『AV男優しみけん〜光り輝くクズでありたい』(しみけん/扶桑社 )

写真拡大

 AV男優、しみけんの勢いが止まらない。バラエティー番組や雑誌の取材に引っ張りだこ。ペンを持てば抱腹絶倒のエッセイを書き上げる。それでいて、本業のAVでもトップクラスの出演本数を維持しているのだから、驚愕だ。加藤鷹を超えて、史上最も知名度の高いAV男優に君臨する日も近いだろう。いや、もしかするとすでにその称号すら手に入れているのかもしれない。

 そんな、しみけんをもっと深く知りたいというあなたには、『AV男優しみけん〜光り輝くクズでありたい』(扶桑社)がおすすめだ。しみけん初の著作である本書は、しみけんの半生や仕事の哲学はもちろん、AV業界あるあるやしみけん流女性を満足させるSEXテクニックまで、幅広く描かれた内容の濃い一冊だ。知られざるAV業界の実態が、トップ男優の視点から語られている部分はルポルタージュとしても貴重である。しかし何より、しみけんがどうしてこれほどまでに人を惹きつけるのか、本書を通してその答えを知ることができるはずだ。

 冬場のソープものAVが出演者から嫌がられる理由や、AV男優の肌が黒くなりがちな理由など、目からウロコの情報が次々に飛び込んできてページをめくる手が止まらない。そして印象的なのは、しみけんのユーモアに富んだ文章と、そこから伝わってくるAVへの熱い想いである。

 かつて、AVはアウトローの仕事だった。制作側も出演側も、カタギの仕事が続けられないワケありの人間ばかりで、AV制作とは裏社会の一部だった。だが時は経ち、今では地上波のテレビ番組でAV女優達がレギュラー番組を持つくらいに、AVの認知度は高まった。もちろん、最近でもニュースになったように、AV業界でも悪徳業者は少なからず存在しているだろう。だが、大部分のメーカーや事務所は健全な運営を目指すようになっている。こうした変化に伴い、特に人生に問題を抱えていない人間でも、AV女優やAV男優に志願してくる傾向が増えてきた。しみけんはおそらく、その最初の世代だろう。

 しみけんがAV男優を目指す人達にアドバイスを送っている箇所がある。しみけんが思う成功する男優の条件とは何か? 「挨拶ができること」、「コミュニケーションが上手いこと」、「謙虚な姿勢で、誰に見られていなくても率先して現場や控え室の掃除をすること」、大前提としてしみけんが挙げるそれらの要素は、一般企業の新入社員に送る注意事項となんら変わりがない。普通ではない業界だから普通のことをしなくてもいい、そんな甘えはしみけんの中には存在しない。一貫した高い職業意識とプライドは、全ての社会人の模範となる姿であるとすら言えるだろう。

 その一方で、SEXや撮影の話になると「バカでエロ」な顔をのぞかせる。40分の絡みのうち30分をア●ル舐めに費やして女優からNGをくらったり、ナンパした女性相手に童貞を捨てた直後には飲尿をせがんだり、女癖の悪さから恨みを買ってアパートの壁に大きな穴を開けられたり…このようにどこか隙があって、それでいて憎めないところが、女性からも支持を得ている要因なのかもしれない。

 しかし、「プライドの高い職業人」としてのしみけんと、「バカでエロい男」としてのしみけんは決して矛盾するものではない。いずれも、その根底にあるのはSEXとAVを心の底から愛する気持ちだからだ。AV男優をやっていて一番ツラかった仕事は?という問いにしみけんはこう答える。

僕にとっては「ツラい仕事」ってないんです。(中略)好きなことを仕事にさせていただいているので、やっぱり楽しいんです。そして、物理的にツラいことでも「話のネタになる!」っておいしく思えちゃいます。

 圧倒的なまでのポジティブシンキング。AV男優という、世間的にはまだまだ偏見に晒されている職業でありながら、しみけんが男女問わず人気者になったのは、常に彼からハッピーなオーラが放たれているからなのだろう。好きなことにとことん打ち込んでいる人間は、どんな分野でも最高に魅力的なのだ。

文=石塚就一