2016年8月19日
TEXT:保坂 浩紀(LEOMO, Inc.)

いま、至るところでUXに関する勉強会やワークショップが開催され、またそれに関する情報を扱うメディアが増えています。ある種、UXという言葉がバズワード化していると言っても過言ではないでしょう。

しかし、UXという言葉が持つ意味は幅広く、使われる状況や人によって解釈が異なることが往々にしてあります。そのため、「組織内ではUXという言葉は使わないようにしている」という声も私の周りでよく耳にします。UXの専門家がUXという言葉を口にしないという状況が起きていたりするのです。

そんな複雑な事情を持ったUXですが、注目されているのにはもちろん理由があります。本記事では改めて、なぜUXおよびUXデザインがここまで注目されているのか、その理由を探っていきます。

そもそもUXデザインとは何か?


UXとは「User Experience(ユーザエクスペリエンス)」の略であり、「ユーザーが製品やサービスを利用するにあたって得られる体験全体」のことです。そしてUXデザインとは、そのUXをどう理想的なものにするかを計画することを指します。

ちょっと堅いですね。もう少し柔らかく言うと、「使って心地いい!」であったり、使う前に「面白そう!」と期待することや「楽しかった!」という利用後の満足感といったハッピーな体験をどう提供するかを考え、それを実現するアプローチがUXデザインです。

このようにUXデザインは「感情」や「時間」といった抽象的なものを扱うので、冒頭に書いたとおり、人によって解釈が異なる事案が発生しがちですが、とても大切なことであることはわかっていただけるかと思います。

UXデザインがいま注目されている本当の理由

では、本題である「なぜUXデザインが注目されているのか」を改めて紐解いていきましょう。

スマホの普及で「いつでも」「どこでも」「さまざまなこと」が可能に

その理由は、ズバリ「スマホショック」。すなわちスマホの登場が、UXが注目されている背景にあると私は考えています。ご存知の通り、スマートフォン(及びタブレット)は私たちの生活を大きく変えてくれました。

例えば飲み会の日、直前まで会場を把握していないということはありませんか?(私はよくあります) これはスマホでいつでも会場の情報にアクセスできるので、最寄り駅ぐらいを把握しておけば電車の中で調べられるようになったことが要因に挙げられます(事前に目的地の地図を印刷しておいた頃が懐かしいですね)。

また、飲み会の様子をスマホで撮影してその場ですぐにFacebookやInstagramに投稿する、といった行為も日常茶飯事になりました。

このように、スマホの普及によって「いつでも」「どこでも」「さまざまなこと」ができるようになりました。すなわち、「ある状況でできることの選択肢の幅広さ」を仮に「体験の自由度」呼ぶとすると、スマホは体験の自由度を大きく広げたのです。

別の見方をすると、スマホの普及によってテクノロジーがかつてないほど日常生活に入り込んできて、体験の自由度が広がったと言えます。

このような背景から、製品やサービスをつくるにあたり、「いつ」「どこで」「何ができるか」をあらかじめ計画しておく必要性がこれまで以上に高まりました。それを行うのがUXデザインです。

「いつ」「どこで」というユーザーのコンテキストは制御できませんが、「何ができるか」は製品・サービス提供者側が制御することが可能です。従って、ユーザーの「いつ」「どこで」というコンテキストを可能な限り把握・想定した上で、「何を」作るかを練る必要があります。これが、行動観察やユーザーインタビューといった、「現場を知る」ための手法の需要が増している理由です。

ウェアラブルデバイスやIoTの発展でUXデザインの重要性は益々高まる

そして最近では、ウェアラブルデバイスやIoT(Internet of Things: モノのインターネット)といった言葉も登場しています。Apple WatchやFitbitをはじめとするウェアラブルデバイスは、スマホを持ち歩かないシーン(運動中、睡眠中など)でも情報のやりとりを可能にしています。また、IoTでは身の回りのモノがインターネットにつながり、私たちは環境に簡単にアクセスできる(またはされる)ようになります。

いずれにしても、人とテクノロジーの関係はさらに緊密になり、体験の自由度はさらに広がります。UXデザインの重要性は高まるばかりです。

おわりに

以上、スマホの普及を背景に、ユーザーの様々なコンテキストにおける体験の自由度の広がりがUXデザインの注目される理由であることをご説明しました。

今回は説明を省きましたが、「いつ (When) 」「どこで (Where)」「何を (What)」という人とテクノロジーの視点だけでなく、「そもそもなぜやるのか (Why)」「誰をターゲットに (Who)」といったビジネス的な視点もUXデザインには必要です。

デザイナーが1つのコンテキストと1つのインタフェースだけをデサインする時代は終わりました。ユーザーの体験全体を俯瞰した上で、細部のインタラクションにまで目を配る必要があるのです。

UXデザインについてさらに知りたい方は、以下の書籍をどうぞご覧ください。

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[筆者プロフィール]
保坂 浩紀(ほさか ひろき) | UXデザイナー
千葉大学工学部デザイン工学科意匠系卒業。光学機器メーカーのデザイン部を経て、IoTベンチャーにてUXデザインに従事。デバイス、モバイルアプリ、WebサービスのUX設計から仕様策定、ビジュアルデザインまで幅広く携わっている。『UXデザインのやさしい教本』を監修。
●Twitter: @h0sa ●Blog: UX INSPIRATION!

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