■連載/あるあるビジネス処方箋

なぜ転職者の年齢が上がっているのか?

 転職サービス「DODA(デューダ)」が行なった「転職成功者の年齢調査(2016年上半期)」によると、転職成功者の平均年齢は「32.3歳」と、男女ともに過去最高値を更新したという。好景気を背景に転職者数は増えているが、転職者の年齢も上がっている。今回は、その理由を私の取材で得た情報をもとに考えたい。

■仕事のレベルが専門化し高度になっている

 この十数年は、市場の変化が速くなり、顧客やクライアントのニーズが一段と専門化している。仕事のレベルはより専門的で、高度になる。中途採用試験で獲得したい人材のレベルも年々、上がっている。内定を得る人は前職などでの経験が豊富で、一定の実績のある人が増えてくる。結果として、年齢が高くなる。かつては、「35歳」が中途採用試験のデッドラインともいわれていたが、最近は40代も増えている。40代の場合は、新規事業の部署のリーダーやそれを支える役割をする人が採用される傾向がある。

■“プレイング・マネージャー”ができない人がいる

 多くの企業では、管理職はプレイング・マネージャーをしている。営業部でいえば、営業部員として前線に出向き、契約成立に向けて奮闘する。一方で、管理職として部の予算管理や業績管理、さらに部下の育成や指導、時には新卒や中途の採用試験にも関わる。社内や社外の様々な会議や会合にも参加する。役員へ報告する資料などもつくる。つまりは、オーバーワークな管理職が増えている。

 結果として、プレイヤーとして仕事はするが、マネージャーとして部下の育成や指導が十分にできていない管理職がいる。このことを、役員や人事部は疑問視している。そこで、中途採用試験ではより一層に高いレベルのものが求められるようになっている。オーバーワークでも、きちんとプレイング・マネージャーをできる人が採用される傾向がある。自ずと、年齢が上がっていくのだ。

■“どんぶり勘定”している会社が多い

 組織編成がずさんであることも、転職者の年齢が上がっている大きな要因といえそうだ。例えば、部署の仕事を一定の期間で終えるのに必要な人材が質・数ともに揃っているかを、役員会や人事部、管理職のレベルで厳格に管理することができていない。多くの会社が、その意味では“どんぶり勘定”の管理を行なっている。それぞれの社員が担当する仕事の量や質、レベルなどが、その時々の状況によって変わる。

 たしかに仕事のレベルは専門化、高度化してはいるものの、20代前半に新卒として入社した人をきちんと育成しているのなら、中途採用試験を繰り返す必要はないはずだ。だが、どんぶり勘定をしているから、今のような好景気の時に、30代〜40代の優秀な人材が足りなくなる。各部署ごとに、必要な人材を質・数ともに採用・育成していないツケが回ってきているともいえる。

■40〜50代の余剰人員が増えている

 転職者の年齢が上がっていることは、40〜50代の余剰人員が増えていることを意味する。管理職になることができなかったり、たとえ昇格したとしても、部下が数人しかいない場合もある。当然、リストラや他の会社へ出向・転籍するケースも増えている。40〜50代で、「使えない社員」がいるから、役員や人事部、管理職などは、その代わりに30代の優秀な人を採用しようとする。そうなると、結果的に、年齢層が上がってくるのだ。

■20代の若手社員の育成ができていない

 転職者の年齢が上がるのは、20代の社員の採用・定着・育成が十分にはできていないことも意味している。会社として、新卒採用の時に潜在的な能力の高い人を採用し、定着させるような育成をしているならば、30代で優秀な社員が多数いるはずである。わざわざ、高いお金を払って、時間もかけて、中途採用試験を行なう必要もない。ところが、20代の育成などができていないから、30代の社員で優秀な人が少なくなる。そこで、中途採用試験を行なわざるを得ないのだ。

 転職者の年齢が上がることは、会社の人材育成力が弱くなっていることでもある。読者が転職をしようとするならば、人材育成に真剣に取り組んでいる会社を選ぶべきだ。もし、管理職や役員クラスの人でこの記事を読んでいる方は、ぜひ、部下や社員の育成にこれまで以上に注力していただきたい。

 人材は、会社の最強の武器であり、大切な資産なのだから。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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