『人間はたまねぎ 自分の心の取扱説明書をつくろう!』(小川仁志/ワニブックス)

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 幸せになる、手っ取り早い方法はなんだかご存じだろうか?

 それは自分の感情をうまく「使いこなす」ことだ。幸福は何もないところからは生まれない。喜びや悲しみの結果として生じるもの。三人の哲学者(アラン、ラッセル、ヒルティ)の述べている「三大幸福論」も、それぞれ全く違うことを主張しているようだが、共通しているのは「幸福だと感じるのは心の問題に過ぎない」ということ。

 つまり、「気持ち次第で幸福になり得る」のだ。

 しかし「感情を使いこなす」ことは案外難しいと思う。嫉妬心や虚栄心に邪魔をされ、「何かしなくちゃ」と焦ったり、「自分はダメだ」と自己嫌悪したり。自分の感情とはいえ、うまく制御できないことも多い。

『人間はたまねぎ 自分の心の取扱説明書をつくろう!』(小川仁志/ワニブックス)は、その人間の感情を「使いこなす」べく、どうして人間には様々な感情が生じるのか、プラスになる感情、マイナスになる感情の区別等を哲学的視点から述べ、「幸福を感じやすい心の持ちよう」を教えてくれている。

 本書によると、人間は7つの感情がたまねぎのように、心を覆っているという。

 達成感(〜できた)、義務感(〜しないといけない)、罪悪感(〜してしまった)、親近感(〜といると落ちつくなぁ)、嫌悪感(〜受け入れられない)、劣等感(どうせ私は〜)、幸福感(幸せだなぁ)。この7つだ。

 例えば、悪い印象しかない「劣等感」という感情。これも100パーセント「悪」というわけではない。なぜなら他人と自分を比べるのは「自分をポジショニング」するために必要だから。つまり「自分という存在をよりよく知るため」に比較するのだ。そして「あの人に敗けている……」と落ち込んだとしても、「劣等感は成長のバネでもある」。

 また、できるなら感じたくない「嫌悪感」に関しても、考え方によってはプラスになる。そもそも嫌悪感を抱くのは「理解ができないから」「わけのわからない物を避けることで、本能的に自分を守ろうとしているから」。

 生きている以上、気の合わない相手もいるだろう。どうしても受け入れられない仕事や言動もあるだろう。それらに嫌悪感を抱き続けるのはとても苦しいことだ。そういった場合、著者は「現実逃避も悪くない」と述べている。無理をして疲労が出たり、身体を壊したりするのなら、「無理をせずにうまくエネルギーを分散させたほうが、結果は賢い」とのこと。自分の肉体や精神のエネルギーが「有限」であることを理解し、「これ以上は無理だ」と思った時、「逃避」してもいいのだ。

 だが、後回しにしても、結局向き合わなければならない時が来るのでは? と不満に思う方もいるだろう。その通り、現実と対峙しなければならない時は必ずやって来る。

 そこで「現実との対峙」のタイミングを「いいニュースがあるとき」にしてみることを著者はオススメしている。「悪い知らせでへこんでも、その直後にいい知らせを聞けば、回復することが可能だから」だそうだ。

 言われてみれば「そんな簡単なこと」と思うかもしれないが、つらい現実に直面している時、一呼吸置いて「現実逃避」し、「グッドニュースがあったときにチャレンジしてみる」と、冷静に考えることは中々難しいのではないかと思う。

 本書では、こういった些細な「感情の使いこなし方」を著者の実体験と哲学的知識を交え、7つの感情を丁寧にひもとくことで教えてくれている。

「ココロって面白い」「幸せって、自分次第なんだな」と思わせてくれる。たまねぎのように覆う自分の感情を一枚一枚剥がしていくことで、たくさんのことが見えてくるだろう。

文=雨野裾