連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第20週「常子、商品テストを始める」第119話 8月19日(金)放送より。 
脚本:西田征史 演出:藤並英樹 堀内裕介


たまき「とと姉おばちゃん」
美子「ととなのか姉なのかおばちゃんなのかわからないわね」
アグネス・チャンさん、さかなくんさんのような、どこから名まえでどこから敬称かわかんなくなってしまった感じにも近いですね。

15年ぶりの再会を喜ぶ常子(高畑充希)、星野(坂口健太郎)、森田夫婦(ピエール瀧、平岩紙)。
想像でしかないけれど、戦争を体験した人たちだから、もう一度会えることは今と比べ物にならないほど感動的なことなんだろう。たくさんの別れがあっただろうなあと想像すると胸が痛い。

常子は帰りがけに、女児のための服を売る店の情報を星野に渡す。森田屋でわいわいやっている間にメモっていたとはさすが常子。

それよりも気になるのは、星野の気持ちだ。微妙な雰囲気を出す常子に対して、彼はじつにニュートラルな態度を貫いている。あんなに辛い別れをした元カノとの再会がこんなにも屈託がなさ過ぎていいのか。若い頃は常子への思いを不器用にだだ漏れにしていた星野が、結婚して子どもをつくり、すっかり昔の恋は上書きされてしまったかのように見える。おつきあいしてない人とは距離をとるという良識や亡くなった妻への配慮だとしても、もう少し心の揺れがあってもいいではないか。でもこれも、そうやって視聴者をもやもやさせる作戦だろうか。

11月になって、「あなたの暮し」出版は、ビルの1階に実験室をつくる。
新たな空間で、今後の抱負を語る花山(唐沢寿明)。電化製品がこれから民衆に広がっていくからそれを調査対象にしたいと言う花山に、「お言葉ですが」とお金に関して心配する水田(伊藤淳史)。
新たな門出を祝おうと盛り上がる中で、いきなり水を差す水田。水だけに。こういう意見はまた改めてすればいいだろうと思うけれど、それだけみんな真摯に「あなたの暮し」について考えている表れと思いたい。
その流れから、まずは日用品から調べることになり、水田の娘・たまき(稲垣来泉)の虫歯をきっかけに歯ブラシの研究をする。
こうして、誰にも邪魔されず信念に乗っ取った商品研究の特集と台所研究の特集を掲載した号がついに出来上がり、飛ぶように売れるのだった。

もうひとつの朝ドラ「てるてる家族」19週113回 再放送


「てるてる家族」(2003年/NHK大阪/原作:なかにし礼「てるてる坊主の照子さん」/脚本:大森寿美男/再放送は、BS プレミアム月〜土 あさ7時15分〜)

「あまちゃん」(13年)のオープングに歌詞がないのは劇中歌が多いからだが、「てるてる家族」も同じ理由なのかオープニングテーマ曲がインストゥルメンタルだった。ところがなぜか18週から歌詞ありになっている。後半戦に向けて盛り上げていこうという気合いだろうか。

和人(錦戸亮)の就職が決まり、岩田家はすき焼きでお祝い。だが、決まった先が大手製パン会社だったことがわかる。岩田製パンとライバルになってしまうが、ここでの経験が買われたことを喜ぶ晴男(岸谷五朗)。
冬子(石原さとみ)はパン工場で晴男と話しながらうたたね。パン工場でみんなが楽しく働く夢を見て、進路を考え直す。
「気持ちええなあ」
父の大事にしてきた工場のテーブルに突っ伏す冬子の台詞と無防備な寝顔は、113回かけて育んできた主人公の家族の愛情、仕事への思いに満ちている。

岩田家の食卓、そして家庭は底抜けに明るく、それが余熱となってじんわりあったかい。

「てるてる家族」と「とと姉ちゃん」何が違うのか考えてみた


BS プレミアムでは「てるてる家族」のあとに「とと姉ちゃん」が放送される。明るい「てるてる」に比べて、現在本放送中の「とと姉ちゃん」の食卓は静かだ。といって暗いわけではないし、笑いもある。でもどこか上品なのはやっぱり家族構成が女性ばかりであるからだろうか。空気をかき混ぜる係がいないのだ。亡くなったとと(西島秀俊)もノイズのある人物ではなく、率先して上品ではあったが、不思議と異性がいるだけでノイズになるものだ。

「とと姉ちゃん」の決定的な弱点は、男(父)のいない物語にしたことだろう。モチーフがそうなのだから致し方ないし、むしろその弱点こそ、うまくすれば最高の強みになるはずだった。
女が男(父)の代わりになろうとした時どうなるのか、なり得るのか、その葛藤や可能性や希望をもっと突き詰めて、そこにユーモアも交えながら描くことはできなかったか。最初の頃、すべるギャグを必死で使っている常子には、その片鱗があったが、一過性のネタとしか使わなかった事が惜しまれる。
芝居の経験も抱負でしっかりした技術のある高畑充希をもってすれば、それこそ、ととなのか姉なのかおばちゃんなのか混ざっちゃったようなとてもユニークな人間が描けたはずだ。
(木俣冬)