VRが高齢者の歩行訓練に効果的だと判明。認知能力の回復にも期待が

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世の中には元気な高齢者もいますが、手すりがないと歩けなくなったり、もしくは歩くだけでも骨折したり、誰しもいつかは歩くことが困難になってしまいます。また、ひとたびケガをすると医療費もままなりません。そのうえ子どもや孫に心配をかけてしまいます。足腰を鍛えるためにも、高齢者にとって日々のトレーニングは欠かせません。そんななか、VRが老化予防に役立つことを、イスラエルのテルアビブ大学サックラー医学部の研究者たちが発見しました。

■ VRを取り入れたトレーニングが老化予防に効果的と判明

高齢者の歩行能力が衰えていく理由は認識能力の低下。認識能力が衰退することによって、脳の機能のみならず肉体能力も老人から奪われます。そのため、歩行能力を保持させるために、単調な動きを繰り返すトレーニングが老人ホームやリハビリ施設で取り入れられています。しかし、老化を食い止めて高齢者の歩行能力を高めるためには、従来のトレーニング内容にVRを取り入れたものが効果的だということをテルアビブ大学サックラー医学部のAnat Mirelman氏らの研究が明らかにしました。

◎ スクリーン上で足の動きを再現

Mirelman氏らは、2013年から2015年にかけてベルギーやイギリス、イスラエル、イタリア、オランダに住む282人の高齢者を対象に実験を行いました。被験者の年齢層は60歳から90歳まで。また、被験者の約半数である130人がパーキンソン病を、43人が軽い認知障害を患っていました。この実験では、136人に従来のトレーニングを、そして残りの146人には従来のトレーニングに加えてVRを取り入れたトレーニングを、6週間にわたって行いました。また、1回のトレーニングは約45分にわたるものです。VRを取り入れたトレーニングでは、被験者たちの足の動きをとらえて単調なトレーニングをスクリーン上に映し出すカメラが導入されました。そのため、被験者たちはスクリーン上を動く彼らの足の動きをリアルタイムで見ることができます。

◎ 歩行スキルのみならず認知能力にも効果的

研究チームは、6週間のトレーニングの前後で被験者たちの老化度数を計測して比較しました。すると驚くべき結果が。VRを取り入れた被験者たちの老化度数の平均値は、実験前に11.9であったところが実験後は6.0に減少。それに対して従来のトレーニングを行った被験者たちの老化度数の平均値は、実験前には10.7でしたが実験後には8.3に減少しました。VRを取り入れた被験者たちの老化度数のほうが大幅に減少したのです。その減少率はなんと42%。そして、この実験最大の発見はパーキンソン病の患者にみられました。彼らの老化度数は実験前に比べて、実験後では大きく減少。彼らの認知能力や歩行スキルをVRが回復させたのです。VRはパーキンソン病の治療に役立つといえるでしょう。

この実験結果から、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学教授である老年病学のエキスパートことStephen R. Lord氏は、「この実験はもっとも効果的な老化予防策を提示した。そしてMirelman氏らの発見は、従来のトレーニングにVRを取り入れた新たなトレーニングの形態は、コミュニティージムやリハビリ施設に導入されるだろう」と述べています。

■ VRが高齢者を救う?

先進国の抱える問題といえば、少子高齢化。2015年から2016年にかけて先進国では医療費面で2%の増加がみられたことがOECDの統計でわかりました。高齢化が進むほど医療費は増えていくいっぽうです。歳を重ねるにつれて足腰が衰えるため、高齢者のケガのリスクは高まるばかり。ケガをしたことのない高齢者ですら、老人ホームに隔離されて寝たきりになり、そのうえ肉体が老衰して世間から孤立していく未来を恐れていることは、多くの研究が明らかにしています。しかし、今回の実験結果はそのような高齢者の心配を取り除いてくれるはず。

また、2016年は「VR元年」とよばれるほど、VRがさまざまな業界で取り入れられるようになった1年です。VRのあるリハビリ施設や老人ホームが当たり前になれば、足腰の強い体を持った高齢者たちが健やかに生きていける世の中に変わるでしょう。VRは高齢者たちの目下の悩みを解決してくれるはずです。

(image by Elderly in Brighton / Garry Knight)
(著:nanapiユーザー・mekds 編集:nanapi編集部)