今大会2ゴールを挙げた浅野だが、勝負どころで物足りなさが残ったのも事実。本人もフィニッシュの精度を課題に挙げた。写真:JMPA/小倉直樹

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「メダル獲得」を目標に掲げていたリオ五輪は、1勝1分1敗でグループリーグ敗退に終わった。手倉森監督が満を持して送り込んだ精鋭18人の出来は――。各ポジションごとにパフォーマンスを総括する。
 
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【FW】
――登録選手――
興梠慎三(オーバーエイジ)/鈴木武蔵/浅野拓磨
 
 クラブ事情で招集を断念したU-23世代のエース久保裕也の代わりに、鈴木武蔵をバックアップメンバーから繰り上げ。チーム総得点7点のうち、3人で半分以上の4点を叩き出した。もっとも、その内訳に目を向けると、興梠の1点はPK、鈴木のゴールも試合の大勢が決まったなかでのもので、浅野の2得点にしても勝利に導く一撃ではなかった。
 
 興梠はポストワークでチームに幅を持たせた一方で、思うように縦パスが入ってこない時間帯が長く、前線で孤立するシーンが散見。「自分のもらい方が悪かった」(興梠)のも一因だろうが、最終ラインや中盤のボール回しでミスが多かったのが響いた。
 
 浅野はスピードと裏への抜け出しのコンビネーションでナイジェリア戦、コロンビア戦と得点を挙げた。しかし、その一方で、コロンビア戦では得点シーン以外に3度の決定機を外している。どれか一本でも決めていれば……と本人が悔やんだように、やはりフィニッシュ精度は世界レベルにはまだまだ届かない。
 
「裏への抜け出しは僕の特長ですけど、世界で通用するためには、抜け出しだけじゃなくて、最後フィニッシュまで行けることが大事だと思います。落ち着いて足に当てられるか当てられないかの0コンマ何秒のところの勝負で、自分は慌ててしまって、良い状態で足に当てられなかった。そこはもう自分の力不足かなと」(浅野)
 
 鈴木も攻撃を活性化する動きをしたとはいえ、久保と比較してしまうとパンチ力不足は否めない。「勝負どころで結果を出せなかったのは自分たちの弱いところ」(鈴木)なのだろう。対戦したナイジェリアの長身FWサディク、コロンビアのテオフィロ・グティエレスらのように、個で打開しゴールを奪える選手が今後は求められる。
【MF】
――登録選手――
遠藤 航/原川 力/大島僚太/矢島慎也/中島翔哉/井手口陽介/南野拓実
 
 中盤はメンバー発表時、ボランチ4枚を組み込んだことが話題となった。「後ろを万全にしたかった」手倉森監督の狙いが反映された選考だったが、結果的に奏功せず、逆に苦しんだ印象が強い。
 
 A代表を経験している遠藤をしても、球際への寄せやボール奪取で光る部分はあったものの、相手のスピードに振り切られたり、攻守の切り替えでミスを犯すシーンが多く見られた。ナイジェリア戦でスタメンに抜擢された原川は守備に追われて攻撃面の特長を発揮できず、球際やセカンドボールで見せ場を作った井手口もコロンビア戦で失点に絡み、大舞台で十分に実力を発揮するに至らなかった。
 
 ボランチ陣で唯一、株を上げたのが大島だ。縦パスで攻撃のスイッチを入れ、全3試合でゴールに関与。「僚太くんは僕の欲しいところでボールをくれる」(南野拓実)とチームメイトからの信頼も厚かった。もっとも、好調だった攻撃面に目を奪われがちだが、球際でファイトする姿勢や激しいスライディングで世界に立ち向かい、川崎での目覚ましい成長の跡を見せた。近い将来、A代表のボランチ争いにも顔を出せる存在となりそうだ。
 
 中島、南野、矢島の攻撃陣はいずれもゴールを決めた。しかし、日頃欧州で研鑽を積む南野でさえ世界のフィジカルや技術に苦戦。コロンビア戦で値千金の同点ミドルを決めた中島、スウェーデン戦で殊勲の決勝ゴールを決めた矢島にしても、浅野同様、フィニッシュの精度に課題を残した。