『紺田照の合法レシピ』(馬田イスケ/講談社)

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 多種多様なグルメマンガが続々と生まれている中で、ここ最近「じわじわくる……!」と話題になっているのが、『紺田照の合法レシピ』(馬田イスケ/講談社)だ。本作の主人公・紺田照は、“任侠系料理男子”。そう、暴力団員でありながら、丁寧な料理を作ることを生きがいにしているという、非常にかわいらしい存在なのである。そして何より言及したいのが、その料理風景の妙。他のグルメマンガではあり得ない描写が特徴で、それゆえに人気を集めているのだ。

 その描写とは、食材をいちいち“暴力団テイスト”に表現するというもの。穴が空いているレンコンは“野菜界のリボルバー”、香り豊かな大葉は“合法ハーブ”、片栗粉は“魔法の粉”。言い得て妙だが、それに納得して良いのか悪いのか……。

 さらに、料理の味わいについての表現も独特。「レンコンのピリッと明太はさみ揚げ」は、銃を撃つように明太子のプチプチが弾け、一緒にはさんだ大葉とアボカドが“追撃”してくる。そこにご飯が加わることで、口の中の“抗争”がより一層激しくなり、もはやこれは“戦争”とのこと。タジン鍋で作った「野菜たっぷり蒸しカレー」については、カレーの香りと辛味が凶暴で“完全に武闘派”、しかも無限に食べられるため“カレージャンキー”になってしまうそう。

 ここまで読むと、完全にネタマンガとしての印象が強いかもしれない。けれど本作は、グルメマンガとして非常に高く評価できる。登場する料理は、実にリアリティあふれるものであり、すぐにでも作れるレシピが満載だからだ。先に紹介したレンコンのはさみ揚げや蒸しカレーはもちろん、薄切り肉をロール状にして焼き上げた「ジューシー渦巻きステーキ」、春巻きの皮を使った「なんちゃってアンチョビとポテトのパリパリピザ」、花山椒を効かせた「秋刀魚の中華風とろ〜り餡かけ」など、どれも美味しそうで、家庭で簡単に再現できるものばかりなのである。もちろん、作中ではその作り方も丁寧に解説されている。暴力団員とは思えぬやさしさに、感謝すること間違いなしだ。

 一見、イロモノと思われがちな本作。しかし、フタを開けてみれば、その本格的な料理描写に舌を巻くはず。興味を持った人は、ぜひ読んでみてほしい。きっと、魔法の粉や合法ハーブを買いに、スーパーへ走ってしまうはずだから。

文=五十嵐 大