れて行くキャラだけど憎めないんです。親しみやすさと愛嬌があって、ご本人の性格がにじみ出ている気がします。

こんなに個性的なキャラクターをたくさん生み出せるのは、水木さんかやなせたかしさんかポケモンくらいじゃないですかね。

あとこの本には個人的な思い出がありまして。クラムボンのメンバーが水木さんファンという情報を掴んだので、数年前のライブで行われたサイン会で、バッグからこの本を出してメンバーにサインしてもらいました。

表紙にサインしてもらったあと、原田郁子さんが背表紙の「水木しげる」って文字を消して「長谷川」って僕の名前を落書きしてくれたんです。その思い出とともに大事な一冊です。

⇒陲罰タГ寮こΑ親江亜季

魔法使いと人間が暮らす町を舞台に、そこから始まる恋愛と人間の国を滅ぼそうとする悪いやつとの戦いを描いたマンガです。

読んだ感想は「ジブリっぽいな」という印象。魔法、恋愛、成長物語、悪いやつとの対決っていう要素がジブリとリンクしていて、宮粼駿さんが復活するならこれをジブリでやってほしいです!

ただ絵柄が特徴的なので、好き嫌いが別れるかもしれません。全7巻、ストーリー的には6巻がピークで、電車で読みながら泣きました。

魔法を日常に落としこむって、どうも胡散臭くなりがちで難しいんですが、このマンガは違和感なく溶け込んでいます。

近年の新刊の中ではダントツの面白さ。本当に漫画史に残ってもいいと思う一冊です。

いつかジブリでやってくれないかなって本気で思っていて、店内のポップやTwitterで煽っているんですがダメで……僕の声が鈴木プロデューサーに届かないかな。

イムリ/三宅乱丈

統治する側とされる側の二つの星と、そこで生活する3つの民族を描いたマンガ。王宮内のドロドロ人間ドラマとしても、大河ドラマとしても楽しめる壮大なファンタジーストーリーです。

ハマるポイントは、設定の難しさ。作中に出てくる専門用語や組織図の説明書が入っていて、それと照らしあわせながら読んでいくんですけど、その読み解く作業によってさらに惹きこまれていきます。

だから電車の中で読むっていうよりが、家でがっつり時間をとって読みました。

一年に一冊ペースで新刊がでるんですけど、新刊がでる頃には前のストーリーを忘れちゃうので毎回1巻から読み直さないといけないんですよ。なので、今14巻で止めてて、完結したら一気読みしようと思っています。

文化庁メディア芸術でマンガ部門優秀賞を受賞していて、絵やストーリーなど突出した部分が評価されている一冊です。

た世虜玄螳魔の右手/楳図かずお

楳図かずおさんはどの作品も面白くて、どれが一番好きかっていうと選べないし、時代によって自分のベストも変わっていくんですけど、最近はこの作品が熱いです。

内容は、蘇らせることができる“神の左手”と破壊できる“悪魔の右手”を持つ男の子が、夢で見たこれから起こるであろう悲劇から周りの人を救うというものなんですが、悲劇の描き方が結構グロい。スプラッター表現が多く登場し、悪魔の右手を使った想像を超える敵の倒し方などは、楳図作品の中でもアイデアが突出している作品です。

ホラーでいうと楳図さんと伊藤潤二さんが好きで、二人に共通しているのは笑いと怖さの絶妙なバランス。怖いんだけどありえなさすぎてギャグとしても捉えられるんですよね。

個人的に楳図さんは「最後に残された天才」という感じで、水木さんが亡くなった今、楳図さんもいなくなったらそこで一つの時代が終わるなと思っています。

実は、仕事で楳図かずおさんの自宅におじゃまして対談したことがあります。あの時は人生のピークでしたね。

その時に、家具の配置をシンメトリーにしていたり、炊飯器の上にかけられた布までボーダーで統一していたりと、几帳面でこだわりのある一面を垣間見ることができました。

楳図さんのマンガはどれも素晴らしいですが、一番の作品は楳図さんご本人なんじゃないかと思います。

THE INCAL(アンカル)/作アレハンドロ・ホドロフスキー、絵メビウス

私立探偵が事件に巻き込まれてその謎を追っていくといった、フランスの壮大なファンタジーコミック。オカルト映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーとフランスマンガの巨匠メビウスが手掛ける作品です。

とにかくメビウスが描く絵がかっこいいんですよ。フランスコミックは基本的にはオールカラーでアート作品を見る感覚に近いです。日本のマンガはストーリーを繋いで一気に読みたくなるように展開しますが、この本はパラパラめくって絵を眺めるだけでも楽しい。

最初、飛鳥新社で発売された時に帯を大友克洋さんと松本大洋さんが書いていて気になって読みました。

上の二人以外にも、宮粼駿さんや荒木飛呂彦さんなどもこの作品を絶賛しており、日本のクリエイターに大きな影響を与えています。大御所のルーツを知るという点でも、マンガ好きの方におすすめしたいです。デザイン性が高いので、アートや映画好きの方もハマっていただけると思います。

フランスマンガってきっかけがないと読まないと思うんですけど、この本を読めばフランスマンガにも映画にも飛んでいけるので、様々なジャンルの扉を開けてくれる一冊です。

一冊ずつ丁寧に、熱く語ってくれた長谷川さん。

さすが書籍担当というほど知識が豊富で、マンガのストーリーだけでなく制作の背景など様々な視点から面白さを教えてくれました!

特に水木しげるさんと楳図かずおさんへの愛がビシッと伝わってきましたよ。

紹介いただいた五冊の本、さっそく読んでみようっと。