怖い絵を描く女は美しい?ドロテア・タニングのゾッとする少女性とエロスの世界

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過去記事、「怖い絵を描く女性画家はなぜ美しい?レオノーラ・キャリントンと美女達のゾッとする絵の世界」では、20世紀前半のシュール・レアリズム全盛期の有名画家・マックス・エルンストの恋人で、同じくシュール・レアリズム画家であり、小説家や戯曲家としても世界的に有名な、才能あふれる美女・レオノーラ・キャリントンについてご紹介しました。

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ケルトの伝統に根ざし、魔術や死、呪いなど、薄暗い地下の空気感を滲ませた禍々しく美しい作品の数々は、キャリントンの美貌も相まってよりいっそう神秘的にうつり、21世紀の今も熱狂的なファンを持っています。

(https://twitter.com/CulturaColectiv/status/765443132976533510)

今回は、そんなレオノーラ・キャリントンとマックス・エルンストが、第二次世界大戦勃発の影響で亡命し、別離を迎えた後に、マックス・エルンストの妻となった、やはりシュール・レアリズム画家の美しい女性、ドロテア・ダニングと、彼女の絵画についてご紹介します。■ この記事の完全版(全画像付き)を見る

(https://twitter.com/Aiatar/status/733718337847492608)

1910年アメリカ合衆国イリノイ州に生まれたドロテア・ダニングは、2年間大学に通った後、20歳で家出同然でシカゴ美術大学へ入学します。しかし数週間で退学してしまい、独学で絵を学びながら、1941年に作家のホーマー・シャノンと結婚しますが、1年後には離婚。

その後、メイシー百貨店の広告を書くイラストレーターとして才能を見出され、シュルレアリスムや前衛芸術の画商であるジュリアン・レヴィ画廊から展示の依頼を受けます。

1942年、パーティで初めてマックス・エルンストと出会い、エルンストはタニングのセルフ・ポートレートを気に入り、「誕生日」というタイトルを付けます。2人は共通の趣味であるチェスを通して親しくなり同棲、1946年に、タニングはエルンストの4番目の妻となり、生涯を共にします。

(https://twitter.com/Ryuugoku/status/543016383265505280)

アーティステックな美女と次々浮名を流したエルンストと生涯を通してパートナーでい続けた理由として、タニングは自叙伝の中で、“エキセントリックではない”と言う性格的特徴を挙げています。

「たいていは美しく、狂っているとは言わないまでもみんなエキセントリックな人ばかり(中略)それが引き起こす悲劇は、私のような愚かな女には決して訪れないものだった。それが分かっているからこそ、彼は私をそばに置いたのだ」(『ドロテア・タニング』(彩樹社)より引用)

エルンストが愛したあまたの女性……著名なシュールリアリズム画家を含む多くの芸術家肌の美女達は、往々にして、魅力的でありながら、激しい性格でもあったようです。

しかし、タニングの作品も凡庸であったか? と問われれば、好みは分かれるものの、充分狂気を感じる幻想的な魅力に溢れています。

(https://twitter.com/PsycheYukiko/status/515863030307893250)

モーツァルト曲名をタイトルにした絵画である『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』 (Eine Kleine Nachtmusik 1946年)は、漫画好きの日本人が見ると、どことなく、荒木飛呂彦の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)に通ずるものを感じます。

(https://twitter.com/NatGalleriesSco/status/763457768875499521)

『不思議な国のアリス』のようなガーリーでロリータ的な世界観と、不条理な怖さ、加えて“少女とエロス”というタブー感を滲ませた作品も多く見られます。

(https://twitter.com/bzdt3/status/757459341851168768)

シュールで不吉な絵でありつつ、どこか童女の見る悪夢のような無邪気さを感じる1枚も。それでいて、まだ幼い娘の腰から脚にかけての捩りが妙にエロチックです。

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シュールレアリズム画家の作品は、死や腐敗や幻覚など、本来なら不気味であるはずのものを幻想的に描いた作品も多く、美しく魅力的でありながらなかなか飾る場所を選ぶものが多いですが、彼女の初期の作品の中には、百貨店の広告画家として活躍したポップなセンスの名残でしょうか?「リビングにも飾れる?」と思うような、「深く考えなければ普通に美しい」ものも見られます。女性がシュール・レアリズム画家の作品に興味を持つきっかけとしてはとっつきやすく、間口が広い作家ではないでしょうか?

(https://twitter.com/cke5/status/752683208127295488)

童話的でまぁるいフォルムが可愛らしい、絵本の挿絵のような作品も。しかし、よく見ると遠近感の狂いを感じ、人を不安にさせる要素満載です。

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1944年年、エルンストとタニングはアリゾナ州セドナに引越し、砂漠の近くに居を構えます。現代ではパワースポットとしても有名なセドナでひたすら作品を生み出し、その後、2人は南仏のプロヴァンスと移り住みます。

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恋多き男で、才能あふれる美女と浮名を流し続けたエルンストが1976年に死去するまで、30年の結婚生活を添い遂げたタニング。後期には抽象的表現に傾倒し、晩年まで精力的に作品を生み出し続けます。

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そして、2012年、ニューヨーク・マンハッタンの自宅で死去。101歳の長寿でした。

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奇しくも、冒頭でもご紹介した、同じくエルンストの恋人として有名なシュール・レアリズム画家、レオノーラ・キャリントンが、2011年にメキシコで、94歳の生涯を閉じています。

(https://twitter.com/incidenciapue/status/735546566656696320)

美貌のシュール・レアリズム画家、と聞いただけで、精神的に脆く薄命なイメージを持ってしまいますが、才能豊かで自分の中の狂気を飼いならす生命力に満ちた美女を愛した、マックス・エルンストという男性を巡る女性達の魅力をあらためて思い知らされるエピソードです。

※ 参考 - ドロテア・タニング(彩樹社)

(星野小春)