リオデジャネイロオリンピックで、日本は連日メダルラッシュ。

トップアスリートたちの華々しい活躍が報道されています。彼らは4年に1度の大舞台で、どのように自分の持つ力を出し切り、大きな記録を打ち立てているのでしょうか?

『限界の正体 自分の見えない檻から抜け出す法』(為末大著、SBクリエイティブ)の著者は、『侍ハードラー』の異名をもつ元プロ陸上選手。現在は会社経営やアスリートの社会的自立支援、陸上競技の普及活動など、幅広く活躍されています。

本書で著者は、「限界」とは人間がつくり出した思い込みであり、人は自分でつくった「限界の檻」のなかに入り込んでしまっていると主張しています。

「限界の檻」から抜け出すことができれば、自分の才能をもっと発揮できるのです。

今回は本書から、「限界の檻」に囚われないための目標設定の仕方をご紹介します。仕事で伸び悩んでいる人、努力しているのになかなか結果がでない人はぜひ参考にしてみてください。

■結果を出す選手ほど小さな目標を優先する

オリンピック選手というと、小さなころから夢に向かって一心不乱に努力を重ねてきた人というイメージがありますよね。

しかし、実は初めからオリンピック選手を目標にしていたという人は40%以下だそうです。

結果を出しているアスリートほど「遠くにある大きな目標よりも、目の前の小さな目標を優先している」と著者はいいます。

やみくもに大きな目標を立てるのではなく、その日の目標を立ててトレーニングを積み重ねるなかで、次第に「オリンピックに出る」「メダルを獲る」という目標が見つかっていくものだということです。

■目標を「下方修正」すれば力を出し切れる

目標設定を誤ると、せっかく立てた目標が逆に「限界の檻」となって成長を妨げてしまうことに。目標が「限界の檻」に変わるのには3つのパターンがあります。

(1)目標にこだわりすぎる→自分を見失う

(2)目標が遠すぎる→続かない

(3)大きな目標を達成する→燃え尽きる

たとえば、「インターハイで1位になる」という目標を立てた選手がいるとします。しかし、彼の実力を客観的にみると決勝に進出できるかどうかというレベル。

そんな選手が「1位になる」という目標にこだわると、意識と体にズレが生じて力を出しきれなくなることがあるわけです。

彼の場合は「1位」よりも「決勝進出」を目標に置く方が、力を発揮することができるのです。著者もこのような「目標の下方修正」を柔軟に行っていたといいます。

■届きそうだと思える目標にすれば頑張れる

モチベーションをキープするためには、一生懸命がんばれば手が届きそうな「ちょうどいい高さ」に目標を設定することが大切。

「届きそう」だと思えれば具体的な対策を考えることができますが、「届かない」と感じると、なにをすればいいかわからずモチベーションが下がってしまうというのです。

著者は大学時代、世界一のタイムからは差があるレベルでした。けれど「世界3位」なら手に届くかもしれないという実感があったそう。全体のタイムは速くなくても、スタートから1台目のハードルまでのタイムは世界と比べても遜色がなかったからです。

「うまくスピードを持続できれば世界3位は夢ではない」と思えたからこそ、モチベーションを保ち、挑戦し続けることができたということです。

■実は「自分らしさ」が限界を生んでしまう

現代では「自分らしくある」ということが推奨されていますが、実は「自分らしさ」にこだわる人ほど「限界の檻」に入りやすいので要注意だとか。

自分らしさを見つけることは、自分の限界を設定することに似ているのです。「私は◯◯なタイプ」「自分とは、こうなんだ」と自分で自分を決めつけてしまうと不自由になることがあるからです。

著者は20代のころは自分のことを「考えるより先に行動するタイプ」だと思っていたそうですが、海外に出てみると自分よりもはるかに無鉄砲な人たちに出会ったといいます。

もし海外に行くことがなければ、「自分は行動派」という間違った認識を捨て切れなかったのかもしれません。

同じコミュニティにいる間は、「自分らしさ」も似たような人との比較でしかありません。自分が知っている自分はほんの一部であり、年齢や環境、状況によっても変わっていくものだと考えるべき。

それに自分ではマイナスだと考えていたことが、外から見るとプラスに見えることもあります。「自分はこういうものだ」と決めつけずに、周りからのニーズに応えていくと「自分らしさの檻」から出るきっかけになるでしょう。

限界は目の前に立ちはだかる「壁」や「ハードル」ではなく、四方を囲む「檻」のようなもの。檻のなかでの生活に慣れると、挑戦する前から「やってもどうせ無理」などと考えるようになってしまいます。

限界の檻から抜け出すのは簡単なことではありません。しかし、いまの自分に適切な目標を立て、全力で取り組めば必ず結果を出すことができるはずです。

(文/平野鞠)

 

【参考】

※為末大(2016)『限界の正体 自分の見えない檻から抜け出す法』SBクリエイティブ