「BL」はオンナの嗜好品!?

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執筆:杉山 崇(神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授)


「BL」という言葉は、日本の文化でよくみられますが、人前では大声で言いにくい言葉を略語にしたものの一つです。
大声で言いにくいものの、何割かはちょっと気恥ずかしい嗜好を表すもの…。

じつはこのBLという言葉は一部の女性たちのある嗜好、すなわち「Boys Love(ボーイズラブ)」。つまり、男性同士の恋愛です。
男性は驚くことがあるようですが、女性には、この男性同士の恋愛模様に萌えることがありませんか?

主婦やOL、女子高生に増殖中?「腐女子」

実は、BoysLoveに萌える女性は珍しくありません。
隠しているだけで、普通の主婦やOLさん、女子大生、女子中高生に至るまで意外とたくさんいます。

一部の男性アイドルグループなどはこういう女性心理を心得ているため、さりげなく男同士で微妙にセクシャルに絡む振りをして女性ファンのハートをつかむこともあります。美しい男たちの絡みあいに萌える女性は少なくないのです。

多くの男性のほとんどはこの心理を理解できないため、女性たちはこの嗜好をあまり公にしません。
一方で、中にはBLに萌えることを強くは隠さない女性たちもいます。

そのような女性たちはいつしか「腐女子(ふじょし)」と呼ばれるようになりました。もはや、腐女子であることが個性になる時代になっているのかもしれません。言うならば、すでに「腐女子カルチャー」は日本の文化、クールジャパンの一角なのです。

腐女子は決して「腐っていない」

では、腐女子の心理は文字通り腐っているのでしょうか。異常なのでしょうか。

男性が期待する、しとやかな女性像を表す言葉に「婦女子(ふじょし)」があります。腐女子はこの言葉とのかけことばで「腐」と表現されていますが、心理学から見ると腐っているとは言えません。実はBLを嗜好すること自体は異常とはいえない、女性心理なのです。男性に例えると、結婚後もAVや風俗を嗜好するのと同じです。

ではなぜ、一部の女性にはBLが嗜好品になるのでしょうか。嗜好品とは生きるためには必須ではないものの、私たちの快楽のツボをつついて、現実の閉塞感から一瞬にして解放してくれるものであり、生活を豊かにするためには必要です。

自意識が高い人ほどBLを好む?

恋愛模様を眺めることは古代からの人類の嗜好品です。神話にも物語にも謳われています。
ですが、自覚や自意識が高い人ほど男女の恋愛模様に自分を重ねてしまいます。一般に女性は自意識が高いので解放感が今一つです。男性同士の恋愛模様なら自分を重ねることはないので、全力で現実逃避できます。

さらに、リアルな男性は多面性があるので幻滅ポイントをいくつか持っているものなのですが、二次元や偶像(アイドル)にはそれがありません。いつでもお手軽に現実逃避できる嗜好品がBLなのです。

女性の自意識 …正常一方でこんな見方も。

腐女子の心理は全く異常ではありません。腐女子と呼ばれる皆さん、現実逃避は逆に現実を生きる活力を生み出すもの。盛大に逃避して、その分、力強く現実を生きてください。

問題は、現実を力強く生きられない、さらに誰もサポートしてくれないあまり現実を拒否しがちな女性がBLに安易な慰めを求めてしまうことです。

この場合、問題の根本はBLにあるのではなく、現実を拒否することになったプロセスにあります。多くの場合、現実を拒否する女性は現実の世の中に自分が拒否されていると感じています。

しかし拒否されるから、拒否するのです。こうして、拒否感が拡大して、誰にも心開かない心理的な引きこもり状態や、社会と関わろうとしない行動面での引きこもりになってしまうのです。
 

腐女子ワールドで自分の世界を豊かにしよう!

BLの世界は閉塞感のある日常生活を豊かにしてくれる嗜好品です。
一方で世界の内側に閉じこもり、人と関わらなくなってしまう恐れもあります。

あまり引きこもらずに、現実の世界を生きる原動力とするため、腐女子のみなさんはどんどんBLを読んで、世界を広げていきましょう。

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<執筆者プロフィール>
杉山 崇(すぎやま たかし)
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授。心理相談センター所長、教育支援センター副所長。臨床心理士、一級キャリアコンサルティング技能士、公益社団法人日本心理学会代議員。
公式サイトはこちら⇒ http://www.sugys-lab.com/