ジョジョの女性キャラは強し、いや怖し?


「男にとって都合の良い存在」と対極にある、ジョジョシリーズの女性キャラ像。荒木先生の読み切りマンガ『ゴージャス・アイリン』(全2回)のヒロインも「わたし……残酷ですわよ」の決めゼリフで、晴らせぬ恨みを代わって晴らす美しき暗殺者だった。「メイクで人格と肉体を変化させる」という能力も、今回のスタンド「シンデレラ」の原点かもしれない。


初代ヒロインのエリナ・ペンドルトンも、いじめっ子から助けてくれたジョナサンに恋心を抱く少女漫画チックのようでいて、ディオに唇をむりやり奪われると「泥水で口をすすぐ」ことで拒絶する気丈さ。ジョースター家の宿敵ディオ・ブランドー、初めての敗北!

同じくジョースター家の一員でもあるリサリサ先生は、波紋の蓄積量はゆうにジョセフの数倍を誇り、言い寄る吸血鬼もマフラーを巻きつけて瞬殺。もっとも劇中で退治した敵は数えるほどもなく、見せ場を息子に譲るいい“母親”でもありました。

そんな強い女性たちの血を空条承太郎に引き継いだホリィはDIO復活の影響により高熱を発し、父ジョセフたちがエジプトをめざすきっかけに。しかし、ミドラーやマライア、ネーナやエンヤ婆たち女性の敵スタンド使いたちが揃いもそろっておっかねえ……。肉の芽に精神が蝕まれたのか、スタンド能力が闘争心や悪の心を引き出すのか。

現在アニメ放映中の第四部では、仗助の母・東方朋子はナンパ野郎を車に叩きつける衝撃的なデビューを飾ったが、愛しいジョセフ……と勘違いした承太郎にはデレデレ。幼い日の岸辺露伴を救った心優しい杉本鈴美もいるのだが、山岸由花子の強烈さに女性キャラのイメージが上書きされる!

強い女性が大活躍するジョジョシリーズ、それはダントツに第六部。この第四部アニメも好調なようですし、ぜひ第五部のジョルノ・ジョバーナから第六部の空条徐倫に血染めのシャボン、いやバトンを渡してもらいたい!

今回は、こんなお話


康一にまったく振り向いてもらえなくて落ち込む山岸由花子。そのとき、たまたま通りかかったエステ「シンデレラ」は、「幸福の顔」を作るという店だった。エステティシャンの辻彩に「愛と出会う顔」にしてもらった由花子は、町でさっそく康一とバッタリ。手と手が触れ合っていい雰囲気に……。人生で一番の幸せを感じた由花子だったが、その効果は30分で終わり。再び「シンデレラ」に駆け込み、「愛を捉える顔」を頼むのだった。

ジョジョ版シンデレラ&魔法使い


夢見る少女がハードルにもめげずに精一杯がんばり、魔法使いに手助けされて「王子様」とゴールインする。よくある王道の「シンデレラ」ストーリーだが、ヒロインが「キャラが濃すぎる山岸由佳子」というのがジョジョらしいエピソードだ。

前回からおよそ10話ぶりに再登場した山岸由花子。永遠に自分のものにしようとした(=殺しかけた)康一くんに命を救われて「想っていられれば幸せ」の境地に達した。が、愛する人を目にすれば決意だって揺らぐもの。

「こないだ久しぶりにアンジェロ岩に行ったんだけど、観光客の人達がいっばい写真撮ってた」

康一くんも世間話のネタにしてるアンジェロ岩、まさかの観光スポット化。殺人鬼がスタンド能力で岩と一体化された場所で何やってるんだか。ちなみに、このシーンでは原作にあった「ジョセフの出番と由花子へのアドバイス」が削られてる。全39話に収めるための再構成に手間がかけられてますね。

ふらりと通りかかったエステ・シンデレラ。「愛と出逢うメイクいたします」という看板の店から「なんて幸せなの!あんな素敵な彼がこの私にプロポーズしてくれるなんて!」とブス(劇中用語)が飛び出してきたら、由花子でなくても心惹かれるのはしょうがない。

「暗い美人より明るいブス」の方がましってことね。女の青春は」

そんな名言をいうエステティシャン・辻彩と山岸由花子、魔法使いとシンデレラとの出会い。何度もリメイクされたおとぎ話だが、ここまで“奇妙”な物語は例がないはず。もっとも、少し「猿の手」が混じってるかもしれない。

「このお店は普通の店とはちょっと違うのよ。私は幸福の顔を作ってあげられるエステティシャンなの」

そういう辻彩を演じる声優さんは、『xxxHOLiC』の壱原侑子でも知られる大原さやかさん。「人の運命を左右する」ことを商う不思議な店主ーーという連想だろうか、ミステリアスな声も実に馴染んでいる。

芸能人と結婚するメイク…7000円(安い!)など料金メニューを見せられても、シビアな由花子は乗ってこない。が、「この顔だと男の子はあなたが好きになればなるほど逃げていくわね」と核心をついた鑑定にギクリ。そして料金1000円で返金ありと聞いて、それならと応じる。どれだけ強情なんだ由花子!

「愛と出会えるメイク」をした由花子は、康一くんと曲がり角でバッタリ出会う。原作では「タクシーの順番待ちに割り込む」とヒドイことをしてるが、アニメでは「今回はメインヒロイン」だけにカットされてるようだ。

由花子が浮かない顔をしていたから心配していたという康一くん。「いろいろあったけど僕もう気にしてないからさ」って、監禁されたり殺されかけたりアレを引き抜かれかけたり。あの「いろいろ」を忘れてくれる聖人なんて、男だって(露伴先生を含む)惚れる。

強い運勢に乗っかった由花子は、康一くんと同じパフェを注文してデート。手と手が重なり、康一くんの温もりが伝わってくる……ドス黒くない「純愛」がジョジョで描かれるのは、第一部のジョナサン×エリナ以来なので目に焼き付けましょう。

しかし約束の30分が過ぎると、急にお腹が痛くなってダッシュする康一くん。どうして30分だけなのよォォォ〜ッ!!という面白ポーズで切ない乙女心をさらした直後、由花子は信号無視して「勝手に赤になった信号が悪いのよ!!」とブチ切れる落差。この演技の幅をやりきる能登麻美子さんは相変わらずスゴイ。

辻彩に「愛を捉えるやつにして!」とねじ込んだ由花子は、ついに全身エステ(料金体系24時間7万2千円)に踏み切る。運命を完璧に変えられるエステティシャン、その正体は「シンデレラ」のスタンド使い。ジョジョ世界では、破壊も治療も魔法もスタンド使いの仕業ですしね。

愛に関しては無敵の肉体になった山岸由花子。シンデレラの「肉体のイメージを変換する」力は、由花子がまとうオーラよりも空の色を見れば明らかだ。いつもは黄色い第四部の空が、青いなんて!

康一くんのハートはすでに由花子を好きになっているはずだが、露伴先生がデパートに誘う形で邪魔しに来た。由花子の眼輪筋がピグピグして殺意むき出しになり、露伴先生逃げてー!と叫びたくもなる。

最後の壁を崩したのは意外っ!それはカメユーデパートの人混み! ストレスにより透明になる赤ん坊をあやすために、人だかりを集めてしまうジョセフ。野次馬に押されて由花子の胸に飛び込み、ついにキスをする康一くん。由花子は幸せに酔いしれて、辻彩と約束した「30分ごとの口紅」をサボってしまう。後に大変なことになるとも知らずに……。

スタンドも月までブッ飛ぶ康一くんのド根性!



「ぼく。由花子さんと『チュー』しちゃった……ハイ」

今回の仗助&億泰コンビの見せ場は、この報告に対するリアクション芸に尽きる。無表情のまま後ろに倒れ込み、シバシパと宙をかいて窓から落ちかける仗助(アニメ版では完全に落ちてるのをクレイジーダイヤモンドが助けてる)。「スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃……」という名言は、康一くんと由花子の「馴れ初め」を知ってるファンも全力でうなずける。

そして億泰は「ブワッ」と大泣き! 「何か危機があったら知らせてくれ!すっ飛んで行くからよ!」という友達思いと「康一の野郎ごときがチューだとぉー」と嫉妬の間を揺れ動く億泰、実に良いキャラに育ったものだ。

康一くんが相談を持ちかけたのは、由花子からの連絡がプッツリと途絶えたから。あの瞬間「運勢」を固定する口紅を塗るのを忘れたばかりに、由花子は愛しい人に名前を呼ばれても「私、そんな人ではありません」と逃げるハメになっていたのだ。

「このケツ穴女ッ!顔を元通りにしてッ!」

またしても能登麻美子さんになんて汚い言葉を!ありがとうございます! あのエステのせいで顔がドンドン崩れて化粧してもすぐ取れる。そうなったのは約束を破った結果だし、由花子は完全に逆恨みのクレーマーだ。

呼吸するように「殺してやる」と脅す由花子に「私は野心だとかお金のためだけにエステをやってるんじゃあないわ」と凛として言い返す辻彩は誇りあるプロフェッショナルだ。今回は「美意識」というテーマのせいか、辻彩がアルフォンス・ミュシャ風の絵画タッチで描かれているのが目に嬉しい。アニメ版ジョジョの原画集、発売しませんかね。

そこに現れた康一くん。変装した由花子を見て「その性格なんだなあ。ものすごくタフな性格、間違いなく由花子さんだよ」と人格を看破し、「その性格なんか好きになっちゃって」と顔形ににとらわれない凄み。もう聖人の域ですよ。

康一くんの行動に免じて、もう一度だけチャンスを上げるという辻彩。無数の顔パーツの中から、一つだけ「自分の本当の顔を選べ」と。シンデレラの「話のガラスの靴のようにピッタリ合うものを。「初めからそういう態度に出ろボケェ!」と人に物を頼むとは思えないタフな態度をどうやったら好きになれるんでしょうね……。

そして由花子は、考えるのをやめた。康一くんに判断を丸投げするというのだ。相手が責任を取って結婚するしかないうまい手だ! しかし、康一くんはその上を行った。自分のスタンドの目を傷つけて僕の目を見えないようにしてください。由花子さんの性格だと違う顔になったら僕に見られるの嫌だと思うんだ……と。いち高校生が決められる覚悟じゃない!

由花子以上にタフだった康一くんのおかげで、顔は元通り。なんの関係もない男の子にそこまでさせては「魔法使い」の沽券に関わるからと、辻綾の大サービスだ。しかし「無数のパーツの中に実は正解なし」は、原作漫画と公開時期が近かった『千と千尋の神隠し』と同じなんですよね。

メデタシメデタシで本編が終わったあとに、以前の『山岸由花子は恋をする」が収録されたBlu-rayのCM。康一くんがいろいろあった=由花子に殺されかけたエピソードの映像を、今回の話の余韻に流すことが最高のオチです!
(多根清史)