フレイルに陥っていないか、ときどきチェックすることが大切

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総務省が2016年6月29日に発表した2015年の国勢調査の速報値によると、65歳以上の人口は3342万2000人。その割合はイタリアやドイツを上回り、主要国で最も高くなった。

超高齢社会を目前に控えた今、これまで以上に高齢者の健康寿命を延ばすことが重要視されている。そのために必要だといわれているのは「フレイル」の予防だ。

加齢とともに進行する

フレイルとは英語で「虚弱」を意味するFrailtyに対応する概念で、2年前に日本老年医学会が提唱したものだ。加齢にともなう機能低下から「歩けなくなって外出頻度が減った」「疲れやすくなって何をするにも億劫になった」などの、さまざまな問題を予防するため、日本老年医学会を中心に研究が進められている。

6月に行われた第16回日本抗加齢医学会総会でも高齢者のフレイル予防についてのシンポジウムが行われ、多くの医療従事者、専門家が参加した。

東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢氏は、フレイルにはフィジカル(身体的)、メンタル(精神心理的)、ソーシャル(社会的)という3つの要素があり、多面的な3つすべてに配慮した取り組みを行う必要があると発表した。

特に身体的フレイルの予防は重要で、それには加齢による筋肉量の低下から筋力や身体機能が衰え、要介護の入り口となる「サルコペニア」の問題を考え直す必要がある。

着目したのは「食べる力」だ。肉など硬いものが噛みにくくなり、軟らかい物ばかり食べると、あごを動かす筋肉だけでなく舌の筋量も減る。するとさらに噛めなくなり、最終的には食べられなくなる。この負のスパイラルが身体的なサルコペニアに大きく関わるとした。高齢者の孤食も問題だという。

飯島氏が千葉県柏市で行った大規模高齢者健康調査(柏スタディー)を解析した結果、サルコペニア対策には「栄養(食と歯科口腔)・運動・社会参加」の三位一体が重要だとわかった。これらのうち、どれも欠けてはならないことを多くの人に伝えることが必要だと強調した。

フレイルの進行は社会とのつながりを失うことから始まり、次に栄養面に進行するという。滑舌が悪くなったり、以前より噛めなくなったりなど、些細な口のトラブルに気付くことが、フレイルの進行を止めるきっかけになるかもしれない。

外出や家族以外と交流をしているか

日本歯科医学会会長の住友雅人氏は歯科診療が高齢者の社会参加に関わる可能性について講演した。語る、歌うなどコミュニケーションをとるには、口が健康であることが大切だからだ。

平成27年12月時点で、全国に歯科診療所は6万8746施設あるという。地域に根差した歯科医師たちは、市民がお互いにフレイルをチェックし合い、自主的に予防に努める活動を広める役割を担える可能性があるとした。

社会的な側面から見たフレイルのリスクについて発表したのは、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典氏。外出の頻度と同居家族以外と交流した頻度を調査した結果、男性では他者との交流がない外出、女性では外出せずに電話やメールなどで他者と交流していると、リスクが高くなっていた。

シンポジウムでは、心理学から見た研究も紹介された。大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学講座准教授の権藤恭之氏は、高齢になると考え方やモノの捉え方が変化する「老年的超越」を解説。

具体例として、
「公園で遊んでいる親子を見ると世代のつながりを感じる(94歳・女性)」
「河原の石の中にもご先祖様の魂を感じる(100歳・男性)」などを挙げた。
加齢により身体的な衰えは起こるが精神的健康は維持されている場合があり、そこには老年的超越の高まりが関係しているという。老年的超越は、男性よりも女性に起こりやすい。

日本人高齢者におけるフレイルの予防対策は待ったなし。それにはまず、フレイルになっていないかを自分だけでなく、家族や友人など周りも巻き込んでお互いに意識し合うことが大切だ。

(Aging Style)