ただし、過度の減塩も避けなければならない。
 減塩で最も引き合いに出されるのは、ブラジルの奥地に住むヤノマモ・インディアンだ。未開の地で原始的な生活を送るいくつかの民族は、確かに血圧は低く、年齢とともに血圧が高くなることもない。しかし、代わりに寿命も30〜40歳と短く、発育も悪く背丈が低いという。これはもちろん、塩分だけでなく食生活に依存するところも大きいと思われるが、ラットを使った動物実験でも、ナトリウムが少ないと成長が悪く、若死にするラットが多いことが確かめられている。

 また、炎天下の中で仕事をしている人は、汗により水分と塩分が失われ、水と塩を補わなければならないことは知られている。水と塩を補わなければ、過労、痙れん、熱バテを起こし、虚脱状態になるからだ。
 「アメリカではその昔、夏になると多くの産業現場で死者が続出し、問題となった。その折、大学院生が被験者となり2週間のナトリウム低減実験で睡眠への影響を調査した結果、ナトリウム量が多いほど被験者たちはよく眠れた。夜間に眠りが浅い頻度は、正常な食事している被験者たちで一夜当たり5〜9回。一方、ナトリウム制限食の被験者たちは14回までになったのです。以後アメリカでは、必要に応じて塩分を摂ることが一般的になったといいます」(健康ライター)

 塩分は摂り過ぎず、減らし過ぎずで生活しなければならないわけだが、現代、我々の周りには、加工食品などに含まれた“見えない塩”が溢れ返っている。
 そんな中、せめて自分でできる味付けぐらいは塩だけに頼らず、酢や出汁、生姜やからしなどで代用することを心掛けたいものだ。

 最後に、「塩分を摂り過ぎたかな?」と思った際の対策を、料理研究家の林康子氏に聞こう。
 「塩分に含まれるナトリウムは、カリウムを多く含む野菜や果物を摂取すると外に出やすくなります。カリウム量が多い緑黄野菜は、カボチャ、グリーンアスパラ、トマト、ブロッコリー。葉野菜なら水菜、ニラ、ほうれん草、淡色野菜では白菜、なす、セロリ、果物はバナナ、柿、オレンジ、キウイ、みかんなどです。これらを食すると、塩分は翌日ぐらいに尿として大半が排出されます。そのためには、水分を摂ることも大事なポイントです。むくみがあるときは、利尿作用のあるキュウリや小豆、リンゴ、メロンなどを摂るとよいでしょう」

 この夏は塩分バランスを考えてみてはどうだろうか。