「中国経済崩壊論」が日本メディアを賑わしてきた。一方で、IMFなど各種国際機関の中期予測によると、世界全体のGDPに占める中国の割合は2024年には20%に拡大、「米国を抜き世界一の経済大国になる」という。その真贋は?資料写真。

写真拡大

この20年あまり「中国経済崩壊論」が日本メディアを賑わしてきた。ところが崩壊するどころか、国内総生産(GDP)はこの10年間で4倍に拡大、日本の3倍近い水準となっている。OECD(国際協力開発基金)、IMF(国際通貨基金)など各種国際機関の中期予測によると、世界全体のGDP(国内総生産)に占める中国の割合は2015年の14%から24年には20%に拡大、「米国を抜き世界一の経済大国になる」という。

中国の16年4〜6月期の実質GDPは前年同期比6.7%増。成長率は1〜3月期から横ばいで、成長率が下げ止まったのは15年4〜6月期以来4四半期ぶり。一方、日本の同期のGDPは、前期比0.048%増、年率換算で0.2%増とほぼゼロ成長。設備投資や輸出が減少。民需は力強さを欠き、景気低迷が続いている。

世界銀行が6月に公表した、最新の世界経済見通しによると、16年の世界全体のGDP成長率は2.4%に下方修正された。1月時点では2.9%と見込んでいたが、予測を0.5ポイント引き下げた。日米がそれぞれ0.8ポイント下方修正され、先進国の景気減速が深刻。さらに資源輸出国の成長は前回予測から1.2ポイントも下方修正された。

日本は個人消費の低迷と輸出の伸び悩みで0.5%成長にとどまると予測した。「労働力人口の減少が成長の重荷になっている」と分析し、日銀のマイナス金利政策も「効果が不安視されている」と疑問視。17年も0.5%と低い伸びにとどまる。

米国も輸出やエネルギー関連投資の不振で16年の成長率は1.9%と見る。雇用の改善によって17年は2.2%に回復するものの、米国の減速は世界経済の下振れ要因だ。これに対し、中国の16〜17年の成長率は6.7%と底堅い。

中国のマクロ経済は世界でも有数のパフォーマンスを保っている。GDPは減速したと言っても、先進主要国が0〜1%台の低い水準に喘ぐ中で、なお際立っている。物価上昇率は1〜2%台と安定。財政赤字は対GDP比で約3%、累積債務の対GDP比は60%以下。2倍以上に達している日本に比べ健全だ。

ただ足元の指標はまちまち。固定資産投資は1〜7月に前年同期比8.1%増で伸び率は約17年ぶりの低水準。全体の6割を占める民間投資の伸びが1〜6月より0.7ポイント縮小したからだ。民間投資は統計の公表を始めて以降、最低の伸び率となった。

輸出は4カ月連続の前年割れで、工業生産も前年同月比6%増と伸び率が縮小。一方で個人消費(社会消費品小売総額)は同10.2%増と堅調で、世界最大の販売が続く自動車が、けん引している。

こうした中、中国では、これまでの高度成長の「負の遺産」が積み上がり、乗り越えるべき高い壁が立ちはだかっている。鉄鋼などの過剰設備や微小粒子状物質「PM2.5」に象徴される環境悪化、深刻な経済格差と腐敗汚職などが噴出している。

GDP成長率は内陸部の重慶が11%に達しているのに対し、遼寧省は2.6%と地域によって差がある。長江デルタ地帯、重慶、武漢など主要16都市だけで中国のGDP全体の50%以上を占め、平均成長率は8.5%にもなる。低成長地域は開発の余地が大きい。 中国では過大な需給ギャップの縮小が急務だが、全体のパイが拡大しているので、GDP伸び率が減速しても『伸びしろ』は従来より大きい。

2〜3年前に「中国崩壊の前兆」と喧伝された「シャドーバンキング(影の銀行)破たん論」も杞憂に終わった。中国政府は「不健全な経済構造の筋肉質化」を目指し安定成長への転換を図っている。「速すぎた成長速度の適正化」「不健全な経済構造の筋肉質化」を目指し安定成長への転換を図る「新常態(ニューノーマル)」方針を掲げ、金融自由化や構造改革を推進。対外政策面で、新シルクロード構想『一帯一路』、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、シルクロード基金、BRICS銀行などに力を入れ、貿易・投資先の確保を狙っている。

GDPのうち消費の占める割合が50%弱に急拡大、重厚長大型工業からサービス産業へのシフトが進行、内陸部を中心とした都市化の進展も、成長を下支えしている。

15年7月に世界銀行が発表した統計によると、物価の格差を調整した購買力平価ベースGDPで、2014年に中国が米国を初めて上回った。中国は同年に前年比8.9%増の18兆ドルと、同3.6%増の17.4兆ドルだった米国を抜きトップに躍り出た。購買力平価ベースGDPは経済の実力を測る指標として最も有用とされる。早晩、実質GDPでも米国を凌駕するのは確実かもしれない。(八牧浩行)