リオ五輪女子バレーボールは16日、決勝トーナメントがスタート。日本(A組4位)は世界ランク1位のアメリカ(B組1位)と対戦。キャプテン木村沙織を中心に奮闘し、"女王"を慌てさせるシーンもあったが、0−3のストレートで敗れた。これで2大会連続となるメダルへの道は途絶えた。

 元全日本で、現在は解説者の杉山祥子さんに、最終戦となってしまったアメリカ戦を振り返ってもらった。

【profile】
杉山祥子(すぎやま・さちこ)
全日本のミドルブロッカーとして、アテネ五輪・北京五輪に出場。グランドチャンピオンズカップでは銅メダルを獲得。Vリーグで7度のベスト6をはじめ、ブロック賞3度、スパイク賞、敢闘賞のキャリアを誇る。スピードのある多彩な攻撃と固いブロック力に定評があった。2013年引退後は各メディアで解説をしている。

―― 世界ランク1位のアメリカとの戦い、振り返っていかがですか。

「試合全体を振り返ると、今大会で一番いい内容の戦いだったと思います。ただ、1セット目はアメリカの強さを見せつけられた感じとなりました。サーブがアメリカの選手の正面に入ってしまったので、Aキャッチ(セッターが動かずトスが上げられる位置へのパス)から、しっかりしたコンビ(攻撃)を使われ、これは取れないという形で試合が展開していきました」

―― アメリカのコンビを使った攻撃はすごいですよね。

「そうですね、特にミドルの選手のブロード(移動攻撃)。幅もあり、高さもパワーもある、そして、(守りから攻撃への)切り返しのスピードがすごく速い。ラリー中でもチャンスボールでも関係なく、トスが上がってから攻撃までの時間が、こちらのブロックが準備できないくらい速い。万全な状態で打たれると、対応は難しかったですね。」


―― しかし2セット目では、あと一歩のところまで追いすがりました。

「まず、長岡(望悠)と石井(優希)の調子がよかった。このセットの効果率(※)が高かった。たとえば、石井のバックアタックの際に、長岡もバックアタックを別の位置で呼んでいたんですね。そのように同時に攻撃を仕掛けて、相手のブロックを振っていました。また、ミドルのAクイックやBクイックが使えたので、攻撃に幅が出ていました。そして、何より拾ってつなぐ日本らしいバレーができていましたね」
※決定本数―(被ブロックス数+ミス本数)/打数

―― 3セット目は13−20の7点差から、7連続ポイントで追いつく場面がありました。

「木村がなかなか調子が出ないなと心配していましたが、7点差の場面で木村にスイッチが入りました。難しいトスを決めたり、ブロック得点もあり、これに奮起したのか荒木もブロードを決めて、7連続得点。島村のサーブもすごくよかったし、木村がプレーでチームを引っ張って勢いにのせました」

―― もう少し木村選手のスイッチが早く入っていれば......。

「はい。木村のスイッチがもうワンタイミング早く入っていれば、決して獲れなかったわけではないと思います。終盤の木村のプレーは、いつも苦しいときを救ってくれて、チームを引っ張ってくれたときの姿でした。

『たられば』になりますけど、もう少し早く、そうなってくれていたら違ったでしょうね」

―― 宮下(遥)選手のトス回しはいかがでしたか?

「アルゼンチン戦より高めに上げて、サイドへのトスはアンテナまで伸ばして、アタッカーが打ちやすく、広角に打てるように意識しているのが見えました。また、今までの試合で課題となっていたミドルへのトスも積極的に上げていました。この重要な試合の中で、新たなチャレンジをしたことはきっと次へとつながると思います」

―― リオ五輪全体の総括をしていただけますか。

「苦しい大会でした。いろいろな課題が見つかる中で、選手たちももがきながら、何とかしようとみんなで一戦一戦やっているのはすごく感じられました。やはり照準を絞って挑んだ初戦の韓国戦で敗戦したのが大きく影響しましたね。精神的にも今回一番大きく影響したかもしれませんね」

―― 東京に向けての課題、得られたものは何でしょう。

「試合全体を通して必ず調子のよい選手、コンスタントに活躍してくれる選手がどの試合もいたことは収穫ですね。また、迫田など控えで出てきた選手が期待以上の活躍をしてチームを鼓舞したことも大きかったです。

 そして、日本はやはりミスをしていては勝てないなと。もともとの体格差はわかっていることなので、その差のある相手に勝つにはミスを少なくして、粘り強く戦わないと。そのことを今回も思い知らされました。

(眞鍋政義監督が掲げた『4つの世界一』)『サーブ、サーブレシーブ、ディグ、ミスの少なさ』。それがどれだけ大切なのか、どれだけできていたのか、できていなかったのか。振り返ってみると、やはりそこになる。

 強豪国はただ大きいだけでなく、拾うので、日本が大味なバレーをしていてはいけない。もう一段階上の緻密さが求められる。より一層のチームワークで、粘り強く束になって戦うことが課題だと思います」

―― 東京につながる年齢の選手が経験を積めたのは収穫ですか。

「肌で感じたオリンピックの難しさは得がたいものがあるでしょう。メダルに向かっていく中で、世界の本気の戦いがどういうものか、見る、聞くだけではなく、コートに立って感じるところが一番大きい。1点を取る難しさ、1セットを取る難しさ。それを忘れないでほしいです。

 木村の後継者となっていく選手たちが、今回の経験を糧に東京五輪に向けていち早くリスタートを切ってほしいですね」

 日本はベスト8で終わり、2大会連続のメダル獲得はならなかった。主将の木村は「目標は達成できなかったけれど、これまで支えてくれたたくさんの人たちに感謝して、ありがとうといいたい」と涙ながらに語った。

 おそらくこの大会を最後に全日本から退くであろう木村。日本女子バレー史上初のオリンピック4大会出場を果たした彼女の志を継ぎ、東京でコートに立つのはどんな選手たちであろうか。そして、どんなバレーが展開されるのであろうか。

「今回(五輪の場に)立ててよかった。次につなげたい」

 チーム最年少の宮下の言葉には、東京への強い意識と覚悟が感じられた。苦しい戦いの連続であったが、これを活かして4年後はもっと進化した全日本女子バレーチームを見たい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari