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米国の宇宙企業スペースXは8月14日、日本の衛星通信会社スカパーJSATの通信衛星「JCSAT-16」を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。またロケットの第1段機体は大西洋のドローン船への着地にも成功、同ロケットの着地成功は6回目となった。

ロケットは日本時間8月14日14時26分(米東部夏時間8月14日1時26分)、フロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約2分30秒後に第1段機体と第2段機体とを分離した。

第1段はその後、大西洋上に待機していたドローン船「もちろんいまもきみを愛している」号を目指して降下し、打ち上げから約8分40秒後に、船の甲板のほぼ真ん中に降り立った。船はこのあとフロリダ州の港に戻り、ロケットは陸揚げされ、検査や試験などを受けることになる。

一方、第2段も順調に飛行を続け、計2回のエンジン燃焼を経て、打ち上げから32分13秒後に衛星を分離し、計画どおりの静止トランスファー軌道に投入した。その後、衛星からの信号も届き、状態が正常であることを確認したという。衛星はこのあと自身のスラスターを使い、最終的な目的地である静止軌道への向かう。

○JCSAT-16

JCSAT-16は日本の衛星通信会社スカパーJSATが運用する通信衛星で、米国の衛星製造大手スペース・システムズ・ロラールが製造した。

KuバンドとKaバンドのトランスポンダーを積み、衛星通信サービスを日本全域に提供する能力をもっている。ただし、JCSAT-16は本格的な衛星通信サービスを行うのではなく、他の衛星に問題が発生した場合の、予備衛星としての役割を担うことになっており、運用軌道も東経124度から東経162度までの静止軌道が予定されている。

打ち上げ時の質量は約4.6トン、設計寿命は15年の予定。

○ロケット着地成功は通算6回目、難しい条件下では3回目

スペースXはロケットの低コスト化を目指し、一度打ち上げたロケットを回収し、再び打ち上げに使うための開発や試験を数年前から続けている。とくに最近の打ち上げでは、ファルコン9ロケットの第1段機体を回収する試験がほぼ毎回行われており、もはや恒例行事となっている。

ファルコン9はミッションに応じて、発射台に程近い場所にある「第1着陸場」に着陸する場合と、海上に浮かべたドローン船に降ろす場合を使い分けている。両者にはそれぞれ長所と短所があり、たとえば陸に戻る場合、ロケットがエンジンを噴射してUターンし、それまで飛んできたコースを引き返す必要があり、その分推進剤に多くの余裕が必要となる。しかし、発射台や整備棟に近い場所に降ろせるため、輸送の手間がかからない。

一方、海上の船に降ろす場合、Uターンの必要がなくなり、衛星の質量や打ち上げる軌道の都合で余裕が少ない場合でも機体を回収できるようになるため、再使用の頻度を上げることができる。しかし技術的な難易度は上がり、さらに船を運用したり、港で陸揚げしたりといった手間が増える。

基本的には、打ち上げる衛星の質量などから、ロケットに残るエネルギーの余裕の大小に応じて、どちらに降ろすかを選択する。

また、ファルコン9が陸上、もしくは船上に着地する際、通常は水平方向の速度を落とし、あるいは発射場まで戻るようにUターンするための「ブーストバック噴射」、大気圏再突入時の速度を抑えるための「再突入噴射」、そして最終的に着陸するための「着陸噴射」の、大きく3回のエンジン噴射を行う。

しかし、重い衛星を遠くの軌道まで飛ばすミッションのように、ロケットに残る余裕が非常に少ない際には、ブーストバック噴射を行わないこともある。この場合、通常よりも速い速度で大気圏に再突入するため制御が難しく、また大気から受ける熱・圧力も大きくなるなど、難しい条件での着地を強いられることになる。実際に今年3月には、この条件下での方法で着地が試みられたが、ロケットを制御し切れず、船へ激突している。

そこで同社は、通常は1基のエンジンで行う着陸噴射を3基のエンジンで行うことで、急ブレーキをかけるようにして一気に降下速度を落とすという新しい方法を導入し、今年5月6日にほぼおなじ条件下で初成功を収め、同月28日にも成功。そして今回、この条件下で3回目の成功となった。

ファルコン9の着陸・着地試験はこれまでに9回行われ、第1着陸場への着陸は昨年末と今年7月の2回成功。ドローン船への着地には4月から5月にかけて3回成功している。着地成功は今回で通算6回目、そのうち船へは4回目となった。

ファルコン9の打ち上げは今回で今年8機目。スペースXはまた9月にも、イスラエルの通信衛星「アモス6」の打ち上げを予定している。正式な発表はないものの、衛星の質量や目標軌道から、この打ち上げでも大西洋上の船への着地が試みられることが予想される。

スペースXは今後も2〜3週間おきにファルコン9を打ち上げるとともに、回収試験も続け、さらに今年の秋ごろには、回収したロケットの再使用にも挑みたいと明らかにしている。また今年中には、ファルコン9を3基束ねた超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」の打ち上げも予定されている。

さらにファルコン9やファルコン・ヘヴィよりもさらに大きな、火星への移民船を打ち上げるためのロケットに使われる、大推力・高性能ロケット・エンジンの試験もまもなく始まる見通しとなっている。

【参考】
・PRESS KIT: JCSAT-16 MISSION
 
・Launch of JCSAT-16 | SpaceX
 
・通信衛星JCSAT-16の打ち上げ日程に関するお知らせ
 
・JCSAT-16
 
・SpaceX has shipped its Mars engine to Texas for tests | Ars Technica
 

(鳥嶋真也)