内外の外国為替市場で円の対ドルレートが急騰、一時1ドル=99円台と節目の100円を突破した。日銀の大幅金融緩和やマイナス金利などの異次元政策は円安・株高を狙ったものだが、裏目に出た格好。肝心の物価も下落基調を強め、デフレ脱却は遠のくばかりだ。資料写真。

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2016年8月18日、内外の外国為替市場で円の対ドルレートが急騰、一時1ドル=99円台と節目の100円を突破した。東証株価も1万6000円台半ばとさえない展開。日銀の大幅金融緩和やマイナス金利などの異次元政策は円安・株高を狙ったものだが、裏目に出た格好。肝心の物価も上がるどころか下落基調を強め、「2%」の物価上昇目標。デフレ脱却は遠のくばかりだ。一方、行き場を失った余剰資金は不動産市場に向かい、バブル状態。信用金庫幹部は「早晩はじける」と警告している。

◆中央銀行の株買いは“禁じ手”

円高で日本企業の収益が悪化するとの見方から、東京株価が低迷。15年末に1万9000円台だった日経平均株価は年明け以降下落基調にあり、6月下旬には終値で1万5000円を割り込んだ。日銀は上場投資信託(ETF)を通じた実質株買いを積極化し、株価引き上げに狂奔しているが、本来中央銀行の株買いは禁じ手だ。市場を歪め、日銀頼みの東京市場は自律性を失いがちで、もろさを露呈する日々が続いている。

物価も低迷している。消費者物価指数(生鮮食品除く、2015年基準)の上昇率をみると、15年12月は前年同月比で0.1%だったが、16年6月にはマイナス0.4%まで低下してしまった。

円高は輸入物価を押し下げるだけでなく、国内景気に悪影響を及ぼす。日銀が掲げる「2%物価目標」先送りされてきたが、実現のめどは立っていない。「物価は下落する」と予想が大勢を占めつつあり、消費者の財布のひもは固くなるばかりだ。

金利は、日銀の期待通りに低下しているものの、銀行貸し出しの増加に結びついていない。大手行の融資残高は7月末に186兆円となり、3年9カ月ぶりに前年同月を下回った。民間企業の景気の先行きに対する不安はぬぐえず、設備投資は盛り上がりに欠け、企業の資金需要は萎んでいる。

一方で、異次元緩和による過剰資金は、不動産に流入している。節税対策として個人や企業が活用、不動産賃貸投資が急速に拡大。国土交通省によると、昨年の貸家の着工戸数は前年よりも4.6%増えた。今年も6月までの累計で前年同期8.7%増と加速。好調な賃貸住宅が住宅投資を下支えしている。

◆空家率が急上昇

金融機関は一般的な住宅ローンに比べて貸出金利を高め設定しやすいアパート建設向け融資に力を入れているが、住宅需要が高まっておらず、リスクは高い。全国には820万戸の空き家があり、その半分以上は賃貸用住宅で、空室率は急上昇しているのが実態だ。地域の実態に詳しい信用金庫幹部は「不動産分野はバブルの状態で早晩はじける」と警告している。

日銀は9月の金融政策決定会合で、金融緩和政策に関する総括的検証を行う方針だが、果たして軌道修正はあるのか。市場関係者の多くは、「アベノミクスの目玉、異次元緩和は限界に近づいている」と見ている。(八牧浩行)