『イレブン・ミニッツ』 2015 SKOPIA FILM, ELEMENT PICTURES, HBO, ORANGE POLSKA S.A., TVP S.A., TUMULT

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【週末シネマ】『イレブン・ミニッツ』

年齢も性別もバラバラな老若男女11人の日常を断片化し、ある1日の午後5時からの11分間をモザイク状に描く『イレブン・ミニッツ』は、ポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督によるリアルタイム・サスペンスだ。

最初から、異様なほど不穏な空気に包まれている。舞台はワルシャワだが、整然とした街並は東京でもニューヨークでもパリやロンドンでも、モスクワや北京でも置き換えられそう。画一的で個性のない風景、低空飛行をする旅客機のジェット音、サイレン、バイクのエンジン音など、都会につきものの突発的なノイズもまた、得体の知れない不安を誘う。街中の監視カメラ映像やWebカメラ、携帯やスマートフォンなど、都会の日常に欠かせないメディアも取り込み、あまり馴染みのないポーランドの俳優たちの群像劇が臨場感をかき立てる。

オーディションに向かう女優とその夫、ホテルの一室で女優と一対一のオーディションを行っている胡散臭い映画監督やパソコンに母親へのメッセージを残そうとする少年といった人々が入れ替わり立ち替わり登場し、彼らが誰なのか、何をしようとしているのかを少しずつ明かしていき、特徴のない都会のあちこちで起きている出来事がパラレルに描かれる。

先の展開が気になるスリリングなエピソードもあれば、ヤマもオチもなさそうな日常の風景もある。それぞれがしっかりとつながるのかと言えば、必ずしもそうではない。だが、5時11分にある事が起き、その結果、映画には描かれない5時11分から後の世界で彼らは一括りにして語られることを想像させる。それは現代社会において多発するテロ事件や自然災害で被害に遭う人々を想起させもする。何の接点もなく行き交う人々に突如として共通点が生まれるとしたら、こういう場合もある。人と人のつながりを、思いも寄らない視点から描いてみせた怪作。全貌を知ってから振り返れば、その緻密な設計に驚嘆し、再見したくなるはずだ。(文:冨永由紀/映画ライター)

『イレブン・ミニッツ』は8月20日より公開。

冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。