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 今、マーケティングオートメーションツールのベンダーと広告主企業を巻き込んで、デジタルとアナログを組み合わせた最適なコミュニケーションを探るプロジェクトが進んでいる。その仕掛人が、意外なことに、アナログのイメージが強い日本郵便にいた。同社の鈴木睦夫氏は「精緻にターゲティングできる今だからこそ、デジタルとアナログをブリッジさせる意義が高まっている。デジタルネイティブの若年層にこそ“自分宛の郵便”が新鮮に受け取られ、効果が高いという結果まで出ている」と力を込める。

■“デジタル”だけでマーケティングは成し得ない

押久保:今年の春以降、マーケティングオートメーション(以下、MA)ベンダーが一堂に会したパネルディスカッションや、ベンダー主催のイベントなどで、相次いで鈴木さんのお名前を目にしています。聞けば、デジタル×アナログの最適なマーケティングシナリオを模索するプロジェクトの発案者が鈴木さんだと。今回は、こうした取り組みの背景と、目指すところをお聞きしたいと思います。

 まず、簡単なご経歴と、現職でのミッションをうかがえますか?

日本郵便株式会社 郵便・物流商品サービス企画部
担当部長 鈴木睦夫氏

鈴木:元々はP&Gでマーケターとしてのキャリアをスタートし、IMJやコカ・コーラを経て昨年日本郵便に参画しました。日本郵便とはコカ・コーラ時代に、同じ赤のコーポレートカラーつながりで勉強会を主催していて、その縁で転職したんです。

 現在の主なミッションは、DM市場の活性化です。DMは郵送料だけで3,600〜4,000億円規模、制作費や周辺ビジネスを入れると1兆3,000億円ほどの規模になります。ネット広告費とほぼ同じですね。DMの利用企業数差し出し機会を増やして、これを拡大するのが僕の役割です。

押久保:早速ですが、鈴木さんがMAベンダーと「デジタル×アナログ」施策の効果検証プロジェクトを進める元となった、課題意識を教えてください。

鈴木:この20年ほどでデジタル化が進み、データドリブンマーケティングの概念も浸透してきました。ただ、ずっと違和感を持っていたのが“デジタルマーケティング”という言葉です。デジタルはツールでありメディアでありチャネルであってマーケティングの上位概念ではありません。マーケティングはあくまで「人の心を動かし行動してもらう」こと。僕ら人間がアナログな存在である以上、それはデジタルだけで実現できるものではないと思うのです。

■デジタル×アナログの組み合わせに高い満足度

鈴木:特にこの数年で、オフライン情報のデータ化もどんどん可能になっています。オンライン・オフラインをまたいだフルチャネルのデータを取り込むなら、コミュニケーションもフルチャネルであるべきですし、それこそがマーケティングの本質だと思っていました。

 ですが、DMを取り扱う日本郵便が「アナログの効果にも注目を!」といっても説得力がない。そこでまず、3月に日経BPコンサルティングの協力の下、デジタル×アナログ施策に関する企業の活用動向を調査しました。

押久保:そうなんですね。どういった結果が得られましたか?

鈴木:BtoB、Cを問わず、主に100〜3000人程度の企業を中心に343社から回答を得たところ、デジタル施策のみ、あるいはアナログ施策のみ行っていて「効果を上げている」と答えた企業がそれぞれ31.0%、47.9%だったのに対し、デジタルとアナログを組み合わせている企業では67%と、満足度に大きな開きがありました。単体でみても、デジタルよりアナログの満足度が高いのも明らかでした。

 ただ、実際に組み合わせて実践している企業は、全体の29.1%。一応、興味がある・取り組む予定という企業は40.3%でしたが、まだこれからという印象でした。

 ここを推進するためには、プロジェクトを通して事例を発表し、デジタルのみ展開している企業に「デジタル×アナログ施策が有効だ」というPRをする必要があると考えたのです。

押久保 剛(編集部)[聞]、高島知子[著]、関口達朗[写]