中国が8月に入り尖閣諸島周辺への公船派遣を常態化。南シナ海に続いて、海洋進出を志向する習近平政権の意思の表れと見られる。中国は南シナ海の多くの海域で実効支配を強め、尖閣諸島を含む東シナ海にも権益を及ぼそうとしている。資料写真。

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中国が8月に入り尖閣諸島周辺への公船派遣を常態化。南シナ海に続いて、海洋進出を志向する習近平政権の意思の表れと見られる。中国は南シナ海の多くの海域で実効支配を強め、尖閣諸島を含む東シナ海にも権益を及ぼそうとしている。

8月上旬には尖閣諸島沖の領海に、中国海警局の公船数隻が中国漁船230隻とともに侵入。1978年の中国領海法制定時以来の事態となった。漁の解禁と重なったとの見方もあるが、異常な数であり、中国当局の意向が反映されていると見るのが自然だ。

中国が東シナ海の尖閣沖に公船を一挙に派遣してきたのは、何故か。かねて習主席は「国の核心的利益を犠牲にすることはない」と強調。尖閣諸島を南シナ海と並び、「核心的な利益」と位置付け、権益確保を絶対に放棄しないと内外に誇示しようとしている。

習氏が中国共産党総書記に就任したのは2012年11月の第18回党大会。この場で「海洋権益保護の堅持」が最重要国家戦略として掲げられた。中国は南シナ海で、ベトナムやフィリピンが領有権を主張する海域に公船を送り、南沙(スプラトリー)諸島では、7つの岩礁を埋め立て、滑走路など軍事転用もできる施設を建設している。

中国政府は13年に、漁業行政や国境警備、税関など縦割りだった海上法執行機関を中国海警局に統合。取り締まりや権益保護活動を行うなど権限を強めてきた。今回の「大攻勢」には、習近平氏直属の共産党中央弁公庁が関わっているとの見方も否定できない。軍内部に強硬論が台頭しているとの情報もある。

尖閣諸島周辺で中国公船の動きが活発化している背景にあるのは南シナ海問題。中国政府内では、日本が直接当事者ではない南シナ海問題で対中批判を続けることに、「域外の国が介入すべきではない」と猛反発。人民日報は「東シナ海と南シナ海で同時に腕力を振るうことで、中国は日本に知らしめる。中国には自国の権益を取り返す力がある」と主張した。南シナ海で世界各国の対中批判が集まるなか、国内向けに強気の姿勢をとったと見られる。

日本が、伊勢志摩サミットの宣言に「中国」名指しを避けながらも南シナ海での海洋進出を牽制する議長声明に盛り込んだことも不満の一つ。その後も仲裁裁判結果の順守と中国へのけん制を、当事国のフィリピンだけでなく多くの国に働きかけていることに中国は強く反発している。

スカボロー礁は2012年に、中国監視船とフィリピン巡視船がにらみ合った末、中国が実効支配し、フィリピン漁船が近づけなくなった。中国による力の挑戦を受けている南シナ海、東シナ海の2つの海を結びつけ、国際社会にアピールする「陽動作戦」と見ることもできる。

岸田外相は11日には南シナ海問題の当事国であるフィリピンを訪問。ヤサイ外相に「両国は東シナ海と南シナ海で同じ経験を持つ」と働きかけ、ともに「領有権を主張するための力による行動は国際法上容認されない」との点で共通の認識を持つに至った。

これに対し、中国はフィリピンと2国間協議による事態の打開を計画。フィリピンのラモス元大統領と10、11日の両日、香港で中国の全国人民代表大会(全人代)外事委員会主任委員の傅瑩氏が会談し、中国とフィリピンの平和と協力について話し合った。会談後、中国外交部は「今回の交流は関係改善、対話の再開を後押しするものとなった」との談話を発表。会談でラモス氏はフィリピン政府が中国との協力に前向きであり、関係改善の機会を求めていると表明。中国政府との正式会談に意欲を示した。

9月初旬に中国・杭州でG20 (アジア太平洋首脳会議)が開催される。「常に平和の道を追求している」と言う主催者・習氏が、オバマ米大統領や安倍晋三首相らとこれらの問題についてどう対応するか、注目されている。(八牧浩行)