この時季になると、テレビで怪談番組が放送されたり、お化け屋敷が大盛況だったり、夏=怪談というイメージが定着しています。
すでに江戸時代・中後期には、「夏の怪談」が庶民の間で流行していたとか。
怖いけれど見てみたい、聞いてみたい、という「怖いもの見たさ」の心理は今も昔も変わらぬものなのでしょう。
庶民が喜ぶ楽しみを、あの手この手で生み出した江戸文化。
そこから生まれた怪談は、今でも歌舞伎や落語の演目として親しまれています。
怪談は、一体、なぜ夏を代表する娯楽になったのでしょうか。

夏の夜は灯りを消して、怪談話などいかが……


人気俳優不在の舞台を「怪談」で盛り上げた!?

ときは江戸時代。
当時の庶民の娯楽として絶大な人気を誇ったのは、歌舞伎でした。歌舞伎を上演する芝居小屋は、いつもにぎわっていました。
しかし、当時の芝居小屋は、もちろん空調設備などもなく、暑い時期は客入りが悪かったと言います。
なかなかお客さんが集まらないので、劇場関係者や主役級の役者は地方巡業に出たり、休暇をとってしまう。
そこで、思いついたのが怪談物でした。
演じるのは、若手の役者たち。
本水(上演中の舞台に水が張ってある)や早変わり、幽霊の宙づりなど、大がかりな仕掛けがあれば、人気俳優はいなくても盛り上がります。
ひと味違う大仕掛けの舞台はウケて、怪談狂言は人気演目になっていきました。
「牡丹燈籠」「四谷怪談」「番長皿屋敷」などおなじみの江戸の三大怪談も大流行。
葛飾北斎も怪談を「浮世絵」として描くなど、一大怪談ブームも起こっていったのです。
「夏は怪談」が、定番となったのは、興業目的だけでなく、やはり夏にお盆があることも関係しているでしょう。
先祖の霊が戻ってくるこの季節、自然と「あの世」も近くに感じたのではないでしょうか。
また、夏は日が長いので、怪談話に花を咲かせるのも、よい娯楽だったのかもしれません。

「怪談話」は夏の定番

「怪談話」は夏の定番


新月の夜に行われた「百物語」

今でこそ、ホラーというジャンルがありますが、昔から日本人は怪談話を楽しんでいました。
それは「百物語」という怪談会です。
新月の夜に数人で集まり、一人ずつ怪談話をしていきます。
火の灯った蝋燭(ろうそく)を100本置き、話を終えると蝋燭の火を一本ずつ消していきます。
そして100本目の蝋燭が消えたとき、「怪」が現れるとされていました。
今で言う肝だめしのようなものだったとされます。
人はなぜ「恐怖」を楽しみたいと思ってしまうのでしょう。
怖さという刺激は快感であり、恐怖を克服したときの達成感には、抗しがたい魅力があるのでしょうか。
程度の差はあれ、怖い話は大人も子どもも、大好きです。
ぜひ、夏の涼のひとつに、「怪談話」を楽しんでみてはいかがですか。

100本目の蝋燭が消えたとき、「怪」が現れる!

100本目の蝋燭が消えたとき、「怪」が現れる!