マーリンズ・イチロー【写真:Getty Images】

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3000安打の偉業称えるコラム掲載、フィールド以外の功績にも言及

 メジャー史上30人目の3000安打に到達したマーリンズ・イチロー外野手について、米記者がその功績を称えるコラムを寄稿している。米メディア「バイス・スポーツ」のエリック・ナスバム記者が執筆したもので、フィールド以外の功績にも言及。「私たちに贈り物をくれた」と感謝の気持ちを綴りつつ、賛辞を贈っている。

 イチローは今季、限られた出番の中で順調にヒットを積み重ねて3000安打を射程に捉えると、7月28日には金字塔まで残り「2」と迫った。その後、7試合足踏みが続いたが、8月6日に王手をかけると同7日のロッキーズ戦で大台に到達。これはアレックス・ロドリゲスに続く史上30人目の快挙で、米国出身者以外での達成は、ロッド・カルー(パナマ)、ロベルト・クレメンテ(プエルトリコ)、ラファエル・パルメイロ(キューバ)に続いて史上4人目、北中米出身者以外では初となった。また、42歳290日での到達はリッキー・ヘンダーソンの42歳286日を上回り、キャップ・アンソンの45歳に次ぐ史上2番目の高齢記録。また、デビューから16シーズン目での達成はピート・ローズと並んで史上最速だった。

 2001年にオリックスからマリナーズへ移籍後、ヤンキース、マーリンズと活躍の場を移しながら存在感を放ってきたイチローについて、記事ではその成績だけでなく、試合以外での取り組みについても言及している。

イチローは「仕事自体に意味があることを思い出させてくれる」

 これまでも米メディアで称賛を浴びてきた、バットやスパイクなど道具を大切に扱う姿や徹底した体調管理、試合への入念な準備について触れつつ、「同年代であるAロッドや(デビッド)オルティスが野球のみにおいて偉大であるが、イチローは他の面においても偉大である。つまるところ、野球は肉体労働だ。イチローは熟練の、几帳面な職人である。イチローを見ると、仕事は有意義であり、それ自体に意味があることを日々思い出させてくれる」と称えている。

 さらに筆者はマリナーズ時代を回顧し、「もし、イチローのキャリアのある時点で彼の同僚がこの考えを共有していたら、彼らはより長い期間活躍できたであろうことは理解できる。シアトル時代、彼はチームよりも個人のパフォーマンスを重視していると、チームメイトから自己中心的だとして非難されたが、彼は超然としていた」と綴っている。

 イチローは2001年の移籍初年度に新人王、MVP、首位打者、盗塁王、シルバースラッガー賞、ゴールドグラブ賞と数々のタイトルを獲得し、その後も10年連続でオールスター出場、シーズン200安打、ゴールドグラブ賞受賞を成し遂げるなど、数々の偉業を成し遂げてきた。今季はメジャー通算500盗塁に到達し、日米通算でローズのメジャー最多安打4256安打超えも達成。3000安打と500盗塁の同時達成は、リッキー・ヘンダーソン、ルー・ブロック、タイ・カッブ、エディー・コリンズ、ポール・モリター、ホーナス・ワグナーに続いてMLB史上7人目と、そのキャリアには歴史に名を刻む功績が数多く並ぶ。

イチローへエール、「5000安打を達成してほしい」

 しかし、筆者はイチローの功績よりも、むしろ野球選手としての哲学や取り組みについて賛辞を贈っており、以下のような文章でコラムを終えている。

「重要なのは勝つか負けるかではない。何をなすかである。米国での15年間、イチローは私たちに贈り物をくれた。野球選手、そしてお手本として。彼は50歳まで現役でいたいと言っている。私は彼がそうなることを願っている。野球界でマイク・トラウトやクレイトン・カーショーが年寄りになるまで。5000安打を達成してほしいと思っている。彼がそれを実現する時まで数は決して問題ではなく、“働き”が重要だと私たちが気づくことを願っている」

 そう称賛とエールを送られているイチロー自身、歩みを止めていない。12日(日本時間13日)のホワイトソックス戦では代打で登場し、2試合連続となる二塁打を放った。これで通算3003安打としており、歴代28位のアル・ケーラインにも残り「4」と迫っている。

 記事の中で「野球の神秘」とまで評されている42歳。そのキャリアは数多くの偉人たちを輩出してきたメジャーでも異彩を放っている。