“結婚できない”三次的障害も…(※イメージ)

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 発症すると一生付き合うとも言われた統合失調症。幻覚や幻聴のほか、抑うつ症状のために社会生活を送るのが困難になる。薬物療法に、心理社会療法を組み合わせて社会復帰を目指す、新しい治療法が増えてきた。

 統合失調症は、約120人に1人がかかると言われており、それほど珍しい病気ではない。10代後半〜30代で発症する人が多いが、治療を受けない人もかなりいると見られている。

 主に仕事のストレス、対人関係の軋轢(あつれき)、家族の死といったストレスがきっかけで発症する。直後の急性期には幻覚や幻聴、被害妄想のほか、考えがまとまらないといった陽性症状が出る。

 本人は病気であるという認識があまりないのも統合失調症の特徴だ。この時期に自傷行為や家族への暴力などがあれば、入院して治療にあたる。その後、陽性症状がなくなり、抑うつ症状が出てくることが多い。引きこもりがちになり、社会生活にも支障をきたす。

 山井俊さん(仮名・23歳)は高校生で初めて発症した。受験勉強で寝不足や過度なストレスがかかり、情緒不安定になっていた。近所の人たちが自分について噂をしていたり、自宅に盗聴器が仕掛けられていたりすると考えるようになった。

 不安が強くなり外出しなくなったため、家族に連れられ精神科のクリニックを訪れた。統合失調症と診断され、薬物療法と休養を1カ月間続けたところ、症状は改善した。その後大学受験に成功し、大学に通うようになった。

「統合失調症の基本の治療は、薬物療法と心理社会療法の組み合わせです」

 こう話すのは、統合失調症の早期治療に詳しい東邦大学医学部精神神経医学講座教授の水野雅文医師だ。薬物療法で幻覚や妄想などの症状を除いたうえで、心理社会療法で日常生活に必要なリハビリテーションをおこなう。

 薬物療法は、抗精神病薬を服用する。統合失調症の症状は、神経細胞同士の情報伝達を担う「ドーパミン」の働きが悪くなるのが原因と考えられており、抗精神病薬はこのドーパミンの働き方を調節することで、幻覚や妄想などの症状を取り除く。中でも1990年代から使われるようになった「非定型抗精神病薬」は、比較的副作用が少なく、使いやすい。また、うつ症状にも効果があると言われている。

 統合失調症では症状による二次的障害として、生活を送るのに必要な能力が損なわれる。またそのために、仕事ができなくなる、結婚ができない、といった社会的不利益を被る三次的障害もある。

 そこで、薬物療法と組み合わせて心理社会療法を受け、通常の生活や社会復帰を目指す。作業療法や生活技能訓練などがある。医療機関によって受けられる療法は異なるが、精神科デイケアなどに含まれることが多い。

 ところが、これらの治療を受けても、実際には通常の生活や社会復帰ができない患者は多い。その原因として最近注目されているのが、記憶や注意、遂行機能といった認知機能の障害だ。

「統合失調症の症状の中でも、社会生活に最も大きな影響を及ぼしているのが認知機能障害です」と国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所所長の中込和幸医師は言う。認知機能が低下するために、薬物療法などで症状が落ち着いても、生活に支障が出るのだ。従来の治療では、認知機能の向上は難しい。

 そこで中込医師らは、認知機能を改善して、社会復帰につなげるための認知機能リハビリテーションのプログラムを導入し、医師や作業療法士ら向けの研修プログラムを実施している。

週刊朝日  2016年8月19日号より抜粋