Doctors Me(ドクターズミー)- 雷鳴とどろく日はご用心!「落雷」にあたると人はどうなる?

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先日、埼玉県の高校のグラウンドに落雷、男子生徒が心肺停止となる悲しいニュースがありました。
これから台風の時期となるので、豪雨や強風とともに「落雷」には厳重に注意をしていただきたいです。

今回は「落雷」に人が当たるとどうなってしまうのか、「落雷」にあたらないための避難方法を医師の建部先生に解説していただきました。

「落雷」に人が当たり、心肺停止となるメカニズムを教えてください。

電気エネルギー曝露による人体障害を専門的には電撃症といいます。 電気エネルギーによる組織損傷と二次的な引火による熱傷が主な障害になります。

このうち、雷による損傷は雷撃症と呼んでいます。 雷電流は大量のエネルギーを持ちますが、流れるのは極めて短時間です。
そのため人工的な電源に由来する高電圧および大電流の電撃傷と臨床的には多少異なります。

落雷時の電圧は200万〜10億ボルト、電流は1千〜50万アンペアにも達します。
雷が人体に当たった際、極めて短時間とはいえこれほどの大きなエネルギーを持つ電流にさらされます。

そのとき心拍動や呼吸の自動能を管理している脳-神経系を一瞬で機能的に破壊・狂わせるために、それだけで心肺停止となります。

それを免れたとしても、心臓については心室細動という心室の筋肉の規則的な収縮は失われ、ただ不規則に細かくケイレンしているだけの状態に陥ってしまいます。
この際、血圧はほぼゼロで心室のポンプ機能は失われ、血液を送り出せません。

全身への血液循環は不可能で脳も当然、虚血状態となり、程なく心肺停止に至ります。

「落雷」に人が当たると、他にどのような症状が起きますか?

落雷による雷撃症は大量の電気エネルギーにさらされるものです。
人間に雷が当たるときはその高電圧により、人体が数メートル飛ばされることもあります。 皮膚・内臓の熱傷、不整脈(心停止)、呼吸停止を起こします。

死亡するときはほぼ即死で、落雷で心臓停止になったらまず助かりません。

頭部に通電すると脳へ影響して意識障害、急性錯乱状態や記憶喪失を起こすことが知られています。
点状または羽毛状〜樹枝状模様で赤紫色の軽度の皮膚熱傷(電紋:でんもん)が現れたり、鼓膜穿孔、白内障などが起こることがあります。

生存者の多くは、体表面を電流が通り過ぎるだけで済んでいるため比較的速やかに回復し、後遺症は少ないです。

長期的な後遺症としては、PTSDや認知障害、疼痛症候群および、交感神経障害、交感神経の不安定となることで運動障害と感覚欠損を伴い、斑点形成、冷感および無脈を下肢(時に上肢にも)に生じる雷撃麻痺を呈することもあります。

人体は骨>脂肪>腱>皮膚>筋肉>血管>神経の順で電気抵抗が高く、神経が最も影響を受けやすくなっています。

「落雷」に人が当たった際の応急処置方法を教えてください。

まずは周囲の安全確認と、他の人をできるだけ多く呼んで下さい。

迅速に周囲の安全確認を済ませたら他の人と協力して傷病者を一刻も早く建物等に収容し、傷病者の意識と呼吸が正常でないことを確認し、その上で心肺蘇生を行うとともに救急隊を要請・入手できるならばAEDを用意します。

AEDは電源投入後の音声ガイドに従って使用することになりますが、その際は傷病者の体が雨などで濡れている可能性が高いので、乾燥した床面や台の上に移動し、濡れた衣服を手早く取り払い胸部の水分をふき取ってから電極パッドを貼ってください。

なお、木造建築の内部も基本的に安全ですが、全ての電気器具、天井・壁から1m以上離れればさらに安全です。

「落雷」が発生しているとき、どのような対応・避難をすれば良いですか?

屋外にはどこにも安全な場所はありません。 落雷が発生しているときには屋外から屋内へ速やかに退避します。

鉄筋コンクリート建築、木造建築(全ての電気器具、天井・壁から1m以上離れるとなお安全)、自動車(オープンカーは不可)、バスや列車の内です。

よく高い木の下に逃げ込む人がいますがこれは間違いです。
この高い木に落雷が直撃した際、直撃を受けた物体の近くにある別の物体に再放電を生じて電流が流れる側撃雷で感電・死亡するリスクが高いです。

「落雷」の被害にあう人は年間どのくらいいますか?

最新の統計はまだ出ていないようですが、警察白書によりますと、日本での落雷による年平均被害者数は20人、そのうち死亡者数は13.8人であり、被害者の約70%が亡くなられている計算です。
近年は、夏場のゲリラ豪雨・雷雨もやや多くなっており統計的に少し数値が高くなっている可能性があります。

日本における落雷による被害者数は1年で20人程度ですが、その死亡率は統計上、異常に高いです。
落雷が人に当たったら、まず死亡すると考えてよいでしょう。助かったとしてもその長期的な後遺症が厄介です。

日本の場合、被害者のほとんどが屋外で危険な木の下などで雨宿りをしていて側撃雷にやられています。
屋外スポーツ・イベントの指導、管理者や施設管理者にも、落雷事故を予防するための正しい知識とその実践が必要です。

建部先生からのアドバイス

根本的には雷雨が予想される時は外を出るのを止めるのが一番です。

しかし、運悪く屋外で雷鳴が聞こえた時は、特に稲妻と雷鳴の間隔が30秒未満となったときは迅速に避難場所を探し、最後の稲妻や雷鳴が起こって30分以上、経過するまでその避難場所に留まることが重要です。
避難場所としては大きな居住用建造物や四方が囲まれた乗り物が最も安全です。

雷雨の時に室内にいる場合は水回りおよび電気器具は避け、窓やドアから離れ、固定電話やPC、TVなどの電化製品は使用を避けてください。
建物内に入れることができない状況ならば、周囲より高い場所、背の高い物体、開けた場所、および水から離れて難を逃れましょう。

(監修:医師 建部雄氏)