甲子園ノーガード戦法、盛岡大付(岩手)が見せた“わんこそば打線”

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 いよいよクライマックスまであとわずかとなった夏の甲子園。ここまでいくつもの試合を見たなかで気になったのは、岩手代表の盛岡大付だ。

 2回戦までは1試合平均7失点しながらも、打って打って打ちまくり、失点を上回る1試合平均9.5得点を叩きだして相手を打ちのめしてきた。

 見ていて気持ちよくなるこの「ノーガード戦法」は、単打だけでなく大きいのが打てるのも魅力。残念ながら、3回戦で甲子園を去ることとなった盛岡大付だが、あらためて鮮烈な印象を残した3試合を振り返ってみよう。

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■長打に始まり長打で終わった“付属高対決”

【盛岡大付 8対6 九州国際大付(福岡)】

 ロースコアの接戦、センバツ王者の完勝で開幕した甲子園大会の初日。3試合目に登場した盛岡大付は、それまでの2試合とは違う試合を繰り広げた。

 初回から両チームが長打を放つハデな幕開け。その勢いのままにお互いが点を取り合う乱打戦は、9回表に盛岡大付の2番・菅原優輝のホームランによって決着した。

 点を取っても取り返される展開ながら、諦めずに打ち続けた盛岡大付打線。東北人特有の粘り強さを見た気がする。



■効果的なホームランで“松坂二世”を撃破

【盛岡大付 11対8 創志学園(岡山)】

 盛岡大付の2戦目の相手は、プロ注目の右腕・高田萌生を擁する創志学園。この好投手を前に盛岡大付の関口清治監督が掲げたテーマは「15三振してもいいから10安打打つ」。

 しかし試合は関口監督の思惑とは裏腹に、3回まででわずか1安打。逆に3回までに4点を取られてしまったことで、見ている者としてはさすがにジ・エンドかと思った。

 しかしここでも長打がカギを握っていた。まず4回裏に3番・植田拓が逆転劇の火蓋を切るホームランを放つ。追い上げられた6回裏には、4番・塩谷洋樹が試合を決める一発をスタンドへ叩き込む。

 4回から6回にかけて打った安打数は13本。まさに関口監督のプラン通りとなったわけだが、要所で飛び出した長打が、打線に最高のアクセントをつけたことは疑いようがない。

 ちなみにこの試合で挙げた2ケタ得点は岩手県勢として初。県勢通算138試合目でのことだった。

■最終回に怒涛の反撃を見せるも……

【盛岡大付 9対11 鳴門(徳島)】

 初回に先手を取りながら逆転を許すという、初戦の九州国際大付戦と似た展開。ただ何度も劣勢をはねのけてきた盛岡大付ナインだけに、筆者としては「何かやってくれるだろう」という期待感があった。

 予想通りに同点に追いついた時は「行ける」と思ったが、もうひと押しが足りず終盤に決定的な失点。この時はさすがに「終わった」という気持ちでいっぱいに。

 結果的には「確かに終わっていた」わけだが、9回裏はテレビに釘付けになった。前日に行われた東邦(愛知)の大逆転劇を再現するかのような波状攻撃で4点を奪い、2点差まで追い上げたからだ。

 もう一イニング前にこの攻撃ができていたら……、という思いもあるが、「9回裏」という極限の舞台だからこそ、あの怒涛の反撃が生まれたと思う。

 こうして盛岡大付の夏は幕を閉じた。

■自分の土俵に引きずり込む


 甲子園で自分たちの思い描く野球をするのは難しい。上に行けば行くほど対戦チームのレベルが上がり、相手も自分のよさを消そうとしてくるからだ。

 ただ盛岡大付はそのなかにあって、どんな相手でもマイペースにヒットを重ね、反対に打たれるからこそ印象深かったのだろう。両チームが2桁ヒットを打つ乱打戦、それが3試合続くことなどそうそうないはずだ。

「わんこそば打線」がこの夏に生み出した総得点は28、対する総失点は25。数字も「やられたらやり返す」と語っている。

文=森田真悟(もりた・しんご)

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