関連画像

写真拡大

神戸市教育委員会は8月15日、以前勤務していた夜間中学校に入り、余っていた廃棄予定の給食を食べたとして、男性教諭(54)を停職3ヶ月の懲戒処分にした。教諭は「(廃棄される給食が)もったいないと思っていた」と話しているという。

報道によると、男性教諭は今年2月27日午前8時30分ごろ、合鍵を使って夜間中学校に入り、前日夜に出された給食の残りであるビビンバや白身魚のフライなどを、持ち込んだビールとともに食べていたところを教頭に発見された。男性教諭はこれまで4、5回校舎に入り、給食を食べたと認めているという。

男性教諭は、今年6月に建造物侵入と窃盗の容疑で警察に逮捕され、書類送検されているようだが、廃棄予定の給食を食べたとしても、窃盗罪にあたるのか。捨てることが決まっているものを盗んでも、罪になるのか。徳永博久弁護士に聞いた。

●「廃棄予定の給食」は学校が「占有」しているのか?

「窃盗罪の対象となるのは『他人の占有する他人の財物』です。これに対して、『他人の占有を離れた他人の財物』については、比較的刑罰の軽い遺失物等横領罪の対象となります」

徳永弁護士はこのように述べる。学校に保管されている廃棄予定の給食は、「他人の占有する他人の財物」なのか。

「刑法上の『占有』とは、(1)財物に対する事実上の支配(占有の事実)と、(2)財物を支配する意思(占有の意思)の2つを備えている必要があります。

本件では、前日の給食の残りが学校の施設内に保管されていることから、(1)については問題なく認められます。

他方、(2)については、前日の給食の残りを廃棄する予定であったことから、既に保有する意思を失っているようにもみえます。

しかし、裁判実務上、『占有の意思』はかなり包括的・抽象的な意思で足りると解釈されています。たとえ、財物の存在を意識していない状態であっても、積極的に放棄する意思が現れていない限り『占有の意思』が認められています。

前日の給食の残りについて、廃棄予定であったとしても、『ごみ収集の日までは学校の施設内に保管しておく』という意思がある限り、ごみ出しの搬出行為完了時までは積極的に放棄する意思が外部に発現していませんので、引き続き『占有の意思』が認められると思われます。

たとえば、『いったん捨てようと思って自宅室内に分別保管していたものについて、翌日翻意した時には、既に友人が黙って持ち去っていた』というケースで、友人に窃盗罪が成立しないという結論はおかしいでしょう。

こうした不都合性を回避できることからも、結論は妥当であると考えます」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。訴訟では「無敗の弁護士」との異名で呼ばれることもあり、広く全国から相談・依頼を受けている。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/