リオデジャネイロ五輪から正式種目となった7人制ラグビー(セブンズ)の男子日本代表は、世界中のラグビーファンに衝撃を与えた。「オールブラックス」ことニュージーランドを撃破し、その勢いのままトーナメントを勝ち進み、「国際大会ベスト4」という快挙を達成したからだ。

 しかし、「サクラセブンズ」こと女子日本代表は10位と、世界に強さをアピールすることは叶わなかった。男子と女子との差はどこにあったのか......。リオ五輪に総務兼コーチで帯同していた日本ラグビー協会の岩渕健輔ゼネラル・マネジャー(GM)は大会を振り返り、まず女子に関して、「スタッフのひとりとして力を出させることができなかった。選手たちには申し訳なく思っています」と陳謝した。

 2012年に女子初のフルタイム指導者として浅見敬子ヘッドコーチ(HC)が就任し、中村知春キャプテンを先頭に「金メダル獲得」を掲げ、年間200日から300日の強化を続けてきた。だが、初の大舞台を前にして、最後までメンタル面の課題は克服できなかった。

「女子はスタッフも含めて、プレッシャーに勝てなかった。この4〜5年間、初戦から力を発揮することがなかなかできず、オリンピックでは改善はおろか、もっと硬くなってしまった」(岩渕GM)

 個々のパフィーマンスも、選手によって差があった印象は強い。中村キャプテン、桑井亜乃、小出深冬、山中美緒、三樹加奈あたりは実力を発揮できたものの、「ここに至る強化の過程で、ベストな選手をベストなコンディションに整えることができなかった」と、岩渕GMは反省点のひとつとして挙げた。

 また、「いい意味でも、悪い意味でも、オプションがなかった」(岩渕GM)と言うように、男子のように突破力のある外国出身選手がおらず、「走り勝つ」以外に強みもなく、それが通じない場合の選択肢がなかったことも、オリンピックで結果が出なかった要因だと分析する。

 では逆に、昨年度のワールドシリーズ(F1のように世界を回るサーキット大会)で15位に終わった男子が、なぜリオ五輪でメダル争いを演じることができたのか――。

 まず、女子の試合のあとに男子の試合が行なわれる(女子=8月6日〜8月8日、男子=8月9日〜8月11日)というスケジュールがよかったのだという。男子スタッフは選手よりも前に会場に入れたことで、練習場などを事前に見て回れたからだ。また、スタッフ同士でADカードが交換できたため、女子スタッフのあとに男子スタッフがスタジアムに入って分析することもできた。「女子と男子の順番が逆だったら、また違う結果になっていかもしれない」(岩渕GM)。

 そして、オールブラックスを倒すことができた要因はなんだったのか。岩渕GMに聞くと、「とにかく最初の3分ですべてが決まると、瀬川(智広HC)ともよく話していた。とにかくボールをキープし、アタックし続けようとした」ことが勝因だと振り返る。日本のアタックは、誰でもボールを持って前に出ることができ、ふたり目は早くサポートを行ない、3人目が素早くさばいてボールを動かし続けた。前半3分12秒、後藤輝也が左隅に飛び込んでトライしたとき、選手たちは「いける!」と感じたという。

 一番の課題だったディフェンス面では、タックラーが素早く起きて7人全員が立っている状況をなるべく多く作り、相手をふたりで挟むなどの改善を図った。また、途中交代の選手がリズムを変えたり、ケニア戦ではモールをうまく使って快勝できたことも、さらに自信を深めることにつながった。岩渕GMは、「男子は、世界のなかで通じる武器がひとつではなかった。相手によって、いろんなオプションを講じることができた。そこに、男女の差がすごくあった」と指摘する。

 男子はこの2年間、メンバーをほぼ固定して合宿を敢行し、特に今年に入ってからは、「世界とどう戦うか」をテーマに、トップリーグの外国人選手、ニュージーランドのオークランド代表、そしてオーストラリア代表と練習試合を積み重ねてきた。オーストラリア代表との練習試合で勝利したことは大きな自信となり、「毎回、同じメンバーで合宿して、チームとして目指すべき方向を共有できたし、層も厚くなりました。セブンズでも世界と戦えます」と、桑水流(くわずる)裕策キャプテンは胸を張った。

「極端な言い方をすれば、男子は15人制のワールドカップでやっと南アフリカに勝利した。女子は世界で戦った歴史がまだそんなになかった。男女でそういう違いもあったのでは......」

 岩渕GMはリオ五輪での男女セブンズの差を振り返りながら、「オリンピックでひと区切り」と語り、その視線はすでに4年後を見据えている。

「これから先は他のスポーツと同じように、世界とどうやって戦うかを比べられます。今回のオリンピックでは、日本のみなさんにラグビーの存在を知っていただいた。でも、日本ラグビー界としては、メダルを獲ったか獲らなかったかで評価される、新しい世界に来ているということを認識しないといけない。今後4年間は『メダルが獲れる』ということを、ラグビー協会全体としてやっていかないといけない」

 4年後の東京五輪で「ベスト4」からもうひとつ、ふたつ上に行くためには、どうすべきなのか。まずはもちろん、選手個々の強化、そして新しい個の発掘は継続していかないとならないだろう。男子ではフィジー出身の副島亀里(そえじま・かめり) ララボウ ラティアナラがセットプレーやアタックなどで、攻撃の大きなアクセントになっていた。

 男子には、セブンズに専念する「コアスコッド(主要な候補)」というものが存在する。それを、さらに制度として進める試みも、今後は重要となるだろう。東京五輪に向けてよりセブンズに特化した選手を育成するために、各選手がトップリーグチームから日本ラグビー協会に出向するという形を取り、協会が代わりに給料を支払う専従契約制度=プロ化の準備も進められている。

「システム自体は理事会で作りました。(最終的には)20人くらいとは思っていますが、4位に入ったからといってすぐにうまくいくとは思えないので、いろんな方の協力を得ながら前に進めていかないといけない。周囲の環境も含めて、4年後に向けてもっと整える必要があります」(岩渕GM)

 女子は残念ながらワールドシリーズのコアチーム(全大会に優先的に参加できるチーム)から降格したものの、男子は来季コアチームに昇格し、ふたたび世界の舞台に挑む。2018年6月にはアメリカでセブンズのワールドカップが開かれ、その2年後には東京五輪が待っている。一方、15人制はトップリーグもあれば、サンウルブズもあり、そして2019年にはラグビーワールドカップも開催される。

 今回、バックアップを含めた男子の14名に話を聞くと、「2019年も、2020年も、両方出場したい」「まずはトップリーグに専念したい」「このままセブンズでがんばりたい」と、今後の希望は選手によってさまざまだ。ただ、「東京五輪でメダル獲得」という目標を実現するためには15人制と切り離し、セブンズ本体をもっと強化していくべきだろう。

 今回のリオ五輪を見て、「セブンズをやりたい!」「東京でメダルを目指したい!」と覚悟を決めた選手はきっといるに違いない。また、トップリーグの各チームの考え方にも、少なからず影響を及ぼしているはずだ。男子が五輪ベスト4に入った今だからこそ、東京五輪でもメダル争いができるようなバックアップ体制を確立し、そしてゼブンズの制度を整える時期が来ている。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji