冬季に「月鍋」として出す熊肉を夏まで保存。夏が旬のスッポンの出汁と季節の野菜(今回は白ずいきと花山椒)を合わせた鍋。希少な素材のため、必ず確保できるとは限らないので、事前に確認を。2万円(税・サ別)の懐石コースのうちの一品比良山荘滋賀県大津市葛川坊村町95営業時間/11:30〜14:00(最終入店)、17:00〜19:00(最終入店)※要予約定休日 火曜(祝日の場合は営業)(撮影/楠本涼)

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 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長の服部幸應さんが選んだのは、「比良山荘の月とスッポン鍋」だ。

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 月とスッポン鍋。変わった名前でしょう? 琵琶湖の天然スッポンの出汁でツキノワグマの肉を煮るという、贅沢極まりない料理です。山里にある料理宿なんですが、木の実を食べて育った熊の皮下脂肪の上品なこと! ナッツのようなほのかな香りと甘みはイベリコ豚のよう。猟師さんが最適な時期に獲(と)ってすぐに解体、清らかな水で処理しないと、これだけ繊細な香りと味は出ないそうです。けもの臭さはまったくないんですよ。

 最初の出会いは15年ほど前でしょうか。それまでにも熊料理は食べたことはありましたが、さほど印象に残っていなかった。それが、この鍋を食べた瞬間の感動! 思わずご主人に「死ぬ前に何が食べたい?って聞かれたら、この鍋だって答えますよ」と言ったほどです。そしたらご主人、「ありがとうございます。僕も死ぬ前にはこれが食べたいです」って(笑)。

 こういう、素材と真摯に向き合って、真心こめて作られた料理こそ、日本の料理の原点だと思いますね。

滋賀県大津市葛川坊村町94/営業時間:11:30〜14:00(最終入店)、17:00〜19:00(最終入店)*要予約/定休日:火(祝日の場合は営業)

週刊朝日  2016年8月19日号